各地の公園ボランティア活動を紹介する「となりの公園愛護会」。今回は、京都の街中にある公園から、つながりの輪を広げているみなさんを取材しました。
京都市の「Park-UP事業」を活用して、サポート団体の支援を受けながらイベントなどの取組を行っているみなさん。今回が第3回となるイベント「錦の天神さんまつり」の様子と公園での取り組みについて、レポーター初挑戦の田中優衣さんがお届けします。
京都市のPark-UP事業については、こちらの記事でご紹介しています!
京都の中心部にある新京極公園
京都市中京区中之町にある新京極公園(しんきょうごくこうえん)。京都市の中心部、四条河原町の交差点から徒歩2〜3分、新京極商店街から少し入った場所にある公園で、腰掛けられるベンチやイスがあるため、観光客のほか買い物や食事を楽しむ地元の人たちで賑わっています。また地域の人から「錦の天神さん」として親しまれている錦天満宮とつながっているのも特徴です。


こちらの公園で活動するのは新京極公園愛護協力会のみなさんです。普段は、公園の清掃や清掃用具の管理、公園内での問題点の報告や話し合い、町内会などと一緒に防災訓練などに取り組んでいます。会長の小出浩孝さんをはじめ、みなさんにお話をお聞きしました。
2022年から公園愛護協力会の会長として活動されている小出さんは、新京極公園の隣にあるDIAMONDビルの取締役をされています。新京極公園のある中之町に住む人にとって、新京極公園は災害が起きた時の地域の集合場所。「まちづくりと防災はつながっている」と考え、公園を起点にまちの人がつながるための活動をされています。

参加者は毎回50人!防災訓練で顔の見える関係づくり
地域に住んでいる人の暮らしと安全を守るため、春と秋を中心に年に2~3回、新京極公園愛護協力会も協力し防災訓練と講習会を行っています。周辺に住んでいる人や、商店街の店主やスタッフらが参加し、各回の参加人数は50名程度!内容の濃いものができている実感があるそうです。
何か起きた時、顔の見える関係性になっておくことが大切だと考え、新京極公園がある商店街だけでなく、近隣の商店街にも輪を広げていけるように活動されているとのこと。繰り返し訓練することが重要であり、今後は年に4回の開催を目指しているそうです。
「ここに行けば、誰かがいて何とかなるだろうと言えるような公園になってきていますね」と小出さんはお話してくださいました。
京都市のPark-UP事業で「つながる公園」へ
違法駐輪やごみ問題など、かつては治安の悪さが目立った新京極公園ですが、街のみなさんの手によって、少しずつ改善されてきているといいます。日本たばこ産業株式会社京都支社の協力により公園の奥に喫煙所を移動したり、違法駐輪の片付けや毎日のごみの回収といった行政の取組もあり、夜間の治安問題はまだまだあるものの、日中は観光客やお買い物中の人が一休みできる場所になってきたようです。
治安問題のほかに、自治会の参加者が高齢化していることや、近隣の商店街も含めて一緒に取り組む人が少ないといった課題もあるそうです。
公園の運営の仕組みをしっかりと整え、地域に愛着を持ち関わってくれる若い世代を増やしていくこと、商店街の垣根を超えて協力できる関係をつくっていくことを目指していきたいと考えておられる小出さん。
行政からのサポートと周辺企業の協賛だけに頼っているのではなく、地域の未来のために、自力で運営できるだけの資金を生み出し、周辺地域の皆さんに還元できるような運営が目標であることをお話してくださいました。そこでPark-UP事業に挑戦することに。「つながる公園」をテーマに活動を始められました。
公園運営委員会設立に向けStart-UPチャレンジ実施中
まずは公園運営委員会を立ち上げることを目標に、Start-UP チャレンジを利用して、多くの人に関わってもらえるようなイベントを実験的に開催しています。イベントは、実行委員会が中心となり、お隣の錦天満宮との共催で「錦の天神さんまつり」を春と秋の例大祭に合わせて開催しています。
2024年5月の第1回に続き、11月に開催した第2回目からは、サポート団体であるmysamが参加し、出店者の誘致や出店料の回収、音響や備品の手配といったイベントサポートなどを担っているそう。自分たちだけでは不慣れで難しいことも、専門家のサポートが受けられるのは助かりますね。
現在は、新京極公園愛護協力会、mysamで構成された錦の天神さんまつり実行委員会と町内会や周辺のテナントが協力し錦の天神さんまつりをつくっています。
錦の天神さんまつりはInstagramの運用もしています。ぜひご覧ください!

錦天満宮と協力し盛り上がる天神さんまつり
mysamとともに、錦の天神さんまつりを盛り上げるのは錦天満宮の宮司である新田雅美さんです。新京極公園愛護協力会のメンバーでもある新田さんは2020年に京都に戻られ錦天満宮を継がれました。
錦天満宮を通じて、人同士、商店街同士がつながっていくことを強く願っていることをお話してくださった新田さん。宮司として壁をなくし、「つなげること」が自分の使命であるという考えで、精力的に活動されています。

錦の天神さんまつりのテーマは「水」。水の都である京都のことや、錦市場の発展に欠かせなかった地下水に錦天満宮で触れられることを、公園でも発信することで、遊びに来る方が知るきっかけになれば良いなという思いから決定されたそうです。
一般的な縁日ではなく、水の大切さを発信することや関わる人の学びも重視しているお祭りのため、出店者は、新田さんやmysamのつながりを中心に、親和性のある方をお誘いして決めているとのこと。
今回の開催で3回目。「回数を重ねるたびにランクアップしていってるなというような。上手く運営できるようになっていってるんかな、という感覚がありますね」と話してくださった小出さん。より良くなってきている実感を持っていることをお話してくださいました。
多様な人がまじり合いつくる天神さんまつり
お祭りは2日間。周辺のテナントをはじめ、京都産業大学や龍谷大学の学生がゼミ活動の一環として出店されていました。
公園の中央部では、ミュージックライブや京都大学落語研究会による落語の出張寄席、漫才を披露する学生達が来場者を笑顔にさせていました。
また運営のお手伝いをしている京都精華大学の学生がお神酒のふるまいを行ったり、だるまの絵付けワークショップに取り組んだりと、多くの人でお祭りを盛り上げていました。
お祭り2日目の5月25日には獅子舞が新京極商店街と寺町商店街を練り歩く「お練り」が行われました。公園ではお練り歩きから帰ってきた獅子舞との写真撮影が大人気!

変わっていく新京極公園
第1回目のお祭りを開催する際に近隣の小学校に案内したところ、これまでの新京極公園は治安の問題があったため、子どもだけで遊びに行くのは危ないのではないかと校長先生に心配されたそう。最初は学校から「必ず親子で行くこと」と、保護者と子どもたちに伝えられたといいます。
今回のお祭りでは、多くの子どもたちが公園で縁日を楽しむ姿が見られました。「昔は多くの課題があったことを想像できないくらい、よくなって、入りやすい公園になってきていますね」と新田さんがこれまでの活動の手応えをお話してくれました。
錦の天神さんまつりを始めてから約1年。この1年の間でも、新京極公園は大きく変わってきていることを実感できるエピソードですね。
2027年に錦天満宮では25年に一度の萬燈会大祭が行われます。天神さんまつりの日は公園と神社をつなげる裏門を解放していましたが、普段は治安の問題で、裏門を閉じられています。新田さんは萬燈会大祭が開催される2年の間に、裏門を日常的に開けられるようにしたいと思ってるそうです。
小出さんも「萬燈会大祭が行われる2年後までに、天神さんまつりも何回かあると思うんでね、それまでにピタっとはまるような公園運営委員会のメンバーを構成できたらええかなと思っていますね」と考えていることをお話してくれました。
さらに公園運営委員会の学生部会のような形をつくることで、将来的に学生たちがメンバーの一員として、運営に関わってくれるようになってほしいという思いも。
「若い力なくしてこの先はない。この地域に愛着を持っていつか帰ってきてくれる人をつくらなあかんと思っています。まずは天神さんまつりという場で、大学の授業のひとつとして公園での活動に取り組んでくれるようになるといいなと思ってるんです」とお話していました。
普段から、錦天満宮でアルバイトをしている学生と関わっている新田さんは「学生のアイデアは本当にすごい。感心する!」と大きな期待を寄せておられました。
「責任取るのは僕らがやるから、学生ならではのとんでもないアイデアを出してお祭りをつくってみてほしい」とお二人が強い思いを持っていることを教えてくれました。

今後は錦の天神さんまつり以外にも色々な取り組みに挑戦したいと思っているそうです。
これからもますます盛り上がり、つながっていく新京極公園が楽しみです!
【基本情報】
団体名 | 新京極公園愛護協力会 |
公園名 | 新京極公園 (京都市中京区) |
面積 | 1,009 m2 |
基本的な活動日 | 週5日 |
活動内容 | ゴミ拾い、管理 |
会の会員数 | 5名 |