2023/1/24

花と緑の繋がりは、公園から地域の小学校へ

上池袋くすのき公園(豊島区)

各地の公園ボランティア活動を紹介する「となりの公園愛護会」。今回は、公園の花壇をきっかけに地域の小学校での花育て活動もサポートすることになった、こちらの皆さんです。

上池袋くすのき公園の池八パルテールクラブの皆さん

豊島区役所の公園緑地課から、地域を盛り上げるために積極的に活動をしている団体があるとの情報が届きました。公園の花壇の管理を行っている他、近隣の小学校でもボランティアで花壇づくりのサポートをされているとのこと。花と緑の繋がりは、公園から地域の小学校へ。早速お話をお聞きしてくることにしました。

(大きな花壇が出迎えてくれる上池袋くすのき公園。その奥にはシンボルツリーのクスノキが枝を広げている)

東京都豊島区にある上池袋くすのき公園(かみいけぶくろくすのきこうえん)。池袋駅から東武東上線で1つめの北池袋駅からほど近いエリアで、子どもたちの遊べる複合遊具や大人向けの健康遊具、芝生広場やだれでもトイレの他、災害用炊事場やかまどベンチなど、防災機能も充実した公園です。

お伺いした日は、キリッと寒い晴天でしたが、ベンチで日向ぼっこをしたり、健康遊具で体を動かすご近所さんや、キックスケーターやブレイブボードを楽しむ冬休みの小学生で賑わっていました。

(芝生広場と砂地の広場を、舗装された園路でぐるっと周遊できる園内。赤ちゃんからお年寄りまでみんなにやさしい雰囲気。)

こちらの公園で花のボランティア活動をしているのは「池八パルテールクラブ」の皆さん。代表の山中正夫さんと吉田早苗さんにお話をお聞きしました。当日は、豊島区公園緑地課の青栁美咲さんもご一緒くださいました。

7つのプランターから始まった池八パルテールクラブ

上池袋くすのき公園ができたのは2015年。木造住宅密集地域で、防災まちづくり整備事業が行われていく中、国立印刷局宿舎の跡地が、住民の意見を広く取り入れた公園として生まれ変わりました。公園のオープン以来、地元の池八町内会が、年に一度の地域清掃で公園も清掃をしたり、町会衛生部の活動として、毎月2回ゴミ拾いや草取りを行ってきたそうです。

しかし、公園の入口にあったプランターは、だんだん雑草だらけの状態に。区役所に問い合わせた山中さんは、管理する人がいなくなったことを聞き、町会のお花好きの仲間とともに、プランターの管理をやってみることに。2020年、区役所と公園等みどりの協定を締結し、公園入口の7つのプランターの管理をスタートしたのが、パルテールクラブの始まりだったことを話してくださいました。

「名前の由来?パルテールって、フランス語で花壇という意味なんですよ。目新しいのがいいなと思って、いろいろな国の言葉で花壇は何というか調べたんです。一度覚えてしまうと、忘れにくくて、みんな愛着を持ってますよ。」と笑顔で話してくださった山中さん。ちょっとおしゃれでユニークなネーミングのセンスも光ります。

(花壇の案内をしてくださる山中さん:植えた花の情報をお知らせするポスターも山中さんの手づくり)

いろいろな人のチカラでにぎわう地域の公園

この上池袋くすのき公園は、普段から地域のいろいろな世代の人に利用されていますが、秋祭りの神輿の休憩所や、町会の春祭りの会場にもなるような、地域の人々が集う場所でもあります。公園の隣にあるくすのき荘さんと町会青年部の協力で、くすのき荘の2階の窓から公園まで続く巨大な流しそうめん(!)をしたこともあるんだとか。

くすのき荘さんは、アーティストやお子さん連れが集まるコミュニティスペースで、公園に協力してくれるメンバーの一員とのこと。くすのき公園の隣で、カフェ「喫茶売店メリー」をオープンしたくすのき荘さんは、毎日メリーを出して、子どもたちが自由に遊べるようにしていたり、公園で遊べる道具の貸し出しを行っているそうです。そんなお話からも、公園が地域と繋がり、ご近所の人々に愛される憩いの場であることを感じます。

(子どもたちに大人気だという、くすのき荘さんのメリーちゃん)

毎朝の公園パトロールから1日が始まるという山中さん。公園を利用する人はもちろん、近所の人も気持ちよく過ごせるようにと、早朝から公園を見回って、深夜の飲酒ゴミの回収や安全確認をされているそうです。

夏場はプランターの花への水やりが欠かせません。はじめは、水道からプランターまでの数十メートルを、ジョウロとバケツを持って何度も往復するという過酷な状況だったそうですが、町会でホースを購入してもらってかなりラクになったとのこと。それでも、少し離れた防災倉庫から毎回ホースの出し入れをするのは大変です。

お伺いした日は、ちょうど、ホースを収納するための小さな倉庫を、水道の近くに設置したというタイミングでした。「区役所に相談すると、すぐに対応してくれて、助かりますよ。」と話してくださった山中さん。小さな困りごとも、よく相談しているそうで、行政との良い関係が伝わってきます。

石がゴロゴロ出てきた花壇の開墾

入口の7つのプランターからスタートして、公園の反対側の入口のプランターや、スロープ横の花壇と活動の場所を広げていくうちに、公園正面のツツジやサツキなど低木部分を大きな花壇にしてはどうか?という話が持ち上がったそうです。

生えていた低木を、区役所が別の場所に移動して、新たに花壇をつくることに。いざ開墾しようと、土を掘り起こしていくと、大きな石がゴロゴロ出てきたそう。元々国立印刷局の宿舎だった土地を、壊して公園にする時に、土にいろいろなものが混ざったまま整備したようで、とにかく土の質が悪く、土づくりに苦労されたとのことでした。

コツコツと土づくりをしながら、花を植え、公園の入口でみんなを出迎える素敵な花壇ができました。パルテールクラブは、花の活動がメインですが、池八町会の衛生部の皆さんが、毎月第1日曜と第3日曜の朝に公園のゴミ拾い活動をされているので、花植えなどは、その時間に合わせて、大勢で行っているそうです。また、最近では、近くの公園で花植え活動をしている人の手伝いにきてくれたり、町会メンバーの子どもたちが参加したりと、参加者の幅も広がっているんだとか。

(開墾された花壇ではパンジーとビオラが元気に咲いていました。手づくりの花の紹介はここにも。)

校長先生の声かけで小学校での緑育て活動に協力

公園での花壇づくりや花紹介がきっかけで、近くの小学校の校長先生から依頼があり、小学校での花育ての活動に協力することになったという山中さんたち。改築された新校舎が夏にオープンしたばかりの池袋第一小学校で、新たな活動が始まりました。

この秋には、全校児童を対象に、ビオラの鉢植え実習を行ったそうです。1・2年生は参観日での親子実習にするなど、工夫をしながら、2学年ずつ、3日に分けて、300人近くの児童の一人一鉢が完成。花は、地域の人たちからも見える場所に飾られていました。

(一人一人の個性が楽しい児童たちの鉢植え。「森の中の学校」がコンセプトの新校舎は緑でいっぱい。)

11月には豊島区SDGsフェスティバルに参加し、児童、PTA、地域の人で劇の発表を行ったそうです。来春には、一人一鉢の花の植え替えに加えて、校庭横の花壇の整備を計画するなど、活動は広がります。

「公園を通して、地域の役割を果たせていると実感しています。」と話してくださった山中さん。地域の小学校との取り組みを通して手応えを感じているようでした。

自分の庭だと思って。花を育てて、きれいな街づくり

それまでは、ご自宅のベランダでコツコツと植物を育てていたものの、それだけでは物足りなくなってきたという山中さん。「公園を自分の庭だと思って取り組めば、いろいろできるかな?と考えて、毎日お世話をすることにしました。楽しいですよ。」と話してくださいました。

「くすのき公園、あのお花のキレイな公園ね!と近所の友人に言われた時、この活動が地域の人に広がっていることを実感して、うれしく思いました。」と話してくださったのは、吉田さんです。

公園での花壇づくりの活動は、公園が華やぐだけでなく、街の美観や防犯にも効果的とのこと。楽しみながら手入れをすることで、地域の人たちのコミュニケーションの場にもなり、利用者が増えて公園の活性化に繋がったり、ゴミの散乱やいたずらが減るといった効果もあることを、お話してくださいました。

趣味のサツキから始まって、公園の環境に合いそうな植物について、調べて、資料にまとめていらっしゃる山中さん。花の咲く時期から、花言葉、植え方、育て方、剪定の時期や方法、肥料など、これまでに40種類ほど調べたというファイルを見せてくださいました。

「自分で調べて、実際にやってみるとレベルが1段上がるから。」と研究を重ねていらっしゃるようでした。今一番の楽しみは、種の採取と、そこからどう増やすか?どんな育ち方をするか?小学生と一緒に見る実験をしようと思っているとのこと。日日草は夏に実験をして、びっくりするくらい出たそうで、次はマリーゴールドやパンジーを試したいと楽しそうにおっしゃっていました。

地域みんなの庭は、どんどん進化を続けていきそうです。

【基本情報】

団体名池八パルテールクラブ
公園名上池袋くすのき公園 (東京都豊島区)
面積3,088  m2
基本的な活動日毎月第1・3日曜日 8:00-
いつもの活動参加人数10-15人くらい(公園清掃)
会の会員数7人
活動内容ゴミ拾い、花壇の管理、植物の水やり、公園の見回り
設立時期2020年
参加者イメージ町会の有志メンバー、花好きのご近所さん
活動に参加したい場合は第1・3日曜の朝8:00に公園に来てください。公園入口横の掲示板でも予定をお知らせしています。
取材・執筆
取材・執筆
椛田 里佳 代表理事

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフト。夫を難病で亡くし、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフト。夫を難病で亡くし、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

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