2025/8/20

JR九州の地域貢献、毎週の職場清掃で公園も

馬出御所ノ内公園(福岡市)

各地の公園ボランティア活動を紹介する「となりの公園愛護会」。今回は、福岡市で新たに始まった取り組み「企業版公園愛護会」の認定企業として公園での清掃活動をされている九州旅客鉄道株式会社 建設工事部のみなさんです。公園愛護活動の内容や企業としての取り組みについてお聞きしてきました。

JR九州 建設工事部のみなさんの地域貢献活動

福岡市東区にある馬出御所ノ内公園(まいだしごしょのうちこうえん)。JR吉塚駅や福岡市地下鉄 馬出九大病院前駅から歩いて10分ほど、JR鹿児島本線の高架横にある街区公園です。線路沿いに細長く見通しの良い園内には、遊具やベンチ、芝生広場、舗装された園路などがあります。近くにコンビニもあり、地域の子どもたちはもちろん、近隣で働く大人たちもランチや休憩で利用するのにぴったりな公園です。

(馬出御所ノ内公園:公園名の読み方はやや難しいですが、一度覚えるとつい口に出したくなる名前です)

こちらで公園ボランティア活動を行っているのは、九州旅客鉄道株式会社 建設工事部のみなさんです。企画課 担当課長の隈部佳さんと古賀邦明さんにお話をお聞きしました。

JR九州の中でも、建設工事部は、新駅や線路の建設工事、河川や道路を跨ぐ橋の架け替え、高架橋の建設工事や補修点検など、鉄道を支えるインフラ工事の計画・設計・発注・施工管理などを行う部署。土木や建築・機械・電気のエキスパートのみなさんが、運転士さんや駅員さんなど鉄道運行のお仕事とは全く違う業務を行っています。

建設工事部の事業所は公園からすぐの場所にあり、多くの社員は毎日公園を通って通勤されているとのこと。

(左から古賀さんと隈部さん:これまでにも九州の各地で工事のお仕事をされてきたそう)

「4S:整理・整頓・清掃・清潔」を実践した毎週の事業所清掃タイムに公園清掃

JR九州 建設工事部では、毎週水曜日に職場清掃タイムが設けられているそうです。お昼休み後の10〜20分、140人の全従業員が7〜8パートに分かれて、職場内や事業所の周辺を清掃するというもの。なんとその清掃エリアの中に公園も含まれているとのこと!

スタッフ全員での事業所清掃は、安全で健康な職場づくりと生産性の向上をめざす活動「4S(整理・整頓・清掃・清潔)」の実践として、建設工事部で長く続く取り組みだそうです。そして「地域を元気に」という企業理念も相まって、10年ほど前から馬出御所ノ内公園も清掃エリアに含まれるようになったのだとか。

社員さんたちは毎週交代でいろいろなエリアの清掃をすることになっていて、3ヶ月に1回くらいの頻度で公園も担当。公園清掃はゴミ拾いを中心に5〜10人くらいで行っているそうです。

担当する清掃エリアの割り振りは、企画課のみなさんが行い、前日に周知。社員のみなさんにとっても、ちょうど良い機会になっていることを教えてくださいました。

(みなさんの活動の様子:提供 JR九州 建設工事部)
(毎週水曜のランチタイム後に職場清掃の1エリアとして公園でもゴミ拾い:提供 JR九州 建設工事部)

企業版公園愛護会に認定

このように自発的に自然な形で実践されてきた地域貢献活動が、福岡市の目にとまり「企業版公園愛護会」として認定されることに。

福岡市ではこれまで、このような企業の自主的な公園清掃に対する認定や支援はありませんでしたが、公園に関わる仲間を増やそうと新たに作られた「企業版公園愛護会」の第一弾認定企業の一員になりました。

制度づくりにおいても、企業として参加しやすく継続しやすい仕組みづくりのために、市からのヒアリングを受け意見を出されたそう。福岡市の担当者によると、事務書類の手間と負担やゴミ袋の受け取り方法など、企業側の視点は市にとっても大いに役立ったようです。

「ずっと続けてきたことを見つけてもらい、認定してもらったことは、励みになりますね」と笑顔で話してくださった隈部さんと古賀さん。今後は公園に一人一花のような看板プレートがあればいいかもしれないといった新たなアイデアも出ました。

地域住民に限らず、企業や学校などいろいろな人たちの力を公園育てに生かしていこうと「企業版公園愛護会」制度を立ち上げた福岡市の取り組みはこちら ▼

無理なく自然な形=持続可能なスタイル

地域のために少しでも役に立てたらという思いで続けてきた公園でのゴミ拾い。毎週の職場清掃に公園も組み込むという自然な形で行っているからこそ、持続可能なスタイルができているようです。

そして、JR九州のみなさん以外にも、花植えや木の剪定をしている地域の人がいらっしゃることを教えてくださいました。企業版公園愛護会の認定にあたっては、市を通して地域の人の意向も確認しています。

それぞれが都合の良い時間やタイミングで公園に関わっていることで、一緒に作業することがなくても、お互いの存在を暖かく感じられ、公園を守り育てる人の手が増えているのはステキなことです。

企業版公園愛護会に認定されても、認定前と変わらず毎週の公園清掃を続けていらっしゃるJR九州 建設工事部のみなさん。「地域に貢献したい」という企業の思いを、無理なく形にしている姿が印象的でした。

(日々の業務の延長として自然な形で公園清掃:提供 JR九州 建設工事部)
(公園にある掃除道具からも地域の方の存在が感じられます)
(木の周りのサークルベンチをはじめ、公園内にはベンチがたくさんありゆっくりできます)
(遊具もあります!)

【基本情報】

団体名九州旅客鉄道株式会社 建設工事部
公園名馬出御所ノ内公園(福岡市東区)
面積2,435 m2
基本的な活動日毎週水曜日
活動内容ゴミ拾い
設立時期企業版公園愛護会の登録は 2025年4月から
主な参加者従業員のみなさん
取材・執筆
取材・執筆
椛田 里佳 代表理事

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフト。夫を難病で亡くし、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフト。夫を難病で亡くし、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

取材・執筆
みんなの公園愛護会の書籍紹介 学芸出版社

みんなの公園愛護会初の書籍。「推しの公園を育てる!公園ボランティアで楽しむ地域の庭づくり」が学芸出版社から刊行されました。全国各地の推しの公園活動やボランティア運営のヒントが紹介されています。ぜひ手にとってお読みください。https://park-friends.org/books/book1/

みんなの公園愛護会初の書籍。「推しの公園を育てる!公園ボランティアで楽しむ地域の庭づくり」が学芸出版社から刊行されました。全国各地の推しの公園活動やボランティア運営のヒントが紹介されています。ぜひ手にとってお読みください。https://park-friends.org/books/book1/

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