大阪公立大学の大学院生が、大阪市の公園愛護会の皆さんの活動を取材し紹介する「大阪となりの公園愛護会」。公園の利活用やランドスケープ設計を学び研究する大学院生の視点で、公園ボランティア活動を紹介します。
今回は、大阪市中央区の東横堀(ひがしよこぼり)緑道愛護会。日々の愛護会活動だけでなく、イベント開催や社会実験など水辺の利活用のために多岐に渡る活動をしている皆さんです。
大阪都心にある東横堀緑道
大阪の都心を流れる東横堀川沿いに細長く伸びる東横堀緑道。この東横堀川は、大阪城の外濠として開削された大阪市内に現存する最古の堀川で、深い歴史があります。近年は『東横堀川水辺再生協議会(e-よこ会)』が水辺の環境美化やにぎわいづくり等に取り組み、地域の人々の水辺への関心が高まっているエリアです。
東横堀川水辺再生協議会(e-よこ会)の日々の活動は、ホームページやInstagramで発信されています。ビルが立ち並ぶ都心でありながらも、水辺のうるおいを感じられる魅力的な空間となっており、水都大阪のプロジェクトとしても紹介されています。
取材当日も、水辺を眺めながら散歩している様子や、ベンチでくつろぐ人が見られました。さらに水上では、テーブルを出してピクニックをしている人がいるなど、素敵な水辺ライフを満喫している様子が見られました。
今回お伺いしたのは、東横堀緑道愛護会が毎週活動している日曜日。東横堀緑道愛護会は、「東横堀川水辺再生協議会(e-よこ会)」のメンバーが“お掃除クラブ”として、活動しています。会長の澁谷善雄さんをはじめ、同じく活動に参加した福原さん、廣井さん、山口さん、上野さん、筒井さんにお話をお聞きしました。
東横堀緑道の夏の風物詩「ひまわり」
東横堀緑道愛護会では、1年を通して緑道のごみ拾いなどの清掃活動を行っていますが、夏の象徴的な活動はひまわりのお世話です。数年前から夏は、花壇にひまわりを植えるのが恒例だそうで、なんと120株も植えられています。毎年夏の終わりごろに種を収穫し、次の年に苗にして、再び花壇に植える。このサイクルを毎年、繰り返しているそうです。
毎夏、背の低い花ではなく、背丈の高いひまわりを植えるのには理由があります。それは、あえて周囲よりも目立たせることで、「緑道の外を歩いている人にも見てもらい、水辺に興味を持ってほしい」という想いを込めているからだそうです。実は私も、インタビュー前に歩いているときに、目に留まって写真を撮りました。
メンバーの皆さんは、「ひまわり畑に行けばたくさん見られるけれども、このようなビジネス街でひまわりを楽しめるのが良いんです」と語ってくださいました。毎年夏は、私と同じように緑道を通る際に、写真を撮っていく地域の方々がたくさんいるようです。東横堀緑道の夏の風物詩として、定着しつつあるかもしれませんね。
一方で、ひまわりを育てることの難しさもあると言います。数年前の大きな台風では、多くのひまわりが折れてしまったことがあるそうです。また花壇の水はけが良く、2日間水やりをしないだけでも、しおれてしまうのだとか。そのため、水やりは毎日のように欠かさず、土深くまで染み込むほど多めにするのが立派に育てるためのコツだと教えてくださいました。
そんな水やりの負担を軽減できるコツも教えていただきました。水やりのホースを保管している倉庫から水栓まで少し距離があるため、かつては重いホースリールを水栓まで運ぶのに苦労したとのこと。そこで、ホースリールの水栓側をつぎ線して、水栓までホースでつなぐことで、水栓まで運ぶ必要がなくなり、水やりの大幅な負担軽減になったそうです。
好きなときに来れる、“ユルい”活動スタイル
この日はひまわりの水やりが終わった後、東横堀緑道内にあるβ本町橋(ベータ本町橋)でお話を伺いました。β本町橋は2021年に完成し、東横堀川の水辺の活動拠点になっているそうです。
活動は毎月14日8:30~9:00と、毎週日曜日10:00~11:00に行っています。
毎月14日は、3つのエリアに分かれて、地元の企業や近くにお住いの方々と一緒にごみ拾い等の清掃活動をしているそうです。エリアを分けてのお掃除には、細長い緑道ならではの負担を軽減する工夫が感じられます。
一方、毎週日曜日は、特にやることを決めておらず、まずは集まっておしゃべりするとのこと。そこでいつも、人数や状況に応じて、除草や花壇のお手入れ等のやることを決めるそうです。
東横堀緑道愛護会の活動の特徴は、完全な自由参加なところ。いつも誰が来るかわからないくらい自由です。それでも、「いつ来ても、必ず誰かがいる」と皆さんは言います。こうして毎週日曜日は、3~10人のメンバーが参加するそうです。自分の好きなときに来られる活動形態が、多くの人が気軽に参加できる秘訣だと教えてくださいました。しかし、この“ユルい”活動スタイルが故に、活動日をうっかり忘れてしまうこともあるのだとか…(笑)
活動が終わると、いつもお茶しながら、水辺をより良くするための話やメンバーの近況報告をそれぞれが好きなだけおしゃべりするそうです。取材の日も、地域の話題で盛り上がりました。皆さんは本当に仲が良く、話が尽きません。
それもそのはず、一番にメンバー間のコミュニケーションを大事にしているとのこと。
実際に、様々な背景の人と話すことが楽しくて活動に参加しているという方や、人とおしゃべりすることでパワーをもらえるという方もいらっしゃいました。
地域の人々を活動に巻き込んでいく力
東横堀緑道愛護会の活動に参加している人は、地域住民の方々の飛び入り参加が多いのだとか。メンバーの募集は一度もしたことがないと言います。
参加のきっかけとしては、東横堀川水辺再生協議会(e-よこ会)が開催する街歩きなどのイベントで、興味を持ってくれるとのこと。実はここには、工夫が凝らされています。イベントの前には、簡単に緑道の掃除を一緒にするそうです。これにより、イベントが一過性のものではなく、緑道に愛着をもってもらうことにつながり、活動メンバーの輪が広がるとのことでした。
他には、ただ緑道を歩いている面識のない親子に声をかけて、花の植え替えを手伝ってもらったこともあるとか。私はそんな地域の方々を活動に巻き込んでいく皆さんの力に、インタビュー中は終始、感心していました。
澁谷会長は、「活動に参加していない人が興味を持ってくれたとしても、僕たちに声はかけにくいと思う。こちらから声をかけてあげることが大事です」と、地域の人を巻き込んで聞くための秘訣を語ってくださいました。
みんなで思い描く東横堀緑道のビジョン
整備されてから40年ほど経過した東横堀緑道。皆さんの口からは「歴史の深さ」「都心で貴重なうるおいを感じられるところ」「高架で西日が遮られること」など、東横堀川の水辺の良さをたくさん語っていただきました。
一方で、現在も閉鎖されて通れない空間もあり、川の片側のみの緑道の整備に留まっている部分が多くあるそうです。メンバーの皆さんは、将来は“連続して川の両岸を心地よく、安全に歩けるようにしたい”という共通のビジョンを持っています。その実現に向けて、コミュニケーションの集まりをもって、愛護会の活動もしているといいます。
中でも印象に残ったのが、メンバーの方々が発した「お客さん」という言葉。この言葉からは、自分たちが愛する水辺をどう見せるか、どう変えていきたいか、といったおもてなしの心や熱い想いが感じられました。また「地域の方々が花壇の花の写真を撮る姿や、子どもたちが遊ぶ姿を見ることが活動のやりがいになります。」といった言葉からも、もてなす人としての意識を感じました。
インタビューを終えて
インタビューを通じて感じた東横堀川の水辺に対する皆さんの愛。そして、将来への共通したビジョンを持っていることが、活動のモチベーションにつながっていると感じました。
また、夏にはひまわりを植えて、緑道を目立たせていること。あえて活動を“ユルく”して、気軽に参加できる人を増やしていること。そして、興味を持ってくれた人には自ら声をかけて、活動の仲間を増やしていくこと。これらは全て、「より多くの人に東横堀川の水辺の魅力を知ってほしい」という皆さんのおもてなしの精神が原点になっていると感じました。
こんなエネルギッシュで明るい皆さんが、今後も東横堀川の水辺の魅力を広げ、水辺を進化させていく未来から目が離せません。
【基本情報】
団体名 | 東横堀緑道愛護会 |
公園名 | 東横堀緑道 (大阪市中央区) |
面積 | 12,272 m2 |
基本的な活動日 | 毎月14日8:30~9:00、毎週日曜日10:00~11:00いつもの活動参加人数 |
いつもの活動参加人数 | 3~10人 |
会の会員数 | 約50人 |
活動内容 | ごみ拾い、除草、落ち葉かき、低木の管理、花壇の管理、植物の水やり、施設の破損連絡、愛護会活動のPR、地域のイベント、子ども向けイベント、他団体と連携したイベント |
設立時期 | 2007年6月 |
主な参加者 | 子ども、若者、子育て世代、アクティブシニア、地元企業 |
活動に参加したい場合は? | 活動日にぜひ来てください!! |