2024/10/21

公園に田んぼ!?地域の歴史と文化を楽しみながら継承

東葛西スポーツ公園(江戸川区)

色々な公園ボランティア活動を紹介する「となりの公園愛護会」。今回は、江戸川区の公園になんと田んぼがあり、そこで毎年近隣の子どもたちと田植えや稲刈りをしている団体がいると聞き、お伺いさせていただくことになりました。9月中旬の稲刈りの様子をお届けします!

住宅街にあるユニークな公園

東京都江戸川区にある東葛西スポーツ公園(ひがしかさいすぽーつこうえん)。東京メトロ東西線 葛西駅からは徒歩約30分、バスで約15分の場所にあります。近隣には小学校やアリオ葛西などの商業施設があります。公園の中心はグランドでしょうか。野球をよくやっているそうです。

グラウンドを挟むようにして、南北両サイドにもスペースが広がっており、商業施設のある北側には健康器具が3つあり、南側の左近川沿いにはトイレと「みんなの田んぼ」があります。

(商業施設寄りスペースとグラウンド)

ちなみに左近川を挟んだ向こう側には、なぎさ公園があります。

なぎさ公園は、スポーツ広場や魔法の文学館、カフェなど多機能な公園ですが、東葛西スポーツ公園側にはポニーランドがあるので、みんなの田んぼからは時々ポニーを見ることができました。色んな体験ができる楽しいエリアです。

今年もいざ稲刈り!

こちらでボランティア活動をされているのは「葛西さざなみ会」の皆さんです。

毎年5月に田植えを行い、9月の中旬に稲刈り、10月に脱穀し、12月に公園でとれたお米をお雑煮にして、近所の方々と食べるのが恒例なんだそうです。みんなの田んぼができた当初から手入れを続け、近隣の子ども達と田植えや稲刈りを行ってきました。今年でなんと20年目です。

今年も稲刈りの季節となりました。

メンバーの皆さん曰く、「今年は稲が寝ちゃってあんまり良くないなぁ」とのこと。とはいえ立派に実っています!

(刈られた稲穂が干してあり、近くを通るとふわっといい香りがします)

田植えと稲刈りは3日間に分けて、近隣小学校と江戸川区子ども未来館が午前と午後に分かれて体験にやってきます。

会の皆さんは午前9時前に集合。

会話しながら稲刈りに向けて、鳩などの鳥に稲穂が食べられないように掛けられていたネットを外して準備します。

(鳥除けネットを外して準備開始)

9時に江戸川区南葛西小学校の5年生がやってきました。

まずは葛西さざなみ会 会長の篠原昌芳さんより挨拶と作業について説明があります。鎌を使っての作業のため、怪我がないように事前によく確認が必要です。

(篠原さんからの説明)

説明後は早速体験スタート。子ども達は順番に列になり葛西さざなみ会の皆さんにマンツーマンでついてもらいます。

(いよいよ稲刈りスタート!)

稲を握り少し持ち上げ、土のついている上あたりの部分に鎌を当て、巻き込むように引いて刈っていきます。最初は苦戦している子もいましたが、数回刈っていくうちに力加減のコツを掴んでいました。

(これがいいんじゃない?と教えてくれます)

「初めてやった!楽しい」「手が汚れた〜」など思い思いの感想が溢れ出ます。普段の生活では、触れるどころか見る機会も少ない稲穂。落ちてしまった部分を「持って帰ってもいいですか?」と尋ねる子もいました。自分たちで植えた稲、季節を経てこうして立派に実ったと思うと嬉しいに違いありません。

(お友達と一緒に)
(立派な稲穂)

子ども達の反応を見ていると、こうして作物の成長を実感している子、稲刈りの作業を楽しむ子、とそれぞれの楽しみ方を見出しているようでした。

刈った稲は束にして、田んぼ横に干していきます。子ども達は稲を運ぶところまでお手伝い。束になると想像より重みが出るのも、実際にやってみるからこそ分かることです。

(両手で運びます)
(運ばれてきた稲穂が干されていきます)

実は当日参加していた葛西さざなみ会のメンバーの皆さんもほとんどが農業の体験は「みんなの田んぼ」からなんだそうです。

「やったことなかったけど、やってみると楽しいもんよ〜」と笑顔で話してくれました。

体験が終わると、子ども達からお礼の挨拶と篠原さんから今回収穫したお米を食べる収穫祭の案内がありました。12月1日11時より、餅つきをしてお雑煮として振る舞われるということです。

みんなの田んぼの始まり

1年を通じて、田植えから食べるところまで体験することが出来る「みんなの田んぼ」。江戸川区という都心の公園の一角にどうしてできたのでしょうか?

稲刈り終わりに篠原さんに「みんなの田んぼ」の経緯や葛西さざなみ会についてお伺いしました。

(園内に設置されている看板)

東葛西スポーツ公園の一角に田んぼができたのは、地域の声が発端。その地域の声は篠原さんが中心だったようです。

「ここはかつては田んぼだった、だから田んぼを作ってほしいとリクエストしたんだ。その後の世話ももちろんすると言ったよ。」

田植えや稲刈りの体験会の開催が印象的ではありますが、毎日の様子見や手入れも篠原さんによって行われています。朝、散歩がてら田んぼの様子を確認、ネットのチェックや草抜きなど必要な作業をコツコツと続けていらっしゃいます。

世話をみる、当時の言葉をまさに有言実行されています!

地域のいろんな場面で活動しています!

今年で82歳だという篠原さん。江戸川区に生まれ、農業も漁業もやってきました。子どもが小さい時、小中学校のPTAとして夜間パトロールをしていました。その時の保護者の集まり、俗にいう「おやじの会」が葛西さざなみ会の始まりだそうです。

今でも当時のメンバーは2、3名継続活動中とのこと!素敵!

葛西さざなみ会は、近隣の小学校で毎年1〜2月に海苔づくりの体験会、1年を通して「みんなの田んぼ」の体験会といった地域の歴史や文化に触れ合う機会の創出を行っています。そのほかにも、地域のお祭りでの屋台出展など様々な活動をされていますが、お話を聞いているとメインの活動は餅つきなんだそう。

「コロナ禍前は12月だと10回くらい自宅や学校で餅つきしていたよ!」と篠原さん。1日に4箇所、実に1000キロの量をついたこともあるそう。想像もつかないようなものすごい量です… !

元々家族や仲間達とやっていたことがPTAの関係などから、学校でもやってほしいとどんどん広がっていき、今でも幼稚園や小学校からもお声がかかるようです。地域との繋がりの深さを感じました。

葛西さざなみ会は結成して今年で34年、海苔づくり体験は今年で15年。どうしてここまで長く続けていられるのでしょうか?

秘訣、それはとてもシンプル。

「自分たちが楽しいからやってるだけよ!じゃなきゃ続かないよ」と笑う篠原さん。子ども達に地域の歴史や文化を知る機会を設けるのも確かにやりがいのある活動ではありますが、まずは本人達が楽しめないと何十年も続かないですよね。

稲刈り体験の時にお聞きした「農業体験はこれまでなかったけど、楽しいよ」というメンバーの方の声が重なります。

(メンバーの方、素敵な笑顔!)
(土落としに左近川で足洗い。楽しい)

葛西さざなみ会に最近入ったメンバーはなんと82歳。自分達も楽しみ、地域の子どもを含む皆んなも楽しむ機会をつくる葛西さざなみ会の活動。

これからも元気に続けられますよう、応援しています!

(陽がふりそそぎ光る「みんなの田んぼ」の稲穂)
(みんなの田んぼ 全景)
(公園をつなぐ道)

【基本情報】

団体名葛西さざなみ会
公園名東葛西スポーツ公園(江戸川区)
面積7,584 m2
基本的な活動日不定期
いつもの参加人数約13名(メンバーは30名程度)
活動内容田んぼの管理、地域のイベント
設立時期1990年
主な参加者地域の有志
活動に参加したい場合は活動している時にお声がけください
取材・執筆
取材・執筆
高村 南美

大学生の時に公園の魅力に気がつき、豊島区南池袋公園マルシェに運営キャストとして参加していました。広くて開放的な公園も好きですが、小さくて生活に身近な公園に興味があります。行ってみたい公園は、ニューヨークにあるペイリーパーク!

大学生の時に公園の魅力に気がつき、豊島区南池袋公園マルシェに運営キャストとして参加していました。広くて開放的な公園も好きですが、小さくて生活に身近な公園に興味があります。行ってみたい公園は、ニューヨークにあるペイリーパーク!

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