2026/9/10

公園は街のリビング。住民が主役になる舞台づくり

北仲通北第二公園(横浜市)

各地の公園ボランティア活動を紹介する「となりの公園愛護会」。今回は、絶景が広がる都市の小さな公園で、10年以上続く地道な清掃活動と、大人気の盆踊りイベントで地域を温かくつなぐこちらのみなさんです。

北仲キャナルパーク

横浜市中区にある北仲通北第二公園(きたなかどおりきただい2こうえん)。みなとみらい線「馬車道駅」から徒歩5分ほど、高層タワーマンションや商業施設、ホテルが立ち並ぶ横浜ベイエリアにある小さな街区公園です。

目の前の運河越しには横浜ランドマークタワーをはじめとする絶景が広がり、都市型ロープウェイ「YOKOHAMA AIR CABIN」も行き交います。ベンチでのんびり過ごす近所の人や子どもたちから、観光客までが訪れる人気の夜景スポットでもあります。

ここで活動するのは、北仲通北公園愛護会のみなさんです。運河沿いの遊歩道「水際線プロムナード」でつながる第一・第二・第三公園を合わせて「北仲キャナルパーク」と呼び、愛護活動を続けています。会長の一宮均さんをはじめ、メンバーのみなさんにお話をお聞きしました。

実は、北仲キャナルパークは、みんなの公園愛護会を設立する前に愛護会活動についてヒアリングさせていただいたご縁のある公園で、一宮さんともおよそ6年半ぶりの嬉しい再会となりました。(その間周辺の景色もすっかり変わりました!)

(会長の一宮さん。お久しぶりです!)

始まりは娘とのゴミ拾い。10年続く日曜朝の習慣

北仲通北公園愛護会のすべての土台となっているのが、毎週日曜朝に行われている公園と周辺の清掃活動です。きっかけは10年以上前、一宮さんが当時小学2年生だった娘さんと始めた日曜朝のゴミ拾いでした。それが近所の有志に広がり、今では一宮さんファミリーや地域のみなさんで毎週欠かさず継続されています。

公園内だけでなく、周辺の道路まで含めてぐるりと1時間ほど。「散歩をしながら街をきれいにするのは、季節ごとの空が見えて本当に気持ちが良いですよ」と話してくださった一宮さんご夫妻。

(北仲通北地区マップ:第一公園・第二公園・第三公園)

月1回は、すぐそばの横浜市役所に隣接する水辺のウッドデッキの清掃をする「大岡川夢ロードデッキサポーターズ」との合同活動も。ウッドデッキと公園の清掃を行う活動は、こちらももう10年以上になるそうです。

ロケーションが良く多くの人が昼夜利用するため、ゴミ問題はありますが、個人的に清掃活動をするメンバーや、愛護会に所属するしないに関わらずゴミ拾いをするご近所さんもいるそうで、人々の温かい手で公園の日常が守られています。

公園でつながり、住民が輝くステージづくり

もともと住んでいる住民に加えて、新しくタワーマンションもでき(今も続々と建設中!)、数千人規模で新しい住民が増え続けている北仲エリア。

「地域の庭である公園を、住民にとってもっと魅力的な空間にしたい」「新旧の住民がつながる場所にしたい」との想いから、青空ピクニック、マルシェへの参加、クリスマスイルミネーション、キャンドルイベント、防災訓練、そして盆踊りなど、近隣のマンションの自治会や地元の協力団体、商業施設などとともに、地域の人たちが主役になって公園を楽しむためのさまざまな企画を実践してきました。

「ここは小さいながらも地域住民のステージではないかと思います。私たちが主役になれる場がある。私たちはそのステージに照明を取り付け、舞台美術を仕掛け、主役の登場をいつでもOKとスタンバイしているという訳です」と演劇プロデュースをする一宮さんならではの視点で公園での活動を語ってくださいました。協力者を集めて、広告を募集して、フライヤーを作って、イベントを実行するという流れも、演劇と同じだそう。

(これまでに行われたイベントの様子:北仲通北公園愛護会のサイトFacebookより)

「公共のスペースだけど、ここを自分たちのリビングにしちゃおうという発想ですよね。自分の住まう街を自分たちで良くするために、好きだからやってます」と話してくださったのは、立ち上げメンバーのお一人でもある丹羽信司さんです。

水辺を楽しむ活動など複数の地域コミュニティに関わるメンバーが多く、ゆるやかな連携が生まれているのもこの地域の強みです。

ランドマークタワーを櫓に!関内北仲キャナルパーク盆踊り

さてさて、この日は北仲キャナルパークの名物にもなっている「関内北仲キャナルパーク盆踊り」です。ランドマークタワーを櫓(やぐら)に見立て、横浜の美しい夜景をバックに踊るこのイベントは、愛護会の活動がスタートした2016年から行われ、今年で11回目を迎えます。

1年目は50人くらいだったという参加者も、今では800人を超える人気イベントに成長。北仲通北公園愛護会のほか、地域の商店街協同組合、自治会・町内会、まちづくり振興会、シニアクラブ、NPO、企業など多くの協力で行われています。

今注目の「新しいスタイルの盆踊り」として、伝統的な音頭からポップス、海外の楽曲まで多角的に楽しみ、子どもから大人、外国ルーツの人や観光客まで誰もが輪になって盛り上がります。

「この盆踊りは、斬新なの。それがいいところ」と話してくださったメンバーも。

(躍動的な写真が印象的な今年のポスター「踊れ!BON Dance 2026」)

得意やアイデアを持ち寄る、本格派のDIY空間

このキャナルパーク盆踊りは、北仲通北公園愛護会の活動の中でも最も多くの人が関わるイベントです。有志メンバーのみなさんで数ヶ月前から準備を重ね、企画をしてきました。

それぞれが得意なことや出来ることを持ち寄って、さまざまな工夫を重ね、本格的でありながらも手づくりの温かさがある素敵な場がつくられています。

たとえば、デザイナーの新村さんご夫妻は、ポスターや看板のデザインを当初から担当されています。木工が得意な大浦さんは、LEDライトが埋め込まれた「BON DANCE」看板をDIYで制作。学校給食や飲食店の廃油をキャンドルに再生させる今城さんは、キャンドルづくりワークショップを担当されています。

そのほか、近隣の吉田町名店街会からテーブルとイスを借り、テントには地元の飲食店が出店、子どもたちが絵を描いた提灯が会場を飾ります。前の週には日本舞踊のお師匠さんの指導で盆踊りの練習会も行われました。

(北仲オリジナルラベルのビールが楽しめる”クラフトビールまつり”の看板も新村さんのお手製)
(LEDがキラキラ光る大浦さんのDIY作品「BON DANCE」看板。毎年進化しているそう!)
(今城さんのエコキャンドルワークショップは、小さい子も安心して楽しめる。横浜市の学校給食の廃油がカラフルできれいなキャンドルに)
(子どもたちの絵がどれもかわいいLED提灯。前月には提灯制作ワークショップも行われた)

子ども縁日から屋台まで。環境にも配慮した賑わい

会場には、子どもから大人までさまざまな人たちが楽しめるコンテンツが盛りだくさん。キッズダンスやよさこい、サンバのダンスステージや、三宅太鼓、花火にスイカわり。子ども縁日コーナーには、スーパーボールすくいやマージャンビンゴ、廃油キャンドルワークショップに竹灯籠のあかり。周辺の飲食店によるお肉料理やイタリア料理のテントや、3つのビール醸造所がつくるオリジナルビールが楽しめるクラフトビールコーナーに、焼きそば、かき氷も。

(毎年子どもたちに大人気のスーパーボールすくいコーナー)
(こちらは本部テント。熊本と千葉のお酒を飲んで応援する企画コーナーも)

さらに特筆すべきは、普段から街の清掃活動を行っている愛護会ならではの「環境への配慮」です。イベントゴミを減らすため、プラスチック使用の削減や分別を徹底する「エコステーション」を設置。わかりやすい表示に加えて、今年からはスタッフが常駐して、ゴミを受け取り容器を重ねるなど容量の圧縮も試み、賑やかでクリーンなイベント運営を徹底していることを教えてくださいました。

(ゴミが出ない工夫をしながら、出たゴミはしっかり分別する「エコステーション」)

なお、隣接地の工事に伴い公園が一時閉鎖・リニューアルされるため、現在の形での開催は今年が最後となるそうです。

10年の歩みが生んだ、日常の定着と仲間の広がり

愛護会結成とともに、公園を活用した地域の交流イベントをスタートして10年。都市の再開発の中でポツンと生まれた3つの公園を、地域住民の活躍の舞台として活用するみなさんの活動は、地域にしっかり定着してきたといいます。

2024年には横浜市公園愛護会表彰、2025年には「みどりの愛護」功労者国土交通大臣表彰を受けました。

活動に関わる人も、この地に長く暮らす人から、新しいマンションに越してきた人、他のエリアや市外から参加するメンバーなど、関内エリアのつながりや、パパ友のつながりなど、様々なつながりで仲間が広がっています。この日も「盆踊りが好き!」という女性が数駅先の地区からボランティアスタッフとして新しく参加していました。

バッチリ準備をして15:00から会場オープン!しかし、なんと夕方からの急な大雨により、18:00以降のプログラムが中止となってしまいました。

残念なので、昨年の盆踊りのお写真をお借りして、その雰囲気をお伝えできればと思います。

(2025年 第10回北仲キャナルパーク盆踊りの様子:写真提供 北仲通北公園愛護会)

北仲通北公園愛護会のメンバーが主体となった北仲キャナルパーク盆踊り実行委員会は、昨年からご近所のショッピングモール「ワールドポーターズ」の屋上テラスで行われる「キャナルパークBon盆Dance@RTW」も開催するなど、ますます活躍の場を広げています。

今や名物となった美しい夜景も楽しめる盆踊りイベント。大勢が集う華やかなイベントのその根底には、毎週日曜の朝にコツコツ積み重ねられてきたゴミ拾いという「街への愛」と「地域の信頼」がありました。地道な日常の手入れを続ける人たちだからこそ、街の人々が安心して集い、思い切り楽しめる「最高の舞台」をつくることができるのですね。


【基本情報】

団体名北仲通北公園愛護会
公園名北仲通北第一・第二・第三公園(横浜市中区)
面積北仲通北第一公園:534m2、北仲通北第二公園:1,262m2、北仲通北第三公園:518m2
基本的な活動日毎週日曜朝、そのほかイベントなど
いつもの活動参加人数10 名ほど (盆踊りのスタッフは40-50名)
活動内容ゴミ拾い, 除草, 落ち葉かき, 愛護会活動のPR, 利用者へのマナー喚起, 地域のイベント, 子ども向けイベント, 他団体と連携したイベント
設立時期2016年4月
主な参加者ご近所の有志のみなさん、マンション自治会や地元の協力団体、水辺や公園を大切にするボランティアのみなさん
活動に興味のある方は清掃活動やイベントにお越しください。予定はホームページFacebookでお知らせしています!

取材・執筆
取材・執筆
椛田 里佳 代表理事

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフトしたのち、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフトしたのち、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

取材・執筆
みんなの公園愛護会の書籍紹介 学芸出版社

みんなの公園愛護会初の書籍。「推しの公園を育てる!公園ボランティアで楽しむ地域の庭づくり」が学芸出版社から刊行されました。全国各地の推しの公園活動やボランティア運営のヒントが紹介されています。ぜひ手にとってお読みください。https://park-friends.org/books/book1/

みんなの公園愛護会初の書籍。「推しの公園を育てる!公園ボランティアで楽しむ地域の庭づくり」が学芸出版社から刊行されました。全国各地の推しの公園活動やボランティア運営のヒントが紹介されています。ぜひ手にとってお読みください。https://park-friends.org/books/book1/

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