地域の公園ボランティア活動を紹介する「となりの公園愛護会」。今回は、公園のイメージアップを目指して、行政、警察、地元企業とともに清掃活動やイベントを精力的に行ってきた、こちらの皆さんです。今回は8月の活動日にお伺いしました。
福岡の中心地にある長浜公園
福岡市中央区にある長浜公園(ながはまこうえん)は、福岡の中心地にあり、夜の街として知られる親不孝通りや、ライブハウスが立ち並ぶ通りに面している、かつては少し近寄りがたいイメージもあった公園です。この春2025年3月に公園の一部リニューアルも完了し、長浜公園はこの約10年で「小さな子どもたちの公園」、「親子の公園」へと大きくイメージが変わりつつあります。その裏には、町内会や行政、警察、地元企業とともに考えた、壮大なイメージアップ戦略がありました。


こちらの公園で、毎週日曜日に清掃活動をされているのが長浜公園愛護会の皆さんです。長浜公園愛護会は、舞鶴一丁目3区町内会の皆さんが担われています。
毎月第3日曜日は、福岡県警察中央警察署の天神特別対策隊(天神周辺(繁華街・歓楽街)の環境浄化を目的に活動)や地元企業も一緒に、公園に加えて親不孝通り周辺の清掃もしています。さらに、第4日曜日には役員以外の町内会員や一般の方も参加し、30名規模で公園清掃を行うなど、清掃活動も地域に広がっています。
その活動は、清掃だけにとどまらず、多彩なイベントを次々と企画し、近年では「パークマネジメントの視点を取り入れた仕組みづくりもはじめました。今回は、そんな長浜公園の変化の中心で活動されてきた、長浜公園愛護会 会長の重孝義さんにお話を伺いました。

「公園のイメージを変えたい」からはじまった活動
毎週日曜日の朝。長浜公園には、町内会役員の方を中心に10名ほどの方が集まり、集まってきた方から次々と、ゴミ袋とトングを手に和やかに清掃活動が始まります。この日は役員の方々に加え、90代の町内の方も一緒に活動を行ってくださいました。


この日、ごみ袋をもって清掃活動をしていると、「入れさせてもらっていいですか?」と吸い終わったたばこの空箱を持って来てくれた若者がいました。毎週末続けている活動が、ポイ捨て等の抑止力にもなっているのだろうと感じる出来事でした。
しかし、以前の公園は全く違う姿だったそうです。
もともと公園周辺は予備校が多く、予備校生を対象とした喫茶店、居酒屋などができ、次第に夜の街、若者が集まる繁華街として知られていきました。長浜公園も、夜は騒がしく、ゴミのポイ捨ても後を絶ちませんでした。
そんな中、10年ほど前に「公園のイメージを変えたい」と活動が始まりました。周囲の方からは、「関わらんほうがいい」という意見もあったそうですが、福岡市が親不孝通りを再整備するタイミングだったこともあり、これを機に大々的に活動がはじまりました。
スリーゼロ(ごみ、らくがき、飲酒運転ゼロ)を目指して
公園を「ごみで汚れた、若者のたまり場」から「地域の子どもたちが主役の場」へと転換させるために、スリーゼロ(ごみ、らくがき、飲酒運転ゼロ)の目標を掲げました。
これは、福岡県警が推進する「飲酒運転ゼロ運動」を目指す取り組みに、地域の実情に合わせ「らくがきゼロ」「ゴミのポイ捨てゼロ」といった目標も加え、街のイメージアップを図っています。


その中心的な活動が、以前から町内会で行っていた清掃活動です。約10年前から本格的に取り組みをはじめ、町内会に加えて警察や近隣の企業なども巻き込む形に発展しました。
この日拾ったごみは、70リットルのごみ袋が2~3袋程でしたが、公園リニューアル前は、1回の清掃でごみ袋が何袋もいっぱいになることも珍しくありませんでした。

リニューアル後は、死角になりやすかった植え込みなどの場所をなくして公園全体の見通しを良くし、夜のポイ捨てを減らそうと、すべてのベンチにフットライトを設置しました。夜でも明るい公園になったことで、ポイ捨てが格段に減りました。
愛護会の皆さんをはじめ地域住民の皆さんの間でも「きれいな公園を汚したくない」という意識が広がり、清掃活動への参加意欲も高まっているそうです。
ユニークなイベントの数々
長浜公園では、様々なイベントも企画されてきました。「公園をどう使うか」については、公園が位置する舞鶴地区の町内会だけでなく、道路を挟んで向かいの天神地区の町内会と一緒に考えました。リニューアルで新しくなった公園をどう使うか考えた際、とにかく「子どもたちにいかに楽しんでもらえるか」を考えたそうです。
リニューアル前には、夏祭りに合わせて園内の小さな丘にブルーシートを敷き、上から水を流す手作りの「ウォータースライダー」をつくりました。今年の夏祭りでは、大小複数のビニールプールを用意し、氷を投入したり、シャワーをしたりと、子どもたちが喜ぶ仕掛けを実施し、子どもたちに喜んでもらったそうです。

ほかにも、近隣の日本語学校に通うネパールからの留学生たちを招いて、日本の伝統文化である「そうめん流し」で国際交流を図ったり、冬には公園全体を彩るイルミネーションを点灯したりと、季節ごとに人々が集まる仕掛けを次々と実現してきました。

イベントには行政からの補助金も上手く活用しています。「町内会単位で申請できる補助金を複数の町内会で連携して使えば、より大きな企画も可能になります」と重さん。過去にはキッチンカーを25台以上集め、何千人規模のイベントを開催したこともあるそうです。

夜の公園を変えた安全・安心への徹底したこだわり
イメージアップ戦略は、防犯対策にもおよびます。夜間のポイ捨てを減らすために設置したベンチのフットライトは、暗かった足元が優しく照らされ誰もが安心して過ごせるようになりました。今では「夜は大人の公園だね」と喜ばれているそうです。
公園の喫煙所やグラウンドなどにも高性能な防犯カメラも設置し、リニューアル時には福岡県警のブラスバンドが演奏に来てくれ、白バイやパトカーが公園に展示されるなど、警察も積極的に協力してくれています。
この連携は、公園が地域の安全を守る拠点としての役割も担っている証になっているように感じます。



「ボランティア」から「パークマネジメント」へ
活動をスタートして10年目を迎え、重さんは次のステージを見据えています。
「無償のボランティアだけで活動を続けていくには限界があります。そこで、愛護会の活動にパークマネジメントの考え方を取り入れようとしています。特に次の世代に繋いでいくためには、活動が持続可能になる仕組みが必要です」と重さん。
主催者側がすべてを企画するのではなく、「公園というプラットフォームに、住民が主体的に関われる仕組み」を目指しています。
「例えば、公園のイベントに出店する人から出店料をもらい、それを公園の維持管理や新たな活動の資金に充てるなど、『公園を使って収益を生む』という視点を取り入れられないか、行政とも相談・連携しながら進めていきたい」と構想を話す重さん。そのための仕組みの検討を行っている最中だそうです。
得られた収益を公園運営の協力者に少しでも還元できれば、参加のハードルも下がり、今まで公園に関わってこなかった新たな担い手が見つかるなど、公園の可能性が広がっていくのではないかとこれからの展望についても話してくださいました。
この考えは、地域の企業との連携にも繋がっています。
九州の地域ヒーロー「ドゲンジャーズ(九州の地元企業をモチーフとした多数のヒーローが登場する番組)」を生み出した企業がオフィスを天神に構えていたことがあり(現在は博多に移転)、何か地域貢献できないかと相談があったことから、活動への協賛をいただいています。公園での清掃活動のときに「ドゲンジャーズ」のロゴが入ったオリジナルのごみ袋を使用することで、ゴミ拾い活動が、企業のPRにもなるという新しい関係性を築いています。


「地域の子どもたちが主役の場」として生まれ変わった長浜公園では、街のランドマークとして、今後も公園というプラットフォームをもとに、公園運営の担い手や企業との新しい関係性の事例が次々と生まれていきそうです。
【基本情報】
団体名 | 長浜公園愛護会 |
公園名 | 長浜公園 (福岡市中央区) |
面積 | 4,549 m2 |
基本的な活動日 | 【公園清掃】毎週日曜日 8:00~9:00頃(第3日曜日は11:00~親不孝通りの清掃も実施) 【イベント】夏と冬にお祭りを実施 |
いつもの活動参加人数 | 【公園清掃】10~30名ほど(第4日曜日は一般の方も含めて大々的に清掃活動を実施) |
会の会員数 | 町内会役員10名ほど |
活動内容 | ゴミ拾い、除草、利用者へのマナー喚起、地域のイベント、子ども向けイベント 、他団体と連携したイベントなど |
設立時期 | 2016年 |
主な参加者 | 愛護会、町内会など地域の皆さん |
活動に参加したい場合は | 第4日曜日に公園にお越しください |