2026/1/13

学校跡地を「地域の縁側」に。住民NPOが主役の公園づくり

雑司が谷公園(豊島区)

各地の公園ボランティア活動を紹介する「となりの公園愛護会」。今回ご紹介するのは、旧小学校の跡地に誕生し、地域住民の手で守り育てられているこちらの公園です。12月の寒空の下、元気に行われていた花壇のお手入れ活動にお伺いしました。

小学校跡地に、熱心な住民参加でつくられた公園

東京都豊島区にある雑司が谷公園(ぞうしがやこうえん)。東京メトロ副都心線の雑司が谷駅から5分ほど、住宅地の中の細い道を歩いた先に、ぱっと視界が開けるように広がる新しめの公園です。

ここは123年の歴史に幕を閉じた「旧高田小学校」の跡地を活用してできた公園で、長年の住民参加の話し合いや検討会を経て、2020年にオープンしました。

園内には、芝生のはらっぱや、ネットで囲われたボールひろば、夏に大人気の水遊びひろば、健康遊具のあるフィットネスひろば、ローラースライダーインクルーシブ遊具のあるこどもひろばなど多様な居場所があります。高田小学校時代から親しまれてきた桜やモミジ、梅、グレープフルーツ(!)の木なども大切に残されており、地域の記憶が息づいています。

「丘の上テラス」という建物があるほか、かまどベンチや深井戸・ソーラー照明などの防災設備も整っている雑司が谷公園は、周辺の道路が狭あいで、木造密集市街地である雑司が谷・南池袋地区において、地域の防災の拠点にもなっています。

子どもたちからは「ぞうこう」と呼ばれ、小さな子どもから高齢者まで広い世代に親しまれている公園です。

(広々としたはらっぱやボールひろばがある雑司が谷公園。奥には池袋の高層ビル群が見えます)
(入口には高田小学校の歴史を刻む石碑がありました。坂を登ると丘の上テラスです)

公園づくりからその後の運営も担う「雑司が谷ひろばくらぶ」

この公園を支えているのはNPO法人「雑司が谷ひろばくらぶ」のみなさんです。今年5月から理事長を務められている松浦和代さんをはじめ、みなさんにお話をお聞きしました。

雑司が谷ひろばくらぶは、7年にわたって公園づくりの検討を重ねてきた「公園計画検討会」と、この地区で長年にわたりまちづくりに取り組んでいる「雑司が谷・南池袋まちづくりの会」が母体となってできたNPO法人で、雑司が谷公園の運営・管理を行うとともに、地区内の8つの公園の管理をしながら、公園を核としたまちづくり活動を行っていらっしゃいます。

雑司が谷ひろばくらぶと雑司が谷公園の歴史や概要などは、ホームページで詳しく紹介されています。公園のリーフレットもあります。

(理事長の松浦和代さん:18年間民生委員を務められるなど長年地域のための活動をされています)

12月の花壇ボランティア:竹の柵は「お正月のリサイクル」!

取材に伺った日は、ボランティアサークルによる月2回の花壇メンテナンスの日。午前9時前には、メンバーのみなさんが続々と集まってきました。

この日のメイン作業は、咲き終わったキバナコスモスの片付けと、冬の新しい花壇づくりです。はじめに松浦さんから今日の作業の内容が共有されると、それぞれ作業に入りました。

雑司が谷公園では、さまざまな種類の花や木が育てられています。12月のこの時期でも、あざやかなピンク色のヒガンバナの仲間ダイヤモンドリリーや、キク、ナデシコ、パンジー、ビオラ、ラベンダーなどが咲いていました。「高田小の野草園」というレトロな看板もあります。

(あざやかなピンク色のダイヤモンドリリーがよく咲いていました)

「今年もよく咲いてくれたわね〜」みなさんが口々におっしゃっていたキバナコスモスは、雑司が谷公園だけでなく、近所の「UFO公園」(正式名称は雑司が谷中央児童遊園)でも育てているそう。

大きく育ったコスモスの根は意外と頑固。女性メンバーが力を合わせ、力仕事は男性メンバーがツルハシでサポート。おしゃべりを楽しみながら、手際よく袋に詰められていきました。

(咲き終わったキバナコスモスをどんどん抜いて袋に入れていきます)

こちらでは、新しい花壇づくりが行われていました。植栽エリアの中に小さな円形花壇を新設すべく、ツルハシやシャベルで丸い穴を掘って開墾したら、掘り起こした土に肥料を混ぜ、コニファー(ブルーアイス)、カルーナ、ハボタン、パンジーなどが植えられました。クリスマスやお正月を彩る鮮やかな花壇の完成です。

花壇を囲む竹の柵は、みなさんの手作りです。この竹は、なんとお正月に飾った門松の竹を割いてリサイクルしたものだそう!1年で写真のような茶色になるそうですが、来月になればまた新しい竹に生まれ変わるんだとか。地域の資源が循環する素敵なアイデアです。

(開墾した花壇に花苗を植えます!)
(新しい花壇が完成!)
(園路の両側の植栽エリアは四季折々さまざまな花や木が見られます)

公園を起点にご近所さんが日常的に楽しくつながる

活動時間は1時間。作業が終わると、テラスで恒例のお茶タイム。温かいお茶やお汁粉が用意され、心も温まります。

みなさんご近所さんで、「子どもが同級生でここの小学校に通っていた頃からの仲間なのよ」とおっしゃる方もいるように、公園ができる前の高田小時代から、この場所で交流し、ともに過ごしてきた方々です。

雑司が谷公園の花壇づくりのほかにも、前述のUFO公園での花壇づくり、健康体操、編みものなどの手づくりを楽しむ会の活動など、いろいろな活動を楽しまれている方が、たくさんいらっしゃいました。

「明日はビンゴだね〜。また明日!」と笑顔で話すメンバーも。そういえば、集合した時も「昨日はおつかれさま〜!」なんて声が聞こえていました。毎日顔を合わせて楽しい時間を過ごされているんですね。

予報より早めの雨が降り出してきてしまったので、早めの解散となりました。

まちの縁側「丘の上テラス」

雑司が谷公園のシンボルとも言える建物が「丘の上テラス」です。建物内には、だれもがゆっくり過ごせるスペースのほか、だれでもトイレ、予約して利用できる集会室や防音室、備蓄倉庫や防災倉庫などもあり、本格的な厨房機器のある給湯室を使って週末はカフェが開かれています。

大きなひさしの下で公園を眺めながらゆっくりできるテラスは「まちの縁側」として愛され、丘の上テラスは地域のコミュニティ活動の拠点であると同時に、災害時には住民のよりどころとなる防災機能も充実しています。

閉校後10年以上にわたってさまざまな地域活動が行われてきた旧高田小学校。これからも地域活動を続けたい!という地元住民の要望で、雑司が谷公園内に丘の上テラスが建てられ、豊島区と雑司が谷ひろばくらぶが協働で管理運営をしています。

テニス・野球・サッカー・フラダンス・フォークダンス・合気道・健康体操・囲碁将棋などのサークル活動が、旧高田小時代から続いているそうです。

丘の上テラスは、元旦と大晦日を除く毎日、朝9:00から夜21:00まで開館し、スタッフが常駐しています。小学生は夕方17時、中学生は19時、高校生は20時まで利用することができ、wi-fiも完備。

勉強をしたり、友達と語らったり、本を読んだり、中高生にとっても第二の居場所として人気だそうです。明るく暖かい場所で、大人が優しく見守ってくれるこの場所は、きっと地域の多くの子にとって、かけがえのない居場所のひとつになっていることが想像できます。

(丘の上テラスのエントランスホール:お茶を飲んだり、読書やボードゲームなども楽しめます)

公園を核とした、まちづくり活動

住民参加で作られた雑司が谷公園では、ひろばくらぶが中心となって、近隣住民へのアンケートや、ご意見ボード、使い方ワークショップにより利用者の意見を集めながら、公園のルールづくりも行っています。公園のルールは、ホームページや公園掲示板に掲示された基本的なルールをもとに、細かいルールは利用者の意見で決めていこうと常時意見を募集中。地域の町会、商店会、大学、NPOで力を合わせて雑司が谷公園運営協議会も運営されています。

また、雑司が谷公園はさまざまなイベントも盛りだくさん。毎月第4日曜にはプレーパークが開かれています。ノコギリやトンカチ・くぎを使った工作や焚き火など自由に遊べるプレーパークは、毎回100人ほどが楽しんでいるそうです。

(プレーパークで70-80人の子どもたちがすきなものを描いたという「ぞうこうそうこ」)

毎年秋に開催する「やさしいマルシェ」は大人気イベント、地域の人たちが出店する手作りマルシェです。11月に行う「ぞうこう防災」イベントは、救護体験やかまどベンチ体験、炊き出し訓練、中学生による消火ポンプの実演訓練も行われるほど本格的。そのほかにも、中秋の名月を楽しむ「丘の上句会」、天体観測、星空上映会、縁日などのイベントも季節ごとに行われています。

(地域やからだに「やさしい」をテーマにしたいろいろなお店が集まる「やさしいマルシェ」:写真提供 雑司が谷ひろばくらぶ)

活動は雑司が谷公園だけにとどまりません。雑司が谷・鬼子母神の郷土玩具「すすきみみずく」をつくるためのススキ育てや、小学校との協働など、地域の歴史や文化を大切にする取り組みも地域で行われています。

(雑司が谷・鬼子母神の「すすきみみずく」:丘の上テラスに展示されています。南池袋小学校や雑司が谷公園、みどり公園にもススキがあり、4年生は毎年すすきみみずくを作るんだとか)

雑司が谷ひろばくらぶでは、雑司が谷公園を含めて地区内の8つの公園の管理をしています。シルバー人材センターに清掃の委託をしたり、協定花壇に登録している公園では、年3回公園周辺の人たちに声をかけて花苗を植える取り組みを行うなど、多くの人たちの力を集めて地域の公園を守り育てています。

そのほか、みみずく隊の見守りパトロール活動として、毎週火曜日には8つの公園を含む地区内の夜間パトロールをして子どもたちへの声掛けをしながら、まちのゴミ拾いを行っているほか、毎朝の登校見守りも行っているとのこと。

松浦さんは、みみずく隊の火曜日以外にも毎日8つの公園をぐるっと回り、困り事がないかの確認をされているそう。雑司が谷公園はもちろん、地区内のすべての公園で、お手入れをしていると「きれいになったね」などと声をかけてもらうことも多いそう。

多くの人が公園を利用してくれること、公園から地域のコミュニケーションが生まれることが、やりがいと喜びにつながっていることを教えてくださった松浦さん。

明治11年に始まる高田小を受け継いで、雑司が谷のみなさんの思いを重ねてつくった、地域のよりどころとなる公園は、多世代が集うみんなの居場所として、地元のみなさんの熱い想いで運営されていました。

(公園の入口でみんなを見守るみみずくを発見!)
(園内を周遊できる園路は、リハビリのためのお散歩コースとしても人気なんだそう)
(丘の上テラスの屋上からは園内が一望できます)

【基本情報】

団体名雑司が谷ひろばくらぶ
公園名雑司が谷公園(豊島区)
面積8,653 m2
基本的な活動日花壇ボランティアは毎月5日・20日、そのほかの活動はカレンダー
いつもの活動参加人数15人くらい
会の会員数30名
活動内容ゴミ拾い、除草、落ち葉かき、低木の管理、花壇の管理、植物の水やり、トイレ清掃、施設の破損連絡、利用者のマナー喚起、愛護会活動のPR、新メンバーの募集や勧誘、地域のイベント、子ども向けイベント、他団体と連携したイベント、遊びの見守り、高齢者など地域の声がけ、協議会、丘の上テラスの管理運営
設立時期2018年(NPO法人雑司が谷ひろばくらぶ)、2020年(雑司が谷公園と丘の上テラス)
主な参加者NPO会員、ご近所の有志、お花好きのご近所さんなど
活動に参加したい場合は?公園の掲示板やホームページのカレンダーをチェックして公園へ!ホームページから問い合わせもできます
取材・執筆
取材・執筆
椛田 里佳 代表理事

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフトしたのち、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフトしたのち、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

取材・執筆
みんなの公園愛護会の書籍紹介 学芸出版社

みんなの公園愛護会初の書籍。「推しの公園を育てる!公園ボランティアで楽しむ地域の庭づくり」が学芸出版社から刊行されました。全国各地の推しの公園活動やボランティア運営のヒントが紹介されています。ぜひ手にとってお読みください。https://park-friends.org/books/book1/

みんなの公園愛護会初の書籍。「推しの公園を育てる!公園ボランティアで楽しむ地域の庭づくり」が学芸出版社から刊行されました。全国各地の推しの公園活動やボランティア運営のヒントが紹介されています。ぜひ手にとってお読みください。https://park-friends.org/books/book1/

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