大阪公立大学の学生が、公園愛護会の皆さんの活動を紹介する「大阪となりの公園愛護会」。公園の利活用やランドスケープ設計を学び研究する学生の視点で、公園ボランティア活動を紹介します。
今回は、堺市の土居川公園(どいがわこうえん)熊野町エリアで行われたイベント「クビアカツヤカミキリ捕獲大作戦!!in土居川公園(熊野町)~ みんなで守ろう!!地域の桜」を取材しました。
桜を守る土居川公園の取り組み
土居川公園は、かつて堺の町を囲んでいた濠を起源とする土居川の跡地を整備してつくられた公園です。広さ4ヘクタール、南北およそ3kmにわたる公園は、現在では緑豊かな散策路や桜並木が続き、地域の憩いの場として親しまれています。
近年、この桜並木に被害をもたらしているのが特定外来生物「クビアカツヤカミキリ」です。幼虫がサクラやウメなどの樹木内部を食い荒らし、放置すると木が枯れてしまう恐れがあります。堺市内でも被害が広がっており、地域の桜を守るために土居川公園熊野町エリアの公園愛護会と堺市公園協会の皆さんが立ち上がりました。
子どもたちと一緒に、公園をもっと身近に
今回イベントを主催した熊野校区自治連合協議会では、公園をきれいに保つだけでなく、「公園を通じて地域の人がつながる場をつくりたい」という思いから、これまで子ども向けの自然観察会や昆虫観察会を継続して開催してきました。草花さがしやセミ観察など季節ごとにイベントを企画し、毎回楽しみに参加してくれる子どももいるそうです。4回目となった今回は、特定外来生物「クビアカツヤカミキリ捕獲大作戦!!」です。
本来は公園内を歩きながらクビアカツヤカミキリを探して捕獲する予定でしたが、この日はあいにくの雨模様。そのため捕獲は中止となり、地域会館での授業のみの開催となりました。それでも会場には多くの親子や愛護会の方々が集まり、クビアカツヤカミキリをはじめとする外来生物について学ぶ時間となりました。

イベントの冒頭では、土居川公園(熊野町)愛護会の会長 向井 龍哉さんからのご挨拶と、堺市公園協会の鈴木さんから公園愛護会の活動について紹介がありました。
堺市の各公園愛護会は堺市公園協会と連携して、公園の清掃や除草、落ち葉集めをはじめ、地域の皆さんが安心して利用できる公園を維持しています。

昆虫のプロと、楽しみながら学ぶ
さて、ここからはいよいよ授業の始まりです。講師を務めたのは、堺市公園協会の大門さん。以前は博物館で学芸員を務め、長年昆虫や自然環境について普及活動を行ってきた、まさに「昆虫のプロ」。このイベントでも、第1回から講師を担当されています。

「クビアカツヤカミキリって知っている?」
そんな問いかけから授業がスタート。元気よく手を挙げる子どもがいる一方で、初めて名前を聞くという子どもも多く、一つひとつ丁寧に説明が進められていきました。
クビアカツヤカミキリがどんな昆虫なのか、なぜ桜を枯らしてしまうのか、そして外来種とは何か。子どもにも分かりやすい言葉を交えながら、身近な例を交えながら解説が続きます。
「人が車で移動するように、クビアカツヤカミキリも車などに紛れて分布を広げることがあるんですよ。」
「公園で木にネットが巻かれているのを見たことある?」
そんな問いかけに、子どもたちは「見たことある!」「知らんかった!」と次々に反応。保護者も、外来生物法に基づく規制や罰則についての説明に驚きながら耳を傾けていました。

授業では実際のクビアカツヤカミキリの標本も回覧されました。子どもたちは手に取ってじっくり観察しながら、その特徴を確かめます。熱心にメモを取ったり、クビアカツヤカミキリの絵を描いたりする姿も見られ、楽しみながら学んでいる様子が印象的でした。


大人も子どもも夢中になった振り返りクイズ
授業の後は、学んだ内容を振り返る○×クイズ。
教室を○と×のエリアに分け、正解だと思う方へ実際に移動する参加型の形式で行われました。問題が出されるたびに、子どもたちは「こっちや!」「やっぱりあっちちゃう?」と右へ左へ元気いっぱいに駆け回ります。

クビアカツヤカミキリだけでなく、外来種全般に関する問題も出題されました。親子で相談したり、大人同士で答えを考えたりと、教室全体が大いに盛り上がります。
問題の中には、 「どうしてそうなるのだろう」を考えながら答えるものも多く、単に知識を覚えるだけではなく、その理由まで理解できる工夫が随所に見られました。子どもたちはもちろん、保護者や愛護会の皆さんにとっても、新たな発見のある学びの時間となっていたようです。


子どもたちにとって身近な公園で、生き物や自然環境について考える
授業の最後、大門さんは参加者にこんなメッセージを送りました。
「外来種だからといって、ただ悪者と決めつけるのではなく、自分で考えてみてほしい。」
自然の問題には一つの正解があるわけではありません。大切なのは、身近な自然に目を向け、自分自身で考えること。
公園という身近な場所だからこそ、生きものや自然環境について考えるきっかけになれば、そんな思いが伝わる締めくくりでした。

参加した親子にお話を伺うと、多くの方が小学校で配られたチラシをきっかけに参加したとのことでした。
小学1年生の男の子は、4月に小学校へ入学し、今回初めて学校で配られたチラシを見て「行ってみたい!」と参加したそうです。「クビアカツヤカミキリは知らなかった。今日初めて見た!」と話してくれました。
以前から昆虫観察会などのイベントに参加している女の子は、「外来種がこんなにたくさんいることを初めて知った」と話してくれました。この日はあいにくの雨でしたが、天気の良い日には参加者が多く、何回も参加するお子さんも多いそうです。
保護者の方からも、「普段利用している公園で、このような活動が行われていることを初めて知った」「子どもが楽しみながら自然について学べる良い機会だった」といった声が聞かれました。
子どもたちにとって身近な自然と触れ合う場である公園で開催されるこのようなイベントは、地域の自然や生きものについて親子で考え、公園を支える人たちの活動を知る貴重な機会になっていることが伝わってきました。
「人と自然をつなぐファシリテーターのような存在でありたい」
イベントの終了後、授業を担当された大門さんにお話を伺いました。
大門さんは学生時代から自然環境教育に携わり、博物館の学芸員を経て、現在は堺市公園協会で活動されています。こうした講座も学生時代から続けており、クビアカツヤカミキリに関する普及啓発にも長年取り組んでこられました。

「公園は、人と自然環境、人の暮らしをつなぐ場所なんです。私は、その橋渡しをするファシリテーターのような存在でありたいと思っています。」
そう話す大門さん。博物館でも公園でも、立場は変わっても目指していることは同じだといいます。今回の授業でも標本を手に取って観察したり、体を動かしながら参加する○×クイズを取り入れたりと、子どもたちが楽しみながら学べる工夫が随所に盛り込まれていました。
その理由について、大門さんはこう語ります。
「知識を教えるだけではなく、自分で考える力を身につけてほしいんです。私が話していることも、『本当にそうなのかな』と考えてみてほしい。自然には一つの正解があるわけではありません。だからこそ、自分で考え、判断することが大切だと思っています。」
少し難しい問題も交えた○×クイズにも、そんな思いが込められていました。
最後に、大門さんはこう話してくださいました。
「私の知識が少しでも皆さんの役に立てばうれしいです。そして、身近な公園やそこにいる生きものや自然にもっと目を向けてもらえたらと思っています。今後も5回目、6回目とやる機会があれば。」
地域の公園は遊ぶ場所であるだけでなく、人と自然が出会い、学び、つながる場所。大門さんの言葉からは、その橋渡し役として地域に関わり続けたいという思いが伝わってきました。
日々支え続ける人たちの思い
最後に、土居川公園を日頃から支える愛護会の会長の向井龍哉さんをはじめ、メンバーの皆さんにお話を伺いました。
向井さんが自治会長に就任したのは10年ほど前。その頃は、公園の見守りや清掃活動が十分に行われておらず、かつて行われていた清掃も途絶えていたといいます。「このままではいけない」と危機感から地域の人たちに声を掛け、一人、また一人と仲間を集めながら、現在の活動体制を築いてきました。
堺市公園協会の鈴木さんも、「地域を何とかしようと立ち上がり、みんなで一致団結して活動しているところが、この愛護会の一番素敵なところです」と話します。

現在、熊野校区では9つの公園で愛護会が活動しており、そのうち土居川公園を含む3公園を向井会長の団体が担当しています。主な活動は、公園内の見守り、ごみ拾いや落ち葉の清掃、行政による年3回の大規模除草の合間に行う簡易な除草など。行政と役割分担をしながら、公園の日常的な管理を地域の皆さんが支えています。
土居川公園では、毎月第1・第3日曜日の朝に定期清掃を実施しています。秋から冬にかけては落ち葉の量が特に多く、多い日には45リットルのごみ袋が20袋近くになることもあるそうです。
夏になると、今度は草取りが大仕事になります。メンバーの皆さんは、「草を刈るというより、めくる感じなんです」と話します。芝生や縁石の際には土と一緒に固まった雑草がびっしりと生え、それを先の尖った道具で地面を削るように少しずつめくり上げ、砂ごと取り除いていきます。機械では対応しきれない細かな場所だからこそ、人の手による地道な作業が欠かせません。
日頃の活動で使う道具は、ほうきや竹ぼうき、ちり取りといった身近なものが中心です。最近では公園協会の支援を活用し、落ち葉を吹き集めるブロアも導入しました。こうした支援も受けながら、地域の皆さんが工夫しながら日々の活動を続けています。
活動のやりがいについて伺うと、向井会長は「掃除が終わって、公園がきれいになったと感じる瞬間が一番うれしいですね」と笑顔で話してくださいました。きれいになった園内を眺めながら、「今日は日本庭園みたいやな」「京都みたいやね」と仲間同士で自画自賛し、笑い合う時間も活動の楽しみの一つです。利用者から「きれいになったね」と声を掛けられることが、次の活動への励みになっているそうです。
地域の景観や思い出を、次代へつなぐ
土居川公園の桜並木も、地域の皆さんが「桜の名所にしたい」という思いから苗木を植え、水やりを続けながら育ててきたものです。今では地域を代表する景観となりましたが、その桜がクビアカツヤカミキリの被害にさらされています。地域の皆さんにとって、桜を守ることは、公園の景観や思い出を守ることにもつながっています。
一方で、活動を続ける上での課題もあります。現在の登録メンバーは約30人ですが、実際に活動する方の多くは70代以上で、若い世代の参加はまだ多くありません。自治会加入率の低下や地域とのつながりの希薄化もあり、後継者の確保は大きな課題となっています。メンバーのおひとりは、「僕は74歳でも若手やで!」と笑ってお話してくださいました。
それでも皆さんは、「地域の公園は地域のみんなで守る」という思いを大切に、日々活動を続けておられます。熊野小学校や殿馬場中学校の入学式前には一斉清掃を行い、新入生をきれいな公園で迎えられるよう準備するなど、公園を地域の財産として守り続けています。
向井会長は今後の活動についても、さまざまな構想を描いています。今回のような外来生物についての学びの機会をさらに広げるため、教育委員会に働きかけ、大門さんによる勉強会を開催してもらいたいと考えているそうです。また、「堺市には大仙公園という素晴らしいステージがある」と、堺区17校区の愛護活動に携わる人たちが集まり、大仙公園で交流会を開催する構想も教えてくださいました。公園を守る活動をそれぞれの地域だけで終わらせず、地域を越えて学び合い、交流する機会へとつなげていきたいという思いがうかがえます。
この日開催されたイベントも、こうした日頃の愛護活動があってこそ実現したものです。地域の自然について知り、親子で学ぶ機会をつくること。そして、その舞台となる公園を地域の皆さんが日々支え続けていること。その二つがつながることで、土居川公園は憩いの場であるだけでなく、人と人、そして人と自然を結ぶ地域の財産として、これからも受け継がれていくのでしょう。
【基本情報】
| 団体名 | 熊野町自治会 |
| 公園名 | 土居川公園 (堺市 堺区) |
| 面積 | 公園面積は 約 4 ha、愛護会の担当エリアは 1,492 m2 |
| 基本的な活動日 | 毎月第1,3日曜日 夏は朝7時~ 冬は朝8時~ |
| 活動内容 | ゴミ拾い、除草、落ち葉かき、地域のイベント、子ども向けイベント、他団体と連携したイベント |
| 設立時期 | 10年ほど前 |
| 主な参加者 | 熊野小学校区にお住まいのみなさん |
| 活動に参加したい場合は? | 堺市公園協会にご連絡ください |