さまざまな公園ボランティア活動を紹介する「となりの公園愛護会」。今回は、小さな公園と小学校の菜園を拠点に地域のつながりや子どもたちの居場所を作っている、こちらの皆さんです。公園で行われた9月のガーデンワーク活動にお伺いしました。
新宿から1駅、渋谷区初台の小さな公園に集まる地域の人々
東京都渋谷区にある初台第二児童遊園地(はつだいだい2じどうゆうえんち)。新宿駅のお隣、新国立劇場のある京王新線 初台駅から歩いて約5分、「ササハタハツ」の名前で再整備が注目されている玉川上水旧水路緑道の目の前にあるとても小さな公園です。隣には小学校があり、オフィスビルや様々なお店・住宅に囲まれた公園からは、首都高や甲州街道の様子もうかがえます。
こちらでボランティア活動をされているのは「つながる菜園」の皆さんです。つながる菜園は、初台第二児童遊園地での花壇づくりと、公園の隣にある渋谷区立の小学校で子どもたちと一緒に菜園づくりを行うグループです。普段の活動の様子はホームページやInstagram、Facebookなどで情報発信をされています。
まだ残暑厳しい9月の土曜日の朝、夏休み明け久しぶりのガーデンワーク活動が行われました。ご近所の方以外にも、渋谷区内外のいろいろな場所から、様々な年代の方が参加。初めての方も、お馴染みのメンバーも、ゆるやかに集まります。ちょうど同じタイミングで町内の美化デーがあり、ゴミ拾いトングを持ってまちを歩く大人や子どもが公園の外にもたくさんいました。
つながる菜園代表の佐々木桐子さん、荒島智貴さんをはじめ、参加者の皆さんにお話をお聞きしました。
つながるガーデンワーク&青空コーヒー
つながる菜園の皆さんは、この初台第二児童遊園地に花壇をつくり、地域の人たちと一緒に季節の花を植えて育てる「つながるガーデンワーク」活動を行っています。作業後のお茶会「青空コーヒー」を含め、誰でも自由に参加できます。
テントとタープを張って日陰をつくり、蚊取り線香を焚いて、テーブルと小さなイスや道具を出したら準備完了。おしゃれなテーブルクロスが良い雰囲気です。
この日の主な作業は、夏の間に伸びた雑草の片付けと、花苗の植え付け、水やり。公園内の雑草抜きは、暑いので15分間の集中作業。抜いていい草と残す草を相談しながら、どんどん作業をしていくと、あっという間に公園全体がスッキリしてきました。
水分補給の休憩を挟んで、20株ほどの花苗を植え、水をやったら、見違えるほどイキイキした公園になりました。
作業のあとは、青空コーヒータイムです。テントの下の小さなテーブルを囲んで、みんなでお楽しみのお茶タイムが始まりました。
初めての人も含めて参加者が自己紹介をしながら、つながる菜園プロジェクトの紹介や今後の予定のお知らせ、地域のプロジェクトやイベントの告知など、冷たいお茶やコーヒーを飲みながら、楽しい情報交換の場になりました。「こんなことしたい!」「それならできるよ!」と早速その場でつながって相談が始まるという場面も。まさにつながる菜園ですね。
もったいない苗植えにオリジナルグッズ、イベントも
初台第二児童遊園地では、渋谷区の自主管理花壇に登録し、区から春と秋の年2回花苗の提供を受けているほか、近所のお花屋さんから売れなくなった花苗を安価で譲ってもらうというサポートを受けています。お店で売れなくなってしまった苗も、育てたら花が咲く!そんな「もったいない苗」を毎月少しずつ公園に植えているそうです。
今月は、アンゲロニアやエキナセア、マリーゴールド、そしてラズベリーパフェという美味しそうな名前の花が公園に仲間入りしていました。
ガーデンワークの作業への参加はもちろん、このようなお花の協賛をはじめ、多くの人が様々な形でプロジェクトに関わっているのも、つながる菜園のユニークなところ。
皆さんの身につけている「TAGAYASO HATSUDAI(たがやそう、はつだい)」と書かれたTシャツなどのオリジナルグッズは、自分たちが欲しいものを、メンバーの一人がデザインをして制作。Tシャツは大人サイズのほか子どもサイズもあり、親子でおそろいも。ガーデニンググローブや、秋冬向けのトレーナーなど、カラーバリエーションもおしゃれです。機能的で美しいグッズはマルシェやオンラインでも販売して、活動費に充てています。今度は「TAGAYASO SHIBUYA(たがやそう、しぶや)」に広げていきたいよねといったお話も!
そして、目の前の緑道で行われる「388 FARM MARCHE(ササハタハツファームマルシェ)」への出店や、商店街のお店と協力したBeer for Seed & 活動関連動画イベントなど、皆さんの活動は地域にもどんどん広がっています。
Beer for Seedとは、地域の飲食店との共催企画として、つながる菜園の活動紹介、地域飲食店さんへの集客促進、参加者への楽しい場づくり、と「来て楽しい・食べて飲んで美味しい・収益の一部がつながる菜園での種代・苗代になる」とぐるりとみんなが幸せになる、つながる菜園オリジナルの仕組みと仕掛けで、こちらもなんとも素敵な取り組みです。
学校で子どもたちの居場所となる菜園を
小学校内の学校菜園からスタートした「つながる菜園プロジェクト」。食と教育の相互的な関わりと学べる場、食を通じて自然界と生命のつながりを体験的に学べる場として、幡代小学校内に菜園を運営していらっしゃいます。
具体的な活動は、毎週1回小学校の休み時間を”菜園タイム”とし、子どもたちと一緒に土づくりや種まきから収穫までを行うこと。収穫した野菜は、学習に使ったり、給食で全校生徒に振る舞われたり、学校で飼育しているウサギたちにお裾分けしたりと、すべてを有効に活用。さらに地域の飲食店への広がりもあるそう。
「教室に入れない子も増えているので、音楽室や保健室のように子どもたちの居場所を学校内に作ることができたらと思って」と学校菜園づくりのきっかけを笑顔で話して下さった佐々木さん。土とふれあうことで、子どもたちの変化の手応えを感じているそうです。
学校菜園づくりへの思いや活動を始めたきっかけなどは、「ササハタハツ新聞」でも紹介されています。
公園活動は多世代がつながりあう入口
2020年に渋谷区のまちラボ認定でプロジェクト化、2021年夏に校内の一画に畑を開墾するところから始まった学校菜園、そして2022年からは公園へと活動を広げてきた「つながる菜園」プロジェクト。2023年度は「渋谷サステナブル・アワード」の大賞も受賞されました。
活動場所が学校から公園に広がってきたのは、子どもたちをはじめお年寄りなどもっと地域のいろいろな世代が関わりあえるようにという思いから。そのために毎月の公園でのつながるガーデンワーク&青空コーヒーは、看板を出し、のぼりを立て、SNSで告知をして、誰でも歓迎!というスタンスを大切にされています。
小学校の保護者が卒業してもつながりを持ち続けていたり、ボランティアやお花育てと地域コミュニティ活動に参加してみたかったというお母さんが親子で毎月楽しみに参加していたり、渋谷区役所のさまざまな部署の職員さんがTシャツを着て参加していたり、ITに詳しい人がプロボノ的に関わっていたり、公園を研究している高校生がいたり、知り合いに誘われて来た人や職場が近所で初めて来た人がいたりと、まさにさまざまなバックグラウンドをもった多世代がつながり合う場所になっていました。
そして、道ゆくご近所さんに「〇〇さーん、コーヒー飲んでくー?」と声をかけ、公園でのコーヒータイムにまた一人仲間が増える、という景色も素敵でした。「このサイズ感がちょうどいいんです、みんなのリビングみたいに使えたら」と話してくださった佐々木さんと荒島さん。公園でみんなでゆっくり楽しく過ごせるよう、様々な工夫をされていることが伝わってきます。
つながるガーデンワークが行われる前は薄暗くてちょっと危険な雰囲気の公園だったそうですが、毎月の活動でとても明るく良い雰囲気の公園に生まれ変わったというお話も。区役所も協力的で、花壇の作業がしやすいように間の柵を撤去してくれるなど良い関係性が作れているようです。
来月は、ハロウィンのお楽しみ企画もあり。冬には太陽光で光るイルミネーションをつけるなど、小さな公園での大きな楽しみは続きます。
【基本情報】
団体名 | つながる菜園 |
公園名 | 初台第二児童遊園地(渋谷区) |
面積 | 274 m2 |
基本的な活動日 | 毎月1回 |
いつもの参加人数 | 15-20名ほど |
活動内容 | ゴミ拾い、除草、落ち葉かき、低木の管理、花壇の管理、植物の水やり、施設の破損連絡、利用者へのマナー喚起、愛護会活動のPR、新メンバーの募集や勧誘、地域のイベント、子ども向けイベント、他団体と連携したイベント、遊びの見守り、高齢者など地域の声がけ、公園再整備に関する活動 |
設立時期 | 2020年 |
主な参加者 | 地域の有志、まちや地域に興味がある人、花好きのご近所さん など |
活動に参加したい場合は | 活動日に直接公園にどうぞ! 活動日はInstagramやFacebookでお知らせしています |