2023/12/4

ガーデンとファームで公園を作る前からコミュニティづくり

Kiyose花のある公園(清瀬市)

各地の公園ボランティア活動を紹介する「となりの公園愛護会」。今回は、これから公園として整備される公園予定地で、公園の未来像を考えながらお試しで多年草ガーデンづくりやコミュニティファームでの野菜づくりも行っている、こちらの皆さんです。

遺贈された土地を公園にするKiyose花のある公園プロジェクト

清瀬市中里にある(仮称)花のある公園(はなのあるこうえん)。西武池袋線の清瀬駅からバスを使って10分ほどの場所にある、広さ約1ヘクタールの公園予定地です。

こちらは、地元にお住まいだった故伊藤ヨシさんによって清瀬市に寄贈された土地です。通りを挟んで隣接する伊藤記念公園台田の杜も伊藤さんの意向により寄贈され2009年に整備されたものです。

広い原っぱのような園内には、エノキやクルミなどの大きな木や、多年草を中心としたナチュラリスティックガーデン、コスモス畑、野菜を育てるコミュニティファームなどがあります。

(たくさんの種類の草花が風になびくナチュラリスティックガーデンがきれいです)

こちらの公園予定地でのガーデニングやコミュニティファームなどの活動は、「Kiyose花のある公園プロジェクト」として市民に開かれた形で行われており、その様子は、清瀬市のホームページや、FacebookInstagramなどで紹介されています。

ガーデニング活動とナチュラルマーケットのある水曜日にお伺いし、ここで公園づくり活動を行っているスマイルプラスの木村智子さんと、市民ボランティアの皆さんにお話をお聞きしました。

(ランドスケープアーキテクトでコミュニティガーデンコーディネーターでもある木村智子さん)

ワークショップやイベントを通して地域の人が公園づくりに関わる

このKiyose花のある公園プロジェクトは、四季折々に花が咲き誰もが憩い楽しむことができる公園をみんなでつくるプロジェクトです。この新しい公園(仮称)花のある公園が、どんな公園になったらいいか?公園をどう使って、どう管理していくか?を話し合いながら、様々な取り組みを行ってきました。

まずは、2019年に全5回のワークショップを開催。コスモスの種まきや花摘み、周辺の自然観察などのお楽しみ要素も入れながら、どんな公園にするのか?の方向性を地域の人たちで話し合いました。

ワークショップの結果を踏まえ、清瀬の豊かな自然や畑のある環境を生かし、近所の子どもや高齢者をはじめ誰でも使える公園になるよう、自由に使える芝生・原っぱ広場や交流広場、コミュニティガーデンやコミュニティファームなどを作ることを目指しています。

(公園のイメージ図:(仮称)花のある公園基本計画より)

公園がオープンするまでの期間中も、地域の人々が少しでもこの公園予定地に来て楽しく関わってもらえるよう、プレパーク事業として、オープンパークイベントやガーデニング講座などのイベントが行われています。

ここで行われたガーデニング講座がきっかけで、公園づくりの活動を知り、今では毎週参加しているというボランティアの方もいらっしゃいました。

ランドスケープアーキテクトでコミュニティガーデンコーディネーターでもある木村さんが、ワークショップの企画運営や、プレパーク事業を請け負い、コミュニティガーデンやコミュニティファームの運営を取り仕切りながら、地域の様々な人を呼び込み、つながりを広げて、公園づくりを進めています。

オープンパークイベントでは、公園予定地にみんなが集まり思い思いの過ごし方をするほか、近くの中学校吹奏楽部による演奏会、たねダンゴづくり、苗木の配布、サツマイモ掘り体験、マーケットなど市民による様々な「お試し利用」が行われ、毎回とても盛り上がるそうです。

ワークショップやイベントなど公園づくりの様子は「花のある公園だより」としてまとめられ、地域の人々へ情報発信されているのも良いところです。これまでに発行された全13号の内容は清瀬市のホームページで公開されていて、とても読み応えがあります。

(Kiyose花のある公園プロジェクト 花のある公園だより)

毎週水曜ちょこっとガーデニング

「手間とお金をあまりかけられないけれど、1年中花がどこかで咲いている」そんな公園花壇をつくるためのアイデアが、球根や宿根草を含む多年草を上手に使った自然の趣のあるナチュラリスティックガーデン。

公園ができた時に多年草を使ったローメンテナンスの花壇を作るため、専門家から基礎を学ぶナチュラルガーデン入門講座を行ったり、工事開始までの期間を使って多年草実験花壇を作って、市民ボランティアが花壇づくりを実践で学んだりという取り組みが行われています。

毎週水曜日は、ちょこっとガーデニングとして、木村さんと市民ボランティアの皆さんによるナチュラルガーデンのお手入れが行われています。

参加メンバーは、お花や緑好きのご近所さん。お友達同士で声をかけた人、やりたいと手を挙げた人、公園の掲示板やSNSを見た人、講座に参加した人、通りがかりの人など、様々な人が参加されているそうで、市のボランティアに登録し活動しています。

この秋は、過酷な夏の暑さで作業ができなかった期間の整理をして、秋の美しさを楽しむのと同時に、春以降の工事で撤去されてしまう植物たちの保存やお裾分けの準備を行っているとのこと。

この日も近くの保育園の子どもたちが遊びにきて、ボランティアの皆さんと花摘みを楽しんでいました。保育園の子どもたちは、コスモスを種から一緒に育てたり、走り回ったり、自然遊びをしたり、虫取りをしたりできるこの公園が大好きなようです。

(保育園の子が得意げに見せてくれた素敵な花束:花のある公園プロジェクト提供)
(子どもたちと一緒に種から育てたコスモス:花のある公園プロジェクト提供)

地元のお店が集まるナチュラルマーケット

ちょこっとガーデニングのあとは、こちらも水曜名物ナチュラルマーケットの時間です。11:00になると移動販売の車が続々と到着。JA関連、清瀬市内で知的障がい者の就労支援をしている社会福祉法人や起業者支援のお店が来て、お買いものタイムです。

ガーデニングメンバーの皆さんも、マーケットでそれぞれ好きなものを買ってランチやお茶をするのが恒例のようです。

2021年7月に始まったナチュラルマーケットは、毎週30分だけ現れる小さなマーケットですが、美味しいものが集まり、地元の人たちに愛される温かい時間になっていました。

月1回の日曜はコミュニティファームで農的活動

(仮称)花のある公園には、ナチュラルガーデンのほか、コミュニティファームエリアがあり野菜づくりをしています。こちらの活動は毎月第3日曜日の午前中で、将来そのエリアで活動してみたい人たちが、お試しで野菜などを育てています。

2022年6月からスタートし、無農薬で自然に優しく元気な野菜育てのためのアイデアを持ち寄って実験をされているとのこと。雑草農法やいろいろな農法を試しているほか、木の枝を組んで自然の力で堆肥づくりをするバイオネスト作りにも挑戦しているそうです。

(ガーデンの横にあるバイオネストは、おしゃれな堆肥づくりスペースになっています)
(いろいろな農法を比較実験しながら楽しく野菜を育てる皆さん:花のある公園プロジェクト提供)

公園は地域の人とつながる場所

花のある公園プロジェクトには、子どもからシニアまで幅広い人が関わっています。ご近所の方、こども劇場をやっている方、各地の耕作放棄地対策や野菜育てをしている方、ガーデニング好きで畑にも興味があるという方、近隣の保育園、親子連れやお年寄りも、様々な人が、それぞれの関わり方をされているようです。

ワークショップが始まる時から参加されているというご近所にお住まいの中村さんは、夏に公園予定地で「夕涼み会」を企画。コロナ禍で楽しむ機会が少ない中、子どもたちが浴衣を着て楽しく出かけるイベントをやってみたいと夏休み最後の土曜日の夕方に開催。昨年とても好評だったので、今年も実施しとても盛り上がったそうです。

「やれば課題も見えますが、仲間も増えますね」と話してくださった中村さん。とても楽しい時間になったことを教えてくださいました。

「ここに来るようになって、市内の人といろいろな交流がもてるようになりました」と話してくださったのは二ツ木さんです。ガーデンで採れたハーブを使ってハーブクッキングをするなど、育てたものをみんなで楽しむという活動にも発展しているとのこと。

この地域は自治会がないそうで、これからこの公園を起点に防災のことなども考えていきたいというお話も出ていました。さまざまな形で公園を積極的に利活用して、地域コミュニティを育てていこうと考えている皆さん。意欲は旺盛です。

実は、Kiyose花のある公園プロジェクトのボランティア有志の方や木村さんとお会いしたのは、先日の稲荷公園での三世代交流の日。公園でのイベントや多世代交流のための視察に訪れていたそうです。稲荷公園での出会いがきっかけとなり、今回の取材にも繋がったのでした。

(大きなエノキの木の下のベンチでおしゃべりを楽しむご近所さんもいるそうです)

これからの工事期間中にみんなで公園のルールづくり

コロナ禍も工夫をしながら、様々な取り組みを行ってきたKiyose花のある公園プロジェクト。来春にはいよいよ公園の工事がスタートするそうで、公園予定地が使えるのは、2024年の3月までとのこと。

工事期間中は、ガーデニングなどの活動はできませんが、公園のオープンに向けて、地域の人たちで公園協議会を結成し、公園のルール作りなどを行っていく、話し合いの時間にすることを木村さんが話してくださいました。

ワークショップでも公園のルール作りに興味があるという人が多かったそうです。これまでの期間でも様々な実験をして、いろいろな「やってみたい」を試してきた皆さんが、(仮称)花のある公園でどのような地域の公園ルールを作っていくのか、楽しみです。Kiyose花のある公園プロジェクトの皆さんの取り組みをこれからも見ていきたいと思います。

(この広い原っぱがどんな公園になるのか、楽しみですね)
(秋のガーデン:花のある公園プロジェクト提供)
(春のガーデン:花のある公園プロジェクト提供)

【基本情報】

取り組み名Kiyose花のある公園プロジェクト
活動場所(仮称)花のある公園 (清瀬市)
面積約 10,000 m2
基本的な活動日毎週水曜日 9:30-10:30(ちょこっとガーデニング)、11:00-11:30(ナチュラルマーケット)
毎月第3日曜日 9:30-12:00頃(コミュニティファーム)
いつもの活動参加人数毎回 10人くらい
活動内容コミュニティガーデン、コミュニティファーム、ゴミ拾い、除草、落ち葉かき、低木の管理、花壇の管理、植物の水やり、地域のイベント、子ども向けイベント、公園のルールづくり
設立時期2019年
活動に参加したい場合は活動日にお越しください。FacebookInstagramで最新の活動情報を発信しています。
取材・執筆
取材・執筆
椛田 里佳 代表理事

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフト。夫を難病で亡くし、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフト。夫を難病で亡くし、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

みんなの公園愛護活動レポートに戻る