公益財団法人 東京都公園協会「2025 年度公益事業推進課 ボランティア活動レポート作成業務委託」として、一般社団法人みんなの公園愛護会が取材・執筆を行った記事です。
面積も広く、利用する人も多い都立公園。活動している公園ボランティアの方々の活動テーマも多彩。まさに「推しの公園」活動として行われている公園ボランティアのあり方を知っていただければと思います。
練馬区に広がる広大な光が丘公園。この場所を拠点に、身近な自然をフィールドとした環境保全の担い手を育んでいるのが「NPO法人みどり環境ネットワーク!」です。
設立から20年、造園や都市計画の専門家が中心となり、多世代が共に学び合えるユニークな活動を展開してきました。地域に根ざし、着実に次世代を育成するその取り組みの魅力に迫ります。

専門家たちの思いから生まれたNPO
会の設立は2003年。「地域の緑をもっと良くしたい、多くの市民に関わってもらいたい」と、造園や都市計画・建築などの専門家たちの想いからスタートしました。 「公園は人が作った緑。だからこそ、人の手で守り育てていくことが不可欠です。そのための理解者を一人でも多く増やしたい」と事務局長の村田千尋さんは語ります。
同会では、光が丘公園の活動において以下3本の柱を掲げています。
・生物多様性の恵みを実感•楽しみながら、園内の自然の基礎的な情報を収集し、記録を残す
・自然を守る人・伝える人を育てる(団塊の世代から〜子育て世代、子ども世代へ)
・活動及びネットワークを広げ、従事者(子ども達)の視野と行動を広げるきっかけを作る
その想いから、幼児親子向けの「森のようちえん」や「光が丘公園生きもの調査」、公園の剪定枝を使った木工教室など、誰もが気軽に参加できる多彩な活動を企画・運営しています。

本格的な調査活動への進化「光が丘公園生きもの調査」
その活動の核となっているのが、「光が丘公園生きもの調査」です。調査員は小学生親子で、対象は昆虫・野鳥・哺乳類から植物まで多岐にわたり、年間を通じて園内の動植物を定点観測し、年度末には報告会を行う本格的な調査活動です。
転機となったのは、東京都公園協会の助成制度の活用でした。これを機に外部の専門家を招請したことで、活動は従来の「観察」から科学的な「生きもの調査」へと進化。「子ども達の成長やデータの蓄積に合わせ、私たちもステップアップする必要を感じていました」と村田さんは語ります。


毎月の生きもの調査終了後には、発見した場所と種類の一覧をメンバー全員で共有。年度末には地図を作成したり、自由研究のように自らテーマを決めて発表したりと、子ども達の自主性を尊重した「まとめ作業」を行っています。腕章を身につけ、専門的な調査に臨む子ども達の表情は誇らしげで、年々更新される調査リストは彼らの確かな成長の証となっています。
参加者の一人、小学5年生のあゆむくんは、2年生から活動を継続しています。生きものコレクションアプリ「Biome(バイオーム)」を活用し、記録した昆虫はなんと340種類以上。「新しい虫を見つけ、学んでいけるところが面白い。学校には虫好きの友達が少ないけれど、ここなら仲間と深く話せる。そのために勉強するのも楽しいです!」と、笑顔で話してくれました。
親子で育つ、地域のコミュニティ
こうした継続参加の子ども達は、2年目以降、新規参加者のサポート役も担います。自分の言葉で生きものを解説したり、危険な場所を教えたりするその姿は、後に続く子ども達の憧れです。
また、本活動は「親子」での参加が条件。子どもだけでなく、親同士も共に学び、つながる場となっています。「活動を通して、保護者の皆さんも地域の自然の豊かさや、それを守る人の存在に気づいてくれる。その輪が広がることが大切なんです」と村田さん。子ども達の成長を地域全体で見守る、温かいコミュニティがここに育まれています。

調査員からリーダーへ
「光が丘公園生きもの調査」は非常に人気が高く、数年にわたり継続するご家族や、小学校卒業後も参加し続ける子たちもいます。
その魅力は本格的な生きもの調査だけではありません。調査終了後に開催される未就学児向けの「森のようちえん」において、調査員の彼らが、今度は運営の担い手「小・中学生リーダー」として活躍できる点もあります。
かつて自分たちもこのプログラムで育った先輩として、今度は支える側に立つ。数年にわたり継続する家族や、卒業後もリーダーとして参加し続ける子が多いのは、この「役割の循環」があるからこそかもしれません。ここからは、大人スタッフと連携して「森のようちえん」を支える、頼もしいリーダーたちの活躍を紹介します。


森のようちえんを支える「小・中学生リーダー」
調査を終えた子ども達が次に向かったのは、未就学児親子を対象とした自然体験プログラム「森のようちえん」の集合場所。ここからは、先ほどまで「調査員」として活動していた子ども達が、「小・中学生リーダー」へと役割を変え、運営の担い手として活躍します。
この日の参加者は、20名ほどの未就学児とその保護者。冬の森で生きものを探したり、防災かまど(かまどベンチ)で「どんぐり蒸しパン」をつくったりと、盛りだくさんの内容です。かつて自分たちもこのプログラムで育ったリーダーたちは、小さな子ども達の歩幅に合わせ、園内の生きものについて優しく教えるガイド役を務めます。
一方、かまどベンチのある広場では、別のリーダーたちが蒸しパン作りの準備をしています。調理についてのレクチャーの練習を、本番直前まで重ねる姿もありました。
森のようちえん参加者が広場に到着すると、蒸しパン作り担当のリーダーたちは、参加者へ満面の笑顔を向けながら、楽しい雰囲気で調理をサポート。大人スタッフと連携しながらテキパキと火の番やレクチャーをこなす姿は、まさに活動の「未来の担い手」そのものでした。



公園との連携が活動を支える
どんぐり蒸しパンを調理する「かまどベンチ」は、通常はベンチとして使用されていますが、ベンチの座面の板を外すなどすることで、災害時に炊き出し用のかまどとして利用できる公園の防災設備です。公園の防災設備を使ったプログラムとすることで、公園が災害時にも役立つことを体験できます。
楽しみながら防災を学ぶこの取り組みは、公園を管理するサービスセンターとの良好な関係性があってこそ実現できるもの。プログラムの最後には、かまどベンチが公園にある理由などをサービスセンターの方から教えてもらいます。光が丘公園のセンター長の菅野さんは、子ども達に「地震などで公園に避難したときに、ベンチがかまどになることを覚えておいてね」と優しく語りかけていました。

センター長とともにプログラムの支援をしていた副センター長の加藤さんは「我々もかまどベンチを月に一度点検をしていますが、実際に使って使用できることを確認してもらえるのは助かります。魅力的なイベントによって、新しい層が公園を訪れてくれるきっかけになっているのもありがたいです」と話していました。
未来へ向けて
「今後は、中学生になった子たちがさらにステップアップできるような場も作っていきたい」と村田さんは展望を語ります。調査で得られたデータが、実際の公園管理に活かされることも目標の一つです。
公園を「学びのフィールド」として捉え、楽しみながら未来の担い手を育てる「みどり環境ネットワーク!」。その活動は、都市の公園の新たな可能性を示しています。そして、着実に次世代のみどりを育む人材が育っていっています。
■取材後記
森のようちえんイベントに参加して、参加者である未就学児だけでなく、サポーターである小・中学生リーダーにとっても成長の機会になっていたのが印象的でした。責任をもって自分の持ち場で活躍する小・中学生リーダーはたくましい! 自然観察という位置づけだが教育プログラムとしても、地域のことを担う若者を育てるという意味でも素晴らしいプログラムでした。サービスセンターとの連携も印象的でした。かまどベンチを活用しているのも、防災公園でもあることを地域の人に知ってもらえるいい取り組みでした。(跡部)
公園の楽しみ方を広げ、次世代の自然の守り手を育てる活動。1本1本の木も、ちょっとした茂みも、地面に落ちた葉っぱや実、穴やスキマなど、すべてが見ドコロで、普通に通り過ぎてしまってはもったいない!公園の解像度がグッとあがります。子どもたちは知識量も豊富でたくましい!目をキラキラ輝かせた子どもたちの好奇心と探究心、そして彼らの成長を、大人たちが温かく見守っていました。(椛田)
団体情報
| 公園名 | 光が丘公園 |
| 団体名 | 特定非営利活動法人みどり環境ネットワーク! |
| 設立 | 2003年 |
| 活動内容 | 自然観察会、木工教室、森のようちえん、親子生きもの調査など |
| 活動日 | 毎月1回 日曜日 |
| メンバー数 | 公募による小学生親子調査員とNPO会員有志、総勢40名 |
| ボランティア活動に参加するには? | 特定非営利活動法人みどり環境ネットワークにご連絡ください |
| 助成金情報 | 公益財団法人 東京都公園協会では「都立公園事業に参加協力する都民への助成金」を設けています。詳しくは以下のリンクをご確認ください https://www.tokyo-park.or.jp/public/volunteer/about/ |