公益財団法人 東京都公園協会「2025 年度公益事業推進課 ボランティア活動レポート作成業務委託」として、一般社団法人みんなの公園愛護会が取材・執筆を行った記事です。
面積も広く、利用する人も多い都立公園。活動している公園ボランティアの方々の活動テーマも多彩。まさに「推しの公園」活動として行われている公園ボランティアのあり方を知っていただければと思います。
1991年、桜ヶ丘公園の開園とともに産声を上げた「桜ヶ丘公園雑木林ボランティア」。当時はまだ珍しい活動で、定員の3倍以上の応募が殺到するほどの熱狂的なスタートでした。以来、公園の歩みと共に35年、雑木林の再生と田んぼの景観復元を休むことなく続けています。 長年にわたり多くの人を惹きつけ、活動を継承していくための秘訣とは何でしょうか。
対等な絆で守り抜く。「みんなが主役」であり続ける35年の保全の志
現在は80名を超えるメンバーが、毎週土曜日に「こなら班」と「田んぼ班」に分かれて活動しています。この息の長い活動を支えているのは、独自の組織体制にあります。大所帯でありながら、この会には「会長」という役職が存在しません。一般的に、規模が大きくなるほど強力なリーダーシップに依存しがちですが、同会では総務や広報といった事務局機能を全員で分担し、かつ定期的に交代するシステムを採っています。
取材に応じたメンバーの長久豊さんは、その意義を次のように語ります。
「誰か一人が頑張るのではなく、みんなで支え合う。このやり方だからこそ、30年以上も続いてきたのだと思います。」
「特定の一人に負担を集中させない」というこの知恵は、裏を返せば「全員が当事者である」という意識を育みます。この抱え込まない仕組みが、結果としてメンバー一人ひとりの主体性を引き出し、風通しの良い土壌となっているのです。
こうしたフラットな関係性は、新しい世代にとっても大きな魅力です。直近の2年間で20名以上の新入会員を迎えるなど、ベテランの経験と新人の活気が共鳴し、活動の輪は今もなお広がり続けています。

こなら班:15年周期で伐採・更新する「皆伐更新」
雑木林の再生を担う「こなら班」が守り続けているのは、かつての里山の風景です。その活動の核心にあるのが、独自の調査と研究から導き出した「15年サイクル」の森づくり。彼らは「こならの丘」を15のエリア(林班)に分け、毎年ひとつのエリアの樹木をすべて伐採する「皆伐更新(かいばつこうしん)」を計画的に続けています。こうした継続的な作業の積み重ねが、今の美しい雑木林の風景をつくっています。




雑木林の保全には、専門的な知識と技術が欠かせません。この会では、新しく入ったメンバーに対し、約2ヶ月間の「新人研修」を実施しています。座学だけでなく、ベテランメンバーと実際の作業を行いながら、安全管理や道具の使い方、雑木林に関する知識を学びます。
「新入会員には緑色の名札をつけてもらい、周りのメンバーが自然に声をかけたり、サポートしたりできるように工夫しています。新メンバー同士も話がしやすくなるようです」と谷村信弘さん。こうしたきめ細やかな受け入れ体制が、新しいメンバーの定着と、技術の継承を支えています。
研究レベルの調査とデータ管理
特徴的なのが、活動の“研究レベル”の深さです。エリア内の樹木をすべて記録する「毎木調査」や、野草の「植生調査」を定期的に実施。
「手探りで始めた雑木林管理ですが、データを蓄積し、分析することで、より良い方法を模索し続けています。こうした知的な面白さも、活動の魅力の一つですね」と長久さんは語ります。その活動成果は、令和4年度都市緑化功労者国土交通大臣表彰にもつながりました。
田んぼ班:公園敷地内で田んぼを復活
もう一つの活動は、公園内にある放棄されていた谷戸田を稲作が行われていた頃の景観に復元し、水田雑草の保護と水生昆虫の生息環境の回復に努める「田んぼ班」です。

開園当初の公園内には、放棄水田があり、景観だけでもなんとかしたいと東京都に話して管理できるようになったそうです。
田んぼ班の村井俊子さん(写真の緑のジャケット)は、田んぼ管理が始まった時から参加されている古参メンバー。「最初は一面がヨシだらけだったのを刈ることから始まりました。刈るとあぜが見えてきて、徐々に田んぼにして米を作れるようになったんですよ」と教えていただきました。なんと御年90歳オーバー!現役で田んぼを守る姿は、活動の活力を象徴しています。
近隣の住宅化による水量の減少や、ネズミによる食害など、自然相手ならではの苦労も絶えません。
一方で、 すぐ近くにある連光寺小学校の5年生が、毎年この田んぼのうちの一枚を担当するなど、田んぼの景観だけでなく、農業文化を地域に伝える教育的な役割も担っています。この日も田んぼの授業に参加した小学生が手伝いに来ていました。

地域に愛される「どんぐり祭り」
毎年12月に開催される「どんぐり祭り」は、300人近くが参加する大人気イベント。2025年で32回目を迎え、地域に冬の訪れを告げる風物詩として定着しています。

どんぐりを使った工作、焼き芋、しめ縄づくりやクリスマスリースづくりなど、雑木林の恵みを活かしたプログラムが満載です。「子どもたちが大人と一緒に楽しんだ記憶が、きっと次の世代につながっていく」とメンバーの皆さんは考えています。

桜ヶ丘公園サービスセンター長にもお話を伺いました。「どんぐり祭りは雑木林ボランティアの皆さんとセンターの共同開催のイベントです。毎年、楽しみにしてくれている方が多く、今年はいつやりますか?などの問い合わせもあります」と住民の方にとってもなくてはならないイベントになっているようです。
「雑木林ボランティアの皆さんの取り組みは、普段から桜ヶ丘公園サービスセンターの作業と連動することが多くあります。お互いの情報共有、月一の定例会に参加したり、顔を合わせて相談するように心がけています」
センター側も、ボランティアが「無理せず楽しく安全に」活動できるよう、サポートを惜しみません。この日も、こなら班の作業現場へ電動運搬車を持ち込み、運搬作業を力強くバックアップ。また、田んぼ班には木製の唐箕機の老朽化に合わせてオート唐箕 を導入するなど、道具の面からも「長く、楽しく」続けられる環境を整えています。現場のニーズに寄り添った環境づくりに取り組んでいました。
工夫が成果に!コロナ後も新規会員が毎年10名!
多くのボランティア団体が会員減少に悩む中、コロナ後も毎年10名ほどの新規会員を迎えています。
広報担当の谷村さんは「もともとは市や都の広報での告知だけでしたが、ポスター掲示を近隣まで広げ、タウン情報誌への掲載交渉も行いました。効果的だったのは 、10人ほどが同期入会することで、新メンバーが気兼ねなく馴染める環境になっているようです」と語ります。
他にも、参加者の技術やノウハウを持ち寄って、ワイン勉強会や日本酒を楽しむ会など、交流の場として楽しめるイベントを開催しているそうです。
さらなる発展を目指して
課題は、長年保全してきた「こならの丘」が安全管理の観点から普段は閉鎖されていること。「この美しい雑木林を、もっと多くの人に知ってほしい」と、見学者を受け入れるための方法を模索しています。
また、より専門的な知識を学ぶため、外部の専門家を講師として招く機会を増やしたいと考えていますが、人選や交渉などの手間が大きな課題です。
「昔ながらの里山の風景を未来に残したい。そのために、これからも学び、楽しみながら活動を続けていきたいです」この言葉からは、ボランティアの皆さんが活動を通じて心満たされ、この豊かな時間をこれからもずっと、大切に積み重ねていこうとする確かな想いが伝わってきます。
公園サービスセンターと協力体制を築き、地域に密着して活動する桜ヶ丘公園雑木林ボランティア。その着実な歩みは、里山保全の未来を明るく照らしています。
■取材後記
永く続いている団体で、かつ初期メンバーが現在も活動している桜ヶ丘雑木林ボランティア。初期メンバーの方にお話を伺うことで、東京都で森林ボランティアが始まったときの盛り上がりを知れました。なんでもそうですが、最初に始まったときのうねりみたいなところに、今活かせるヒントがたくさん埋まっていますよね。温故知新。(跡部)
こならの丘へ一歩入って驚いたのは、その明るさと心地よさ! 地道でハードな伐採や植生調査、そして田んぼづくり。それらを「楽しい」といきいきと続けるみなさんの姿に、「ボランティアだからこそ、ここまでできる」という言葉の重みを感じました。 私も枝打ちを体験させていただきましたが、ノコギリを動かし切る楽しさは、メンバーさんのおっしゃる通りまさに「ハマる」感覚。里山づくりの奥深い魅力に触れた、清々しいひとときでした。(椛田)
団体情報
| 公園名 | 桜ヶ丘公園 |
| 団体名 | 桜ヶ丘公園雑木林ボランティア |
| 設立 | 1991年 |
| 活動内容 | 雑木林・谷戸田の景観復元維持管理、農業文化の継承など |
| 活動日 | 毎週土曜日 |
| メンバー数 | 約80名 |
| ボランティア活動に参加するには? | 桜ヶ丘公園サービスセンターにて、随時お申し込みを受け付けています。 また、毎年3月頃に桜ヶ丘公園にて説明会を開催しております。詳細は、同公園サービスセンターまでお問い合わせください。 |
| 助成金情報 | 公益財団法人 東京都公園協会では「都立公園事業に参加協力する都民への助成金」を設けています。詳しくは以下のリンクをご確認ください https://www.tokyo-park.or.jp/public/volunteer/about/ |