2023/7/19

小学生が清掃活動、‟地育”にもなり地域を明るく!

三先公園(大阪市)

大阪公立大学の大学院生が、大阪市の公園愛護会の皆さんの活動を取材し紹介する「大阪となりの公園愛護会」。公園の利活用やランドスケープ設計を学び研究する大学院生の視点で、公園ボランティア活動を紹介します。

4回目となる今回は、大阪市港区の三先公園(みさきこうえん)愛護会。小学校や子ども会、福祉施設などの地域の様々な関係者と協働で活動している皆さんです。

三先公園愛護会の皆さん

公園ボランティア実態調査アンケートでこんなコメントをいただいていました。

若い世代の方たちとその子どもたちの遊ぶ姿や笑顔を見れるのが楽しいです。

三先公園は、大阪メトロ朝潮橋駅から徒歩5分の場所にあり、公園の中央部にある大きな藤棚が特徴的な公園です。5000m2以上ある広い園内には砂場や滑り台、ブランコなどの遊具が充実し、思いっきり走り回れる空間もあります。

取材当日も、たくさんの親子連れと小学生に利用されていました。私も小学生の時に家の近くにあれば、頻繁に遊びに行っていたであろう、とても魅力的な公園です。

この日は、三先公園の目の前にある三先小学校の児童が、毎月1回金曜日の清掃活動に参加されるというお知らせをいただき、お伺いしてきました。

(公園中央部の藤棚)

元気いっぱいで頼もしい小学生

この日は、5年生の約70名が参加しました。子どもたちは、掃除開始の合図がされるとすぐに、熊手やごみ袋をもって、それぞれの掃除場所へ走って行きました。

それぞれの場所では、落ち葉かき、草抜き、ごみ拾いなどに役割を分担し、おしゃべりしながら楽しそうに掃除をしていました。一人ひとりが自らやるべきことを考え、先生の指示を待たずに、主体的に動く様子がとても印象的でした。

(落ち葉かきをしている様子)
(一生懸命草抜きをしている様子)
(二人で力をあわせて雑草を抜いている様子)

中でも一番盛り上がっていたのが、ごみ拾いでした。

公園のあちらこちらで、「○○落ちてたで!」「○○見つけた!」というような声があがり、ごみ拾いのはずが途中から宝探しのようになっていました。拾ったごみを私に見せに来てくれる小学生もいて、パソコンのキーボードの破片が見つかることもありました。注意深く探せば、いろいろ見つかるものですね。

この日は、ちょうど5月の季節の変わり目の暑い日だったので、30分で作業終了の合図が出ましたが、まだ物足らない様子の子どもがたくさんいました。学校に戻る時には、私に向かって「また来てね!」や「明日もしたい!」という声を聞くことができ、その元気さや頼もしさに感心しました。

(小学校5年生約70人による30分の清掃成果)

“自分が使うものは自分で大切にすること”を学んでほしい

小学生の引率でいらっしゃった、三先小学校の中尾先生に、清掃活動についてお話を伺いました。

(三先小学校の中尾先生)

「何といっても三先公園は小学校の目の前にあることもあり、普段から三先小学校のたくさんの児童が利用しています。『地域とのふれあい』や『自分たちが使うものは自分たちで大切にすること』を子どもたちに学んでもらうことを目的に、清掃活動を続けています。」と話してくださった中尾先生。

このように小学生が、普段使っている公園を掃除してくれる方々の存在を知り、掃除をしてお手入れすることを実際に体験して学べる、めったにない機会だと感じました。お話を伺いながら、私も小学生のうちに経験してみたかったな、と正直羨ましく思いました。

公園の清掃活動が地域との接点に

また取材当日には、障がい者支援施設「ゆうゆう美波途」の皆さんも活動に参加されていたので、職員の善村祐輝さんにもお話を伺いました。

(ゆうゆう美波途の職員:善村さん)

ゆうゆう美波途の皆さんは、施設が三先公園の目の前にあることもあり、10年以上前から月1回の頻度で、毎回20名近くの人が公園の清掃活動に参加しているそうです。この日も皆さんは、楽しくコミュニケーションを取りながら草抜きを行っていました。

普段から皆さんは、毎朝10時から三先公園で地域の方々と体操をしたり、ウォーキングしたりするなど公園を活用しているそうで、三先小学校と同じく”自分たちが使う公園は自分たちできれいにしよう”をモットーに活動しているそうです。

「この活動を通じて地域の皆さんに、”ありがとう “といつも声をかけていただけるなど、施設外の人とコミュニケーションがとれる貴重な場になっています。」と善村さんは語ってくださいました。

(おしゃべりしながら草抜きをしている様子)

小学校の参画による大きすぎるメリット

清掃活動が終わった後には、三先公園愛護会の会長の松浦功さんに、普段の活動について、お話をお伺いしました。

三先公園愛護会では、このように毎月1回金曜日に行っている地域の団体との協働活動のほか、毎週日曜日にも愛護会活動を行っています。

日曜日の活動は早朝7時30分から1時間ほど。公園愛護会と子ども会やPTAなどの地域活動協議会のメンバーらが集まって、ごみの回収や除草を中心に活動しているそうです。毎回30人くらいが集まって活動をしていますが、大切にしているのは地域でメンバーを交代しながら、個人に負担をかけすぎないこと。それがお互いに楽しく関わることが続けていくためのコツだと教えてくださいました。

(笑顔がとても素敵な松浦会長)

三先小学校は毎月1回金曜日に、小学校1年生から6年生までの全学年がローテーション制で公園愛護活動に参加しています。小学校とは20年近くの付き合いで、当時の民生委員の方の声かけがきっかけで参加されるようになったそうです。

実は松浦会長自身も三先小学校出身で、昔からこの三先公園で野球をしたりして遊んでいたそうで、昔お世話になった公園に恩返しできることにやりがいを感じられると言います。そんな松浦会長に、三先小学校が清掃活動に参加することの意義を教えていただきました。

まず地域にとって、大きなメリットがあると言います。

三先公園は5000m2と広い分、草抜きが最も苦労するとのこと。しかし、このように毎月小学生が清掃に参加してくれることで、地域の公園管理の担い手不足の解消になっているそうです。さらに松浦会長は、「活動日ではない日でも、普段から子どもたちが声をかけてくれることで、地域が明るくなるんです。」と語ってくださいました。

一方、子どもたちにとっても、大きなメリットがあるそうです。

この活動を通じて、小学生と地域の接点が生まれ、緊急時や防犯面に対する安心感を得られると言います。さらに、普段からモノを大切にする習慣が身につき、遊んでいるときもゴミを見つけると自主的に拾い、イタズラもしなくなるそうです。

『マナーが悪くても‟あえて”注意しない』それが三先スタイル

清掃活動の前から、既にきれいに保たれている印象を受けた三先公園。しかし、昔は公園に家庭ごみを捨てる人が多く、設置していたごみ箱もすぐいっぱいになるほどだったそうです。

当時から、たとえ目についたとしても、三先公園では注意はアイコンタクトで行うスタイルをとってきたとのこと。その効果もあってか、少しずつですが、減ってきているそうです。

「今でも犬のフンの放置など、公園の利用マナーの悪い人も一部いますが、そんな人を見かけたとしても、ニコっと笑うだけであえて注意はしません。」と笑顔で教えてくださった松浦会長。

松浦会長の笑顔に相当効果があるのかな…

取材を終えて

“自分たちが使う公園は自分たちで大切にする”。今でこそ私は、大学で公園の利活用や管理運営について学び、その大切さを十分に理解していますが、子どもの時には考えたこともありませんでした。

ところが、ここでは小学生の頃から、子どもたち自身が楽しみながら地域の公園をきれいにし、この大切さを学ぶことが自然にできています。これはまさに”地育”の貴重な機会だと思いました。またこの活動を通じて、子どもと地域の接点が生まれ、地域に活気をもたらし明るくしてくれる、いいこと尽くしの活動だと感じました。

帰り際には、松浦会長から「将来はお世話になった地域に何か貢献できるといいね」と激励の言葉をいただき、現在大学やこの取材で学んだことを地域に還元できるように、私も頑張ろうと思いました。

(こども会と年2回植え替えを行っているふれあい花壇)
(遊具ときれいな新緑)

【基本情報】

団体名三先公園愛護会
公園名三先公園(大阪市港区)
面積5,166 m2
基本的な活動日金曜日(月1回)、日曜日(毎週)
いつもの活動参加人数約20人
会の会員数約20人
活動内容ごみ拾い、除草、落ち葉かき、低木の管理、花壇の管理、植物の水やり、施設の破損連絡、利用者へのマナー喚起、地域のイベント、子ども向けイベント、他団体と連携したイベント、遊びの見守り、高齢者など地域の声がけ、トイレ清掃
設立時期1977年11月
参加者イメージ子ども、若者、子育て世代、アクティブシニア、職員
活動に参加するには活動日にお越しいただければ、誰でも参加可能です!
取材・執筆
取材・執筆
中辻 魁人

大学でランドスケープを専攻し、公園の利活用に向けて日々勉強している大学院生。子どもの頃から公園好きで、よくボール遊びをしていました。大学院生となった現在は、「公園を綺麗にしていただいている方とお会いしたい!公園がどう運営されているのかを知りたい!」という思いがきっかけとなり、研究の傍らでレポーター活動を開始。大阪公立大学大学院 農学研究科 緑地環境科学専攻 緑地計画学研究室所属。大阪府堺市生まれ。

大学でランドスケープを専攻し、公園の利活用に向けて日々勉強している大学院生。子どもの頃から公園好きで、よくボール遊びをしていました。大学院生となった現在は、「公園を綺麗にしていただいている方とお会いしたい!公園がどう運営されているのかを知りたい!」という思いがきっかけとなり、研究の傍らでレポーター活動を開始。大阪公立大学大学院 農学研究科 緑地環境科学専攻 緑地計画学研究室所属。大阪府堺市生まれ。

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