2022/7/8

大学生や市民ボランティアも参加、花のリサイクル花壇づくり

厚木市(神奈川県)

みんなの公園愛護会では、市民ボランティアとともに地域の公園をより良くしようと頑張る行政の取り組みにも注目しています。


毎年「緑のまつり」を開催している厚木市で、コロナ感染症の影響で中止となったことによる代替事業として、大学生や市民ボランティアと一緒に準備した立体花壇装飾や、立体花壇展示終了後の花を植栽して作った特設花壇について、お話を聞きました。

ボランティアとつくる特設花壇について、厚木市役所 公園緑地課の稲本博子さん(上の写真の一番右)、花未来事業担当の伊藤菜々子さん(同一番左)、そしてボランティアとして関わった皆さん にお話をお聞きしました。

多くの市民が楽しめて、花も最大限活用する花壇づくり

「厚木市緑のまつり」が、コロナ感染症の影響で3年連続の中止。地元の農家さんが、このまつりのために育てているたくさんの花を生かしたい、そこがスタートだったようです。

市と市民で構成される実行委員会が主体となって、これまで45回に渡り開催されてきたという緑のまつり。中止が続いた最初の2年は、ほとんどの花を敷地の広いぼうさいの丘公園に植栽しましたが、より多くの人の目に留まるよう、本厚木駅周辺の5公園に、立体的に花を装飾する「立体花壇」を設置する企画が生まれたそうです。

立体花壇は、水道からホースをつなぐだけで全ての花苗に水が行き渡る仕組みになっていて、水やりを欠かさなければ長期間展示可能。

ただし、土からの栄養をとれないため、いずれは枯れてしまいます。最後はやっぱり花壇に植栽して、引き続き皆様に楽しんでもらいたい。それが、特設花壇を作る計画となりました。

(立体花壇の展示や水やりの様子、スターマインという花火のような形や球体がある:厚木市より提供)

花壇づくりは大学生や市民ボランティアと協力して

立体花壇装飾に使用する花はおよそ2,000鉢。厚木市で行われている、公園で花を植え育てるボランティア「花未来事業」の担い手や、市内大学等に協力を呼びかけ、20人程のボランティアが集まったそうです。

「緑のまつりは、地域の方々で構成される実行委員会が主体となって、市民の手でつくられてきました。今回まつりは中止になってしまいましたが、代替事業であるこの花壇づくりに、市民の皆様と一緒に携わることができたことは、大変嬉しく思っています。」と話してくださった稲本さん。

立体花壇準備会場では、花を専用カセットに入れていく作業が行われました。当日の様子は、厚木市のYouTubeチャンネルでも紹介されています。

(厚木市のYouTubeチャンネル内の厚木市の広報番組【あつぎ元気Wave】より)

立体花壇として1ヶ月間、市民の目を楽しませた花たちは、次に、立体花壇から中央公園の特設花壇の花となるのですが、その花壇は、立体花壇のベースとなっていた木枠に、土が流れ出ないよう底にじゅうたんと人工芝(こちらも立体花壇で使われたものの再利用)を敷き、土を入れて花を植栽した再利用プランターでした。

作業の日はあいにくの大雨だったそうですが、皆さん花壇のデザインを考え相談しあいながら、作業を進めて、素敵な再利用花壇になりました。

(大雨の中、再利用花壇を作る皆さん。デザインもそれぞれのこだわりとアイデアがたくさん!:厚木市より提供)

つくる作業を一緒にするから、楽しみも倍増

「春と秋の年2回、ボランティアの方に、公園の花壇に植える花苗を配布し、花を育てていただく『花未来事業』を担当させていただいて2年目となりますが、ボランティア登録を新規で受け付ける時と、年2回の植栽報告書を、窓口でお預かりする時くらいしか、顔を合わせる機会がありませんでした。今回は、日頃お世話になっている花未来ボランティアの方と、作業しながらお話ができたり、大学生の皆さんと一緒に、花壇づくりをする機会を得られたことで、当事者の立場に立つことができ、貴重な体験となりました。」と話してくださった伊藤さん。一緒に手を動かす時間の大切さを感じます。

今回の花壇づくりに参加された市民ボランティアの皆さんにもお話をお聞きしました。

子どもたちの通学路になっている遊歩道や公園で花を育てるボランティアを長年されている、花好きの朝永シヅカさんは、立体花壇づくりに参加したあと、市内の立体花壇を見て回ったそうです。立体花壇づくりからの特設花壇づくりについて、こんな感想をくださいました。

立体花壇なんて作ったのは初めてですよね。見て回って、ステキだなと思いました。みんなが見にきて、感激しましたし、誇らしい気持ちもあります。そして、とても勉強になりましたよ。

樹木が好きで、地域の公園の木や花・街路樹のお世話をしている樋口義明さんは、再利用花壇への興味と立体花壇を解体してどうなるのかな?という好奇心から参加されたそうで、こんなコメントをくださいました。

大きな花壇で、花の種類も豊富なので、やりがいがありましたね。解体に参加しましたが、立体に植える作業もやってみたかったです。花壇は面白いです。花を拝んで行かれる人を見たり、ありがとうの一言をもらうと、やっててよかったなと思います。どうやったら楽しんでもらえるか考えながら、花壇のデザインも今後やってみたいですね。

花未来事業での普段の活動とはまた一味違った醍醐味があったようです。

また、作業に参加した大学生ボランティアの皆さんにもお話をお聞きしました。この日、お話をしてくださったのは、東京農業大学の梶田さん、守安さん、輿水さん、清水さん、福田さん、桑原さんです。果物を育てて収穫する果樹ゼミの3年生で、もちろん果物好き!という皆さんです。

(今はちょうどブルーベリーの収穫時期で、バケツいっぱい食べてますという夢のようなお話も!)

緑のまつりの実行委員長でもある、藤澤弘幸教授の声かけで、立体花壇の解体&再利用花壇作りに参加された皆さん。大雨の中の作業は本当に大変だったという話で盛り上がりながら、植えるのは楽しかったし、その後1ヶ月ほど経った今もなお、中央公園の花壇で元気に咲いている花に、生命力を感じると口々に話してくださいました。

3人組で1つの花壇を作ったのですが、3人でアイデアを出し合って、褒めあって、こうやって形になったのは、嬉しかったです。テーマは、外国の庭園ですね。もう1つのグループは、虹色グラデーションです。

初めてだけど、まちのために、まちの予算で、やりたいことが表現できたのは、面白かったです。花壇を作って喜んでくれる人がいるなら、やりがいがあったなと思います。

地域の人もボランティアに来ていて、収穫祭(農大の学園祭、地域の人にも人気)楽しみにしてるね!などの声をかけてもらって、地域との繋がりを感じました。

ボランティアへの参加が初めての人も、西日本豪雨の土砂かきボランティアや、ベトナムの子どもたちに上履きなどを寄付するという海外支援のボランティアに参加経験のある人も、皆さん地域での花植えボランティア体験は楽しい入口だったようで、機会があったらまた参加したいとおっしゃっていました。

(まだ元気に咲き続ける外国の庭園花壇。虹色グラデーション花壇も元気でした!)

これをきっかけに、初めてボランティアに参加したという人がいたり、より深く花や緑と関わることになった人がいたりといった、公園ボランティアのきっかけづくりとしても機能している様子が伝わってきました。

また、花の管理のために、毎日欠かさず続けた水やりにかかる時間は2時間程。思ったより大変だったというのが正直なところではあったものの、「水やりご苦労様。」「公園が花できれいになってうれしい。」「こんなの見たことない、ありがとう。」などと声をかけてくださる方、「今日もお花きれいだね」と言いながら毎日遊びに来てくださる保育園児と先生方、立ち止まって写真を撮っていかれる方など、たくさんの方と出会う水やりの時間は、市民の声や反応を直接受け取ることができる貴重な機会にもなったそうです。

立体花壇が終わり、特設花壇にした時は、「あの花(立体花壇)、ここにきたんだ!無駄にならなくていいね。」「お花っていいよね、キレイだね」などたくさんの方から今回の取組みを評価する声を頂くことができたとのことで、手応えもあったことを話してくださいました。

花や資材を再利用するエコな取り組みもそうですが、コロナで例年のイベントが開催できなくても、ただ縮小するだけでなく、企画全体として、市民とともに多世代で楽しみをつくっていこうという姿勢とアイデアが、ステキな取り組みだなと思いました。

【基本情報】

取り組みの名称立体花壇装飾及び特設花壇~緑のまつり代替事業~
実施自治体厚木市 都市整備部 公園緑地課
事業の目的新型コロナウイルス感染症の影響により、本年度も厚木市緑のまつりが中止となったことから、市民の皆様や厚木市に訪れる皆様に、緑がもたらす多くの潤いと安らぎを感じていただき、晴れやかな明るい気持ちになっていただきたいという想いを込めて、本厚木駅周辺の5公園に立体花壇装飾を期間限定で設置した後、展示に使用した花達を、ボランティアの方々と共に寄せ植えした特設花壇を設置しました。
取り組みの詳細厚木市ホームページをご覧ください
取材・執筆
取材・執筆
椛田 里佳 代表理事

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフト。夫を難病で亡くし、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフト。夫を難病で亡くし、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

みんなの公園愛護活動レポートに戻る