2026/4/1

世代をつなぎ、未来へ育む。雑司ケ谷霊園「緑のこみちの会」の挑戦

雑司ケ谷霊園(東京都)

公益財団法人 東京都公園協会「2025 年度公益事業推進課 ボランティア活動レポート作成業務委託」として、一般社団法人みんなの公園愛護会が取材・執筆を行った記事です。

面積も広く、利用する人も多い都立公園。活動している公園ボランティアの方々の活動テーマも多彩。まさに「推しの公園」活動として行われている公園ボランティアのあり方を知っていただければと思います。


夏目漱石をはじめ多くの著名人が眠る、緑豊かな雑司ケ谷霊園。その穏やかな景観を25年にわたり守り続けているのが「緑のこみちの会」です。地域の安全と防災のために生まれたこの会は今、時代の変化に合わせ、新たな一歩を踏み出そうとしています。世代交代の最中にある会の「今」と「これから」について、会長の吉田達さん(前列左)をはじめとするメンバーの皆さんにお話を伺いました。

始まりは、地域の安全を願う声から

会の設立は1999年にさかのぼります。当時、霊園を囲んでいた万年塀を、防災・防犯の観点から生け垣に変えてほしいという地域住民の長年の要望がありました。この声が、雑司ケ谷霊園を広域避難場所とする動きと重なったことで、ついに実現へと動き出しました。

こうした経緯から、外周の維持管理を豊島区と地域が協力して進めることとなり、その担い手として「緑のこみちの会」が発足しました。会は現在に至るまで、外周の清掃を中心に活動を続けています。また外周の環境を整える一環として、花を植え、日々の手入れにも取り組んできました。

「この美しい生け垣を自分たちの手で守り育てよう」。そんな思いのもと続いている地道な活動は、緑の景観を保つと同時に、防災・防犯の面でも地域を支える営みとして続けられてきました。会の活動は、まさに地域の誇りそのものなのです。

(生け垣に絡まったつるを除去する作業を行う様子)
(自然と役割分担がされ、集めたつるの枝を細かく切り、袋に穴があかないようにケアする方)
(倉庫から道具をリヤカーに入れ、霊園外周の清掃場所まで向かいます)

持続可能な活動へ。「がんばらない」勇気

長年活動を続けてきた会も、メンバーの高齢化に加え、近年の猛暑など、作業環境の変化に向き合っています。「これまでは、手間暇かけてたくさんの花を育ててきましたが、夏の水やりなどが大きな負担になっていました」と語るのは、2023年に就任した会長の吉田さん。

そこで会は、大きな方針転換に踏み出します。それは、メンバーに過度な負担がかからず、無理なく続けられる活動へと見直すことでした。活動エリアを絞り、雨水だけでも育つ多年草を中心に植えるなど、手入れのしやすい花壇へと舵を切りました。

「先代が築いてきたものを大切にしつつも、今の時代に合ったやり方を探りたい。考え方の違うメンバーの意見を丁寧に聞きながら、皆が納得できる形を模索しています」

この丁寧な合意形成こそが、会の新たな結束を生んでいます。

(水やりが不要な理由をしっかりと説明する看板。地域への気遣いが感じられます)
(取材に伺った1月下旬には生け垣のサザンカ前で、スイセンが咲いていました)

地域との連携が、活動の幅を広げる

この会の強みは、地域との多様なつながりにあります。長年続く日本女子大学との連携に加え、近隣で水道工事を行う建設会社が、地域貢献の一環としてときどき3〜4名の社員を派遣してくれることもあるそうです。

特筆すべきは、豊島区からのユニークなサポート。会の運営を円滑にするため、区が事務局スタッフとして小口優子さん(まち処計画室:1枚目集合写真 後列一番左側)を派遣してくれているのです。「役所との調整や書類仕事など、専門的な部分を担ってもらえるのは本当にありがたい」とメンバーは口を揃えます。

こうした市民の手による取り組みは、地域の外からも注目を集めています。

(年始めの活動で、メンバーの山田直樹さんが手作りのミニ獅子舞で迎えてくれました)

市民の手で育てる活動が評価されユネスコ未来遺産に

2014年、雑司が谷地域一帯は、地域の文化や自然を市民の手で守り伝える活動が評価され、日本ユネスコ協会連盟の「未来遺産」に登録されました。

会の長年にわたる地道な活動も、この認定を支えた大きな理由の一つです。

―ユネスコ未来遺産とは。―引用: 公益社団法人 日本ユネスコ協会連盟 
“100年後の子どもたちに長い歴史と伝統のもとで豊かに培われてきた地域の文化・自然遺産を伝えるための運動です…「未来遺産運動」は、長い歴史を超えて人々が紡ぎ続けてきた文化遺産や、自然とともに生きる知恵や工夫の中でつくりあげてきた自然遺産という豊かな贈り物に光を当て、それらを未来に伝えていこうという人々の意欲を活性化させることによって時代を切り拓いていくことを目的としています。”

こうした未来遺産の精神を次世代に伝えるため、会は地域との連携を大切にしています。年に一度、地元の南池袋小学校と合同で行う落ち葉掃きは、子どもたちに大人気の恒例行事。地域の宝を地域の子どもたちと共に守り育てる、大切な機会となっています。

(毎年恒例の南池袋小学校3年生と行った落ち葉清掃の様子。3年生106名が参加。写真は雑司が谷未来遺産WEBサイト雑司が谷トピックスサイトでの紹介より)

霊園管理事務所との緊密な連携

緑のこみちの会の活動には、昔から霊園管理事務所の職員も一緒に参加しています。一緒に活動することで、調整ごともその場で決まっていきます。取材当日にも、「霊園入口脇の植栽が伸びてきて、歩きづらい」という話が作業中の話題にあがり、管理事務所側で剪定を行うことがその場で決まりました。こういう連携が普段から行われているのも、ボランティアとして活動しやすく、ありがたいサポートとなっていました。

(雑司ケ谷霊園管理事務所職員のお二人。手に持つのは、緑のこみちの会メンバーお手製の門松を再利用した一輪挿し)

霊園の未来と共に

「霊園を公園のように、より開かれた場所にしていく」という計画が進む中、会の役割も変化していく可能性があります。「外周の清掃という会の原点を守りながら、どうすれば参加者がもっと楽しめるか、やりがいを感じられるか。それが今の目標です」と吉田会長。

(清掃作業後、近くの区民集会所でミーティング。参加者みんなの発言を促しながら、丁寧に合意をとって今後の予定を決めていました)

この日のミーティングでは、副会長の増田圭一郎さん(右から3人目)から「活動を外の人に知ってもらうきっかけとして、植物などの紹介を行う屋外体験会と座学を来年春に開催したい」という案が出ていました。「地域で花壇を目にする人や、親子など未来の担い手になるかもしれない人に知ってもらう機会をつくりたい」と発言していました。

先代の思いを尊重し、新しい世代の考えを取り入れる。雑司ケ谷霊園「緑のこみちの会」のしなやかな変化と挑戦は、多くのボランティア団体が未来へ活動をつないでいくための、大切なヒントを与えてくれます。

■取材後記

永く続いている団体でありながら、世代交代を伴いながら続いているのが「緑のこのみち会」のすごいところ。みんなの公園愛護会が普段取材している地域の街区公園の公園ボランティアにも共通する組織のあり方が印象的でした。省力化しながら、緑育ての楽しみ方を工夫する。さらに地域とのつながり、未来の担い手の子どもたちとの協働で地域を育む大切なボランティア活動でした。(跡部)

霊園で活動するボランティア。もしかして特殊な世界なのかな?と思いましたが、そこで行われていたのは、まちを豊かにするための、等身大で温かな活動でした。歴史ある霊園が日常の一部として存在し、共に緑を育んでいく。そんな地域に根ざした尊い営みが印象的でした。(椛田)

団体情報

公園名雑司ケ谷霊園
団体名緑のこみちの会
設立1999年
活動内容雑司ケ谷霊園外周部の清掃、除草、花壇管理など
活動日毎月第4土曜日(春・秋は第2土曜日も活動)
メンバー数約13名
ボランティア活動に参加するには?活動日午前9時に雑司ケ谷霊園内緑のこみちの会倉庫前集合(水飲み場、ベンチのある通り)。
どなたでも参加可能です。作業のしやすい服装でお越しください。道具類は事務局で用意してあります。
助成金情報公益財団法人 東京都公園協会では「都立公園事業に参加協力する都民への助成金」を設けています。詳しくは以下のリンクをご確認ください
https://www.tokyo-park.or.jp/public/volunteer/about/

取材・執筆
取材・執筆
跡部 徹 理事

自宅は公園の前。住民運動でできた公園のため「自分たちの公園感」が強く、お世話しながら遊び尽くす喜びに目覚めた一人。公園にはまだまだ伸び代がある!株式会社空気読み代表・メディアコンセプター(事業戦略から媒体制作・運用まで。リクルートでメディアプロデューサー、編集長、事業開発を経て独立)/手書き地図推進委員会(2020年GOOD DESIGN賞受賞)/一卵性双生男児の父/著書:「空気読み」企画術/前に進む力/顧客に愛される会社のソーシャル戦略/手書き地図のつくり方、等。仙台市生まれ、東京在住。

自宅は公園の前。住民運動でできた公園のため「自分たちの公園感」が強く、お世話しながら遊び尽くす喜びに目覚めた一人。公園にはまだまだ伸び代がある!株式会社空気読み代表・メディアコンセプター(事業戦略から媒体制作・運用まで。リクルートでメディアプロデューサー、編集長、事業開発を経て独立)/手書き地図推進委員会(2020年GOOD DESIGN賞受賞)/一卵性双生男児の父/著書:「空気読み」企画術/前に進む力/顧客に愛される会社のソーシャル戦略/手書き地図のつくり方、等。仙台市生まれ、東京在住。

取材・執筆
みんなの公園愛護会の書籍紹介 学芸出版社

みんなの公園愛護会初の書籍。「推しの公園を育てる!公園ボランティアで楽しむ地域の庭づくり」が学芸出版社から刊行されました。全国各地の推しの公園活動やボランティア運営のヒントが紹介されています。ぜひ手にとってお読みください。https://park-friends.org/books/book1/

みんなの公園愛護会初の書籍。「推しの公園を育てる!公園ボランティアで楽しむ地域の庭づくり」が学芸出版社から刊行されました。全国各地の推しの公園活動やボランティア運営のヒントが紹介されています。ぜひ手にとってお読みください。https://park-friends.org/books/book1/

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