2024/5/9

民有地を公園に、コツコツ努力を重ねて育てる地域の広場

北5みんなの広場(茅ヶ崎市)

各地の公園ボランティア活動を紹介する「となりの公園愛護会」。今回は、地域に公園をつくりたい!という思いから、土地の交渉・開墾・整備をコツコツ行い、地域みんなの広場をつくってきたこちらの皆さんです。「鯉のぼりが上がるからぜひ取材に来てくださいね」と言っていただき、お話をお聞きしてきました。

北5みんなの広場愛護会のみなさん

茅ヶ崎市の東海岸地域にある「北5みんなの広場(きた5みんなのひろば)」。JR東海道線の茅ヶ崎駅から徒歩20分ほどの住宅街の中にある小さな公園です。この地はもともと民有地で、地元の強い要望を受け市が借地公園として整備した遊び場です。東海岸北5丁目にあるので「北5」、子どもたちの遊び場とするのはもちろん町内の防災の拠点にもしようと「みんなの広場」と名付けられました。

(住民の熱意で整備された東海岸”北5”丁目にある「北5みんなの広場」)

こちらの公園でボランティア活動をしているのは、北5みんなの広場愛護会のみなさん。東海岸北5丁目自治会(北5自治会)と連携しながら、日々この場所を見守っていらっしゃいます。前日立てたばかりの鯉のぼりが元気に泳ぐお天気のよい日曜日、吉田茂さんと鈴木由惠さんをはじめ、みなさんにお話をお聞きしました。

吉田さんはみんなの広場の整備に積極的に関わった立役者で、毎日広場を見回りゴミ拾いをされており、鈴木さんは季節の花を育てて広場をいつもきれいに彩っていらっしゃいます。

(吉田茂さん(左)と鈴木由惠さん(右)、自治会のメンバーも駆けつけてくださいました)

コツコツ開墾してDIYで作ってきたみんなの広場

もともと、この東海岸北5丁目には、公園がなく、子どもたちが自由に遊べる場所や、災害時に一時避難できる場所もなかったそうで、広場の目の前にお住まいの吉田さんは、ずっと空き地になっていたこの場所を、公園にできないものかと考え、地権者を探し交渉に出かけて行ったというお話を聞かせてくださいました。

その後、交渉は進み、2007年に市役所が借地公園として整備をし、2008年北5みんなの広場が開園することに。最初はとにかく、高く伸び生い茂った草を刈ったり、子どもたちが遊べるようにするまでに大変な苦労があったそうです。お仕事で使っていたミニユンボを使って開墾するなど、なんとか形にしたことを話してくださった吉田さん。入口の看板も吉田さんの手作りとのこと!地域への愛情と職人技が光ります。

(吉田さん手作りの看板の前で:2月にお伺いした時の様子)

遊具類はなく、全体を見渡せる原っぱのような広場は、近隣の保育園にも人気のようで、複数の保育園から毎日のように子どもたちが遊びに訪れているとのこと。

広場内に1つあるベンチは、かまどベンチになっています。災害時に炊き出しができるよう、時々フタを開けて点検もされています。

(かまどベンチの座面を開けて中を定期点検中!)

いつも花で広場に彩りを添えているのは、鈴木由惠さんです。入口の花壇やフェンスのハンギングプランターのお手入れをはじめ、広場内のアジサイや皇帝ダリア、水仙など様々なお花を少しずつ増やしながら育てていらっしゃいます。

花苗は、安く買えるお花屋さんを探して、お得に買える曜日や時間に合わせて買い出しに行かれるそうです。色のコーディネートを考えながら、季節の花を植え、お世話をしていることを教えてくださいました。お花があることで、会話が生まれたり、水やりの協力など地域のコミュニケーションが増えているというお話も。

(フェンスにかけられたハンギングプランター)
(三角ホーで草を削る吉田さんと、奥でお花のお手入れをする鈴木さん)

鯉のぼりを立てて、地域の子どもたちの成長を祝う

そして、今回の目玉の「鯉のぼり」です。これは、地域の人たちから寄付された鯉のぼりで、2008年の広場開園当初から行われているという、子どもの日を祝う恒例のイベントです。

広場の中央と四隅に穴を掘って支柱を立て、鯉のぼりを上げる作業は1日がかり。今年も15人ほどの自治会のメンバーが力を合わせて作業をしたそうです。てっぺんには吉田さんのお宅の月桂樹の葉が飾られています。作業をした自治会の方の中には、「うちには男の子がいないから鯉のぼりを上げたことはなかったけど、楽しいから協力しています!」とおっしゃる方も。

とても立派な鯉たちが青空で元気に泳ぐ姿は壮観!!

(元気に泳ぐ鯉のぼり:支柱のてっぺんには吉田さんのお宅の月桂樹の葉が)

早速、ご近所から親子連れが何組も訪れて、写真を撮る姿が。

鯉のぼりに加えて、この日のために吉田さんは子どもたちのために、水風船ヨーヨーも用意していました。広場を訪れた子どもたちは、プレゼントしてもらったカラフルなヨーヨーをばしゃばしゃさせながら、楽しそうに走り回っていました。

人口が増えている茅ヶ崎では、子育て世帯の転入も多く、子どもも増えているそうです。

「子どもの声が聞こえるのは幸せなことですよね」と笑顔で話してくださった皆さん。子どもたちの成長を地域で祝い、みんなで楽しい時間を過ごせることは、どの世代にとっても大きな喜びになることでしょう。

鯉のぼりは、4月末から5/6まで1週間ほど飾る予定とのこと。(取材後の追記:期間中は毎日たくさんの近所の子どもたちが訪れ、ヨーヨーとともに楽しい時間を過ごされたそうです!)

(風でからまってしまった鯉のぼりは、長い棒を使って元に戻します。はい、何度でも!)

七夕、宇宙アサガオ、お楽しみは続く、そして公園再整備へ

子どもの日の鯉のぼりのほか、七夕イベントも北5みんなの広場の恒例行事。ご近所の有志のお宅が提供してくれる大きな笹を広場の中央に立て、子どもたちが願い事を書いた短冊を飾るとのこと。回覧板で案内して、たくさんの子どもたちの参加があるそうです。

かつては、ご近所の方が野菜を売ったり、もちつきや、おはぎを作るなど、いろいろなイベントが行われたことを教えてくださいました。

今年の夏のお楽しみは、「宇宙アサガオ」です。これは、2010年に宇宙飛行士の山崎直子さんと一緒に約9ヶ月間宇宙に滞在した「NAOKO☆アサガオ」の子孫で、10代目の種とのこと。

茅ヶ崎公園体験学習センター「うみかぜテラス」で、茅ヶ崎出身の山崎さんゆかりのアサガオの種の配布をしているそうで、そんな10代目の宇宙アサガオが北5みんなの広場に来ました。ちょうど芽が出てきたところで、この日大きな鉢に移されました。どんな花を咲かせるのでしょうか。

(これが宇宙アサガオの10代目!)

そしてついに今年2024年、この広場の公有地化と再整備が決まりました。市による土地の購入と再整備が決まった背景には、熱心な愛護会活動があることやこの場所が地域に親しまれていることも大きく影響しているようです。

「存続できるのは本当によかった」と口々に話してくださったみなさん。北5みんなの広場がこれからどのように再整備されていくのか、私たちも楽しみです。

(いつもの広場にたくさんの鯉のぼりが現れて、大はしゃぎ!)

【基本情報】

団体名北5みんなの広場愛護会
公園名北5みんなの広場(茅ヶ崎市)
面積425 m2 (再整備後は534m2になる予定)
基本的な活動日不定期
活動内容ゴミ拾い、除草、花壇の管理、低木の管理、植物の水やり、施設の破損連絡、利用者へのマナー喚起、地域のイベント、子ども向けイベント
設立時期2008年(公園愛護会としては2015年)
主な参加者自治会、地域の有志のみなさん
取材・執筆
取材・執筆
椛田 里佳 代表理事

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフト。夫を難病で亡くし、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフト。夫を難病で亡くし、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

みんなの公園愛護活動レポートに戻る