各地の公園ボランティア活動を紹介する「となりの公園愛護会」。今回は、広い公園内でたくさんの花壇のお手入れをしているこちらの皆さんです。公園内の施設や管理事務所と協力しながら、10か所の花壇と7つのプランターの管理、Twitterの活用もされています。
大倉山の地名の由来にもなった地元が誇る記念館と公園
TwitterやFacebookなどSNSを活用する公園ボランティア団体も増えている中、Twitterで定期的に活動の予定や様子を発信している愛護会があります。今回はTwitterのつながりから、公園内で多くの花壇を管理している愛護会さんで夏の花壇の花植えが行われるということで、活動日を見学させていただくことになりました。
横浜市港北区にある大倉山公園(おおくらやまこうえん)。東急東横線の大倉山駅から急な坂を上ったところにある地区公園で、大倉山記念館のほか梅の名所としても有名な公園です。
かつて実業家の大倉邦彦がこの地に建設した「大倉精神文化研究所」がのちに横浜市に寄贈され、「大倉山記念館」として再整備された際、周辺の梅林を含め地区公園として生まれたのが、大倉山公園です。
大倉山精神文化研究所は、昭和初期に建てられたプレ・ヘレニック洋式の和洋折衷の建物で、この建物の建設に伴って東急電鉄が駅名を大倉山駅に改称したことから、駅周辺の地域が「大倉山」と呼ばれるようになったそうです。商店街の名称にもなった大倉山という名前は、2014年地名も太尾から大倉山に変更されるほど、地域の人々に親しまれ愛されているようです。(参考:横浜市ホームページ、横浜日吉新聞より)
梅林には、40種類以上の梅の木が約220本あり、花の時期には次々と花を咲かせて地域の人々を楽しませてくれるそうです。また2月には観梅会のイベントがあり、毎年大勢の人が訪れるとのこと。ここ数年はコロナ禍で開催できなかったこともあってか、今年3年ぶりに開催された観梅会には、土日の2日間でなんと9万人もの人が訪れて大盛況だったそうです。
こちらの公園でボランティア活動をしているのは、大倉山公園愛護会の皆さんです。お伺いしたのは、夏に向けた花の植え替えの日。会長代行の阿部修さん、事務局長の高橋勲夫さん、広報担当の望月妙子さんをはじめ皆さんにお話をお聞きしました。
メンバーは、子どもの頃から大倉山育ちという大倉山商店街の方々が多いそうですが、移り住んで来たご近所さん、隣駅の地域から自転車で参加する方、時には電車で来られる方など、様々な方がいらっしゃるそうです。お花や緑が好き、大倉山公園が好きという皆さんの元気で明るい雰囲気が伝わってきます。
公園内の夏の花植え、およそ400株
お伺いした日は年2回の花の植え替えをするという6月の活動日。5月の活動で冬の花を抜く作業をしたあと、土をしっかり耕しておいたそうで、花壇の土はふかふかです。
大倉山公園愛護会では10か所の花壇と7つのプランターの管理をされていて、この日はマリーゴールドやジニア、千日紅、インパチェンスなど、たくさんの花苗が用意されていました。その数およそ400株。
大倉山記念館前の花壇から始まり、プランター、広場の花壇、坂の花壇へと移動しながら、皆さん手際よく花苗を植えていきます。
「深めに植えてくださいね〜」「根っこはそのままで、ほぐさなくていいですよ〜」「空のポットはこっちに投げてくださ〜い」など、声を掛け合いながら、明るい雰囲気で作業はどんどん進んでいきました。
記念館や公園事務所と協力しながら
どんどん作業を進める皆さんが見ていたのは、花壇のデザイン図です。それぞれの花壇に、どんな花をどんなデザインで植えるのか?花壇の数だけ作成されています。
花の種類、株数などが、色分けされわかりやすく書かれているこのデザイン図は、北部公園事務所の職員さんが作成されているとのこと。当日はその数の花苗を用意し、愛護会の皆さんと一緒に植え付け作業をするそうです。
皆さんは、デザイン図を参考にまずは花苗を配置し、実際のバランスを見て相談しながら、少しアレンジも加えて、丁寧に植え付け作業をされていました。
大倉山公園愛護会は、公園花壇に加えて大倉山記念館の花壇も活動場所としています。そのため、大倉山記念館ともしっかり協力体制を構築しながら毎月の活動をされているとのこと。
記念館前の花壇にこの日植えたマリーゴールドの苗の準備や、花のネームプレート作成は記念館で担当されているほか、毎月の愛護会活動のお知らせ看板の作成や、道具類を置いておく倉庫の貸し出しも行っているそうです。
毎月の愛護会活動のお知らせ看板は、記念館スタッフの渡辺友貴さんのこだわりも光ります。活動内容や季節に合わせて色やイラストを選んでデザイン。少しでも楽しい雰囲気が伝わって、活動に来てもらえるきっかけになったらと考えて作っていらっしゃることを教えてくださいました。
公園内に8か所設置しているそうで、愛護会活動に初めて参加する人の大半は、公園内の看板をみて参加したという方なのだとか。また毎月のお知らせ看板は、初めての人だけでなく、お久しぶりの方々や公園を利用する方々へのお知らせとしても効果あり。いつも次の日程が掲載されているから、都合が良い日や体調の良い日に参加してみようという方や、作業に参加はできないけれど花を楽しみにしているという方にも、愛護会活動を身近に感じてもらえるアイテムになっているようです。
出入り自由、だれでも歓迎
このように、大倉山公園愛護会の活動は、公園を訪れる人に広く参加してもらえるよう工夫されています。たとえば、活動日は基本的に毎月25日の朝9:00〜に設定されていて覚えやすかったり、公園内の看板のほかTwitterでも活動のお知らせをしています。
いつも30-40人ほどの参加者がいるそうですが、保険のために名前を書くほか、毎回の出席はとらないそうです。「ここは出入り自由です、出られる人だけ出てください」と笑顔で話してくださった高橋さん。組織をつくることをせずに、緩やかなつながりを大切にされているようです。
もともと商店街や地元の人と港北区役所の人で、梅林に芝桜を植える活動を行ったことが大倉山での公園愛護活動がスタートしたきっかけだったことを教えてくださいました。その後も細々と雑草取りを続けていたところ、大倉山公園を管理する北部公園事務所から声がかかり、公園愛護会になったとのこと。
地区公園で活動する公園愛護会は少ないようですが、公園事務所や記念館と協力をしながら、地域のいろいろな人を仲間に加えて、年2回の花壇の花植えのほか花殻つみや雑草抜きなどの活動を毎月続けていらっしゃいます。
活動のあとは、おつかれさまの飲みものとバナナが用意されていました。バナナは愛護会が始まった時からの恒例とのこと!健康的で活動後の栄養補給もバッチリです。
愛護会活動は地域貢献でもあり、地域のつながりを育む活動
大倉山公園は、地元の人にとって自慢の場所だそうで、その象徴が記念館とのこと。「ここで生まれ育ったから地元はキレイにしておかないとね」と話してくださった方は、数十年前の小学校の卒業写真を記念館で撮ったというエピソードも聞かせてくださいました。記念館はドラマや雑誌の撮影にもよく使われるそうで、見つけては話題にするのも地元っ子の楽しみのようです。
大倉山公園のほか、港北区役所の屋上や、地域のガーデンで緑や花の活動をしているという方も、何人かいらっしゃいました。コロナ禍で行き場がなかった頃に、公園の看板を見て愛護会活動に参加したのがきっかけという女性は、土で癒され、ここでの活動をきっかけに地域での緑の活動が広がっていることを教えてくださいました。
もともとネットの住民という望月さんは、大倉山公園のTwitterを立ち上げて愛護会の広報活動を担当。大倉山記念館をはじめ、地域の様々なアカウントと一緒に地元を盛り上げていらっしゃいます。地域に貢献しながら、地域のつながりを育む活動がしっかりと行われていました。
【基本情報】
団体名 | 大倉山公園愛護会 |
公園名 | 大倉山公園 (横浜市港北区) |
面積 | 69,404 m2 |
基本的な活動日 | 毎月25日 |
いつもの活動参加人数 | 20-30名くらい |
会の会員数 | 20名 |
活動内容 | 除草、落ち葉かき、花壇の管理、植物の水やり、愛護会活動のPR、新メンバーの募集や勧誘 |
設立時期 | 2015年 |
参加者イメージ | アクティブシニア、花や緑の好きな近隣住民 |
活動に参加したい場合は | 公園の看板またはTwitterで活動日をお知らせしていますので、活動日に公園に来てください |