2025/5/29

オフィス街の公園、住んでいてもいなくても、ここが「私たちの育てる公園」

城見緑道公園(大阪市)

地域の公園ボランティア活動を紹介する「となりの公園愛護会」。今回は、大阪のオフィス街で、創意工夫をして活動の輪を広げている、こちらのみなさんです。

大阪城が見えるオフィス街にある城見緑道公園

大阪市中央区にある城見緑道公園(しろみりょくどうこうえん)。城見緑道公園は、約26haもの規模を誇るオフィス街である大阪ビジネスパークの中に位置しています。寝屋川と第2寝屋川に挟まれて位置しており、大阪城を眺められるスポットでもあります。オフィス街でありながら、自然、歴史を感じられる城見緑道公園では、取材当日の朝も散歩や、ジョギングを楽しんでいる方がいました。

(お散歩やジョギングにピッタリの公園です)
(公園から見れる大阪城)

こちらの公園でボランティア活動をされているのは、城見緑道公園愛護会のみなさんです。日々の活動の様子はInstagramで発信されています。活動日は、毎週土曜日の朝9:00-10:30で、誰でも参加OK、周辺の企業も活動に参加しています。3月上旬のこの日は飛島建設の社員の皆さんも活動に参加していました。活動後は、会長の矢野叔永さんをはじめとするメンバーの皆さんにお話をお聞きしました。

 (笑顔が素敵な会長の矢野さん)

住民がいない!?愛護会立ち上げ期の苦悩

城見緑道公園愛護会は、矢野さんがお近くにお住まいだったこともあり、定年退職を機に、ご近所さんを中心に2020年10月に設立されました。住宅街にある一般的な公園とは違い完全なオフィス街のため、住民がおらず、愛護会の中心になりうる自治会や町内会などもありませんでした。そのため、活動初期はメンバーの招集には大変苦労されたそうです。しかし、現在は、企業の参画がない活動日でも常時15〜20名のメンバーが集まり、充実した活動をしているといいます。その秘訣について詳しくお聞きしました。

(活動後のカフェでのお茶会はみなさんの大切なコミュニケーションの場です)

仲間づくりの工夫:誰でも歓迎、SNSでゆるいつながり

メンバー募集の工夫の一つとして、公園の各所にポスターを貼っています。あえて目につきやすい花壇や、大阪城公園に繋がる橋に貼ることで、利用者の目に留まりやすく興味をもっていただけるとのことです。そのポスターには、愛護会のホームページのQRコードをつけており、Googleフォームを経由して、誰でも活動参加の申し込みができる仕組みにしています。

(活動メンバー募集のポスター)

さらにもう一つ工夫として、一度参加していただいた方には、LINEのオープンチャットのグループをご紹介しているとのこと。オープンチャットは、通常のLINEグループとは違い、匿名で参加できるだけでなく、過去のやり取りも見ることができます。それゆえ、参加の継続を迷っている方や、緩やかに活動したい方にとって、加入しやすいハードルの低いLINEグループであるといいます。

実は今、中心で活動しているメンバーの参加も、ジョギング中に活動の様子を見かけたことや、歩いていてポスターを見かけたことがきっかけだったそうです。また、実際に大阪ビジネスパーク内で働いている社員で個人的に参加される方もいて、大切なコミュニティの一つになっていると話してくださいました。

企業の協力も大きな力に

メンバーの確保が通常の公園とは違い、地域住民の手による手助けがありません。「この日の飛島建設さまのように、大阪ビジネスパーク内外の企業に参加いただけるのは、大変心強い味方ですね」と矢野さんも言います。実際に、この日も城見緑道公園に加えて大阪城公園まで、清掃に入ることができました。

(大阪城公園につながる橋のお掃除)
(細かいところまできれいにします)

また、公園には園路に沿ってたくさんの花壇が設置され、歩きたくなる公園にしてくれています。この花壇は、「大阪西ライオンズクラブ&みらいへ支部」「W OSAKA」「飛島建設」の協賛により美しく保たれています。この花壇に興味をもって活動に参加される方も少なくないようです。

(花壇のお手入れをしている様子)
(白色の花のみで統一した遊び心のある花壇)

無理せず。できるときにする!

城見緑道公園は、距離でいうと1,000mほどあります。そのため、必ず清掃するコアの場所を決めておいて、その他の場所は時間が余った場合にする程度とのこと。「無理せずできるときにすること」これが活動が継続できる要因だと言います。

一方、園路に沿った多くの花壇では、季節によってはほぼ毎日水やりが必要で、その管理に苦労されているとのことです。ただここにも工夫が凝らされており、水栓から伸ばしたホースを花壇3基ごとに地中に埋め込むことで、ホースを伸ばす手間を省いています。このようにうまく工夫しながら無理しない環境を整えることも、メンバーを広げるために必要な基盤かもしれません。

(花壇3基ごとに設置しているホース)
(埋め込まれた水栓から花壇につながるホース)

城見緑道公園愛護会ならではの仲間づくり

城見緑道公園愛護会は、活動メンバーが集まりにくいオフィス街でありながら、ネットを活用した素敵な活動の発信と創意工夫で、仲間づくりを展開できる素敵な団体だと感じました。また、お話をお聞きする中で、メンバーのみなさんの素敵な人柄に加えて、皆さん地域の住民ではなく、互いに知らない人同士であるからこそ、気軽に参加しやすいのではないかと感じました。

(私も少しお手伝いさせていただきました (右が筆者))
(クルーズ客から手をふってもらえます)

【基本情報】

団体名城見緑道公園愛護会
公園名城見緑道公園
面積20,015 m2
基本的な活動日毎週土曜 朝9:00-10:30
いつもの活動参加人数15-20名程度
活動内容ごみ拾い、除草、落ち葉かき、低木の管理、花壇の管理、植物の水やり、愛護会活動のPR、新メンバーの募集や勧誘、企業との連携
設立時期2020年
主な参加者地域の有志、周辺で働く人、企業、大学生
活動に参加したい場合はホームページをご覧ください
取材・執筆
取材・執筆
中辻 魁人

学生時代に始めたレポーター活動にやりがいを感じ、社会人になった今も継続。卒業論文、修士論文ともに公園の利用ルールについて研究し、どうすれば誰もが自由に使いこなせる公園になるか日々考えている。大阪公立大学大学院 緑地計画学研究室卒業。大阪府堺市出身。現在は関西に基盤を置く不動産会社に勤務。

学生時代に始めたレポーター活動にやりがいを感じ、社会人になった今も継続。卒業論文、修士論文ともに公園の利用ルールについて研究し、どうすれば誰もが自由に使いこなせる公園になるか日々考えている。大阪公立大学大学院 緑地計画学研究室卒業。大阪府堺市出身。現在は関西に基盤を置く不動産会社に勤務。

取材・執筆
みんなの公園愛護会の書籍紹介 学芸出版社

みんなの公園愛護会初の書籍。「推しの公園を育てる!公園ボランティアで楽しむ地域の庭づくり」が学芸出版社から刊行されました。全国各地の推しの公園活動やボランティア運営のヒントが紹介されています。ぜひ手にとってお読みください。https://park-friends.org/books/book1/

みんなの公園愛護会初の書籍。「推しの公園を育てる!公園ボランティアで楽しむ地域の庭づくり」が学芸出版社から刊行されました。全国各地の推しの公園活動やボランティア運営のヒントが紹介されています。ぜひ手にとってお読みください。https://park-friends.org/books/book1/

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