各地の公園ボランティア活動を紹介する「となりの公園愛護会」。今回は、行政と協力しながら、公園のあるべき姿や方向性を、地域のみんなで一緒に考え、実践する公園愛護会の皆さんのお話です。
公園の緑の管理の負担軽減やコンポストを活用する取り組みを先日紹介した姫路市で、パークマネジメントプランを策定する際のモデル公園として、公園の利活用や維持管理の新たな仕組み作りに積極的に関わった公園愛護会のお話をお聞きしました。
パークマネジメントプランとは、公園を作って維持するだけでなく、公園の目指すべき方向性を共有しながら、行政・住民・事業者が、互いに連携し、より有効に使いこなしていくための管理運営方針のことで、自治体ごとや公園ごとに考えられ、策定されています。
阿成北公園愛護会の皆さん
姫路城や姫路駅から少し南、市川の河川敷のすぐ横に位置する飾磨区の阿成北公園(あなせきたこうえん)。大きなメタセコイヤの木が美しい、子どもたちの毎朝の集団登校の集合場所になっているという細長い街区公園です。
阿成北公園愛護会の会長で、地区の連合自治会長も務める長田秀人さん(上の写真の男性)にお話をお聞きしました。
阿成北公園は、お祭りの屋台(人が乗れる大きな御神輿のことを姫路エリアでは「屋台」と言うそうです)の出る場所であり、冬には地元の消防団と連携してとんど焼きが、夏は子どもたちも一緒にふれあい祭りが行われるという、地域イベントには欠かせない公園だそうです。
市川の土手から勢いの良い草が伸びてくるので、草刈りをすることから公園管理がスタートしたとのこと。公園愛護会活動は、子ども会が中心になり、自衛消防団や老人会なども参加し、自治会全体で行っているそうです。消防団のメンバーが子ども会の保護者向けに刈り払い機の使い方講習を行ったりと、世代間の交流も活発な様子が伝わってきます。
姫路市パークマネジメントのモデル公園として地域ワークショップを実施
パークマネジメントプランの策定にあたっては、姫路市公園部が市民や市内の全公園愛護会にアンケートを実施して、公園に関わる多くの人々の声を聞くところから始まったそうです。
姫路市では約1000ある公園の90%以上で公園愛護会の活動があり、地域の人々が日常的な公園の維持管理に関わっているそうですが、他の自治体同様に活動人数の減少と高齢化が課題になっているとのこと。
公園愛護会活動を支援する仕組みづくりを考えるとともに、公園でのイベント開催、花火やBBQなどをやりたいという市民のニーズを、地域で一緒に考え、柔軟な公園の使い方やルール作りを考えていこうといった、以下の3つの視点で、それぞれモデル公園を選定し、パークマネジメントの実践が行われました。
姫路市パークマネジメントにおける3つの視点
1)地域コミュニティによる公園緑地の管理運営のあり方等の新たな仕組み作りを考える
2)ニーズを把握し、にぎわい創出に向けた再整備や利活用を検討する
3)公園経営の可能性を考える
阿成北公園は、地域コミュ二ティによる柔軟で楽しい公園運営を進めるモデル公園に選定され、全3回のワークショップを実施。モデル公園になった決め手は、アンケートでの熱いコメントだったことを公園部公園緑地課パークマネジメント担当藤谷さんが教えてくださいました。
ワークショップは、自治会、子ども会、消防団、老人会など、地域の老若男女が集い、公園をどう使うか?あんなことしてみたい!こんなことしてみたい!と意見を出し合ったそうです。
子どもたちも参加!草刈りが大変ならヤギを飼ってみる?
ワークショップは公園のすぐ横にある黒石自治会館で開催。開始前に町内放送で呼びかけたことで、自治会役員などおなじみのメンバーに加えて、毎日公園を使う子どもたちや、その親たち、ご近所さんなど、多様な人が集まったそう。
全3回のワークショップのプログラム概要:
1)今の公園愛護会の活動について考えよう!
2)公園での地域の活動をより良くするためのアイデアを考えよう!
3)阿成北公園のオリジナルのルールや仕組みを考えよう!
ワークショップでは、公園で困っていることや課題、公園をより良くするアイデアや、公園でやってみたいことのアイデアを出し合いました。いろいろな人が参加することで、多様な視点で多くの意見が出たようです。
たとえば、川のそばで毎夏雑草との戦いが大変という課題に対して、草刈りが大変なら、草を食べてくれるヤギを飼ったらどうか?という意見が飛び出したそうです。それなら、レンタルヤギは?メスなら乳も飲める!?といった楽しい会話の発展も。
子どもたちが参加することで、率直な意見が出たり、より自由な発想が生まれ、大人たちも子ども目線で話をし出し、どんどんアイデアが生まれていったそうです。
夏祭りで花火大会をやってみたいというアイデアは、その後実現!自治会でなんと10万円分もの大量の花火を購入し、消防団も協力、地域の大人たちが本気を出して、地域の小さな公園での花火大会が行われ、とても盛り上がったそうです。
そのほかにも、地元の建設業者が重機を出し、公園の土の中に宝を埋めて、子どもたちが宝の地図を持って宝を探すという、本格宝探しイベントも行われたんだとか。
阿成北公園愛護会では、兵庫県の中学校2年生が、職場や福祉、地域文化体験などをする「トライやる・ウィーク」の受け入れも行っていて、公園内に生えている樹木や花などの植物を調査し、案内板を作る活動も行っています。公園に関わる人の間口がどんどん広がりますね。
話し合いで生まれたアイデアは、未来のタネ
パークマネジメントのワークショップは、公園についてみんなで考える良い仕掛けになったようです。
「仕掛けを作ることで、無関心だった人も集まってくる。何もしないと、ただ草刈りをするための公園になってしまうけれど、仕掛けを作ると、いろんな意見が出て、やってみようとなるんですね。」と話す長田さん。公園は有効な地域の交流の場になる可能性を教えてくださいました。
参加者の声も一部紹介(ワークショップニュースより):
・子どもさんの意見が新鮮だったので、もっと子どもも参加してもらうと良いと感じます。
・グループでいろんな解決策を発見できて良かったです。
・人がたくさん集まる公園にしたいという気持ちが出てきました。
公園の木が大きくなりすぎたから切ってほしいという話は、どの公園でも聞く話題ですが、この阿成北公園のメタセコイヤについても、ワークショップの中で話題に上っていたそうです。話し合うことで、どちらの言い分もお互いに聞くことができるし、そこから新しい考え方やルールを決めることもできるようです。
「このメタセコイヤの木は公園の自慢だと思っています。このメタセコイヤがきれいだから、ここに引っ越してきたという人もいるんですよ。」と話す長田さん。木の成長や大きさを紹介し、公園の歴史を感じてもらったり、興味を持ってもらうことを考えたり、大木の美しく成長した姿の写真を見せて良さを話し合ったりしながら、大きなメタセコイヤの木を守り次の世代に繋ごうとされています。
もうひとつ、ワークショップの成果として、地域のみんなで公園を活用するアイデア集ができたそう。ワークショップ実施後、コロナ禍になり、なかなかすぐに実行はできないものの、やりたいことのアイデアは集まったので、いつできるようになるか?とても楽しみにしていると話してくださいました。
困りごとや課題への対応策のアイデア(一部紹介):
ふた付きゴミ箱の設置、ボール遊びのルール作り、ベンチや遊具をDIY、時計を設置、木のイルミネーション、高木の高さや形の目標を決める
新しくやってみたい活動のアイデア(一部紹介):
プールや水遊び、テントを張ってキャンプ、星空観察、そうめん流し、大人も子どももラジオ体操、ドッグランで犬の居場所、斜面でウォータースライダー、虫取り大会
子どもたちも一緒に公園をより楽しく使うための未来に向けたアイデアを出し合うこと、そして大人たちが本気で実行していく様子が、とても面白く、素晴らしいことだと感じます。皆さんのこれからの活動が楽しみです。
【基本情報】
団体名 | 阿成北公園愛護会 |
公園名 | 阿成北公園 (姫路市) |
面積 | 1,100m2 |
基本的な活動日 | 毎月第一日曜日・年3回の一斉清掃(5,9,12月) |
いつもの活動参加人数 | 20名程度 一斉清掃は、130名程度 |
会の会員数 | 約70名 |
活動内容 | ゴミ拾い、除草、落ち葉かき、低木の管理、施設の破損連絡、愛護会活動のPR、新メンバーの募集や勧誘、地域のイベント、子ども向けイベント、他団体と連携したイベント、遊びの見守り、高齢者など地域の声がけ、公園再整備に関する活動 |
設立時期 | 1972年(姫路市の制度開始時)、現組織は2010年より |
参加者イメージ | 子ども、子育て世代、アクティブシニア、その他大人 |
活動に参加したい場合は | 黒石自治会、又は各種団体協議会へ |
参考リンク | ・姫路市のパークマネジメントプランについて(姫路市) ・高浜地区連合自治会 ・黒石自治会 |