大阪公立大学の学生が、大阪市の公園愛護会の皆さんの活動を紹介する「大阪となりの公園愛護会」。公園の利活用やランドスケープ設計を学び研究する学生の視点で、公園ボランティア活動を紹介します。
今回取材に訪れたのは、大阪市中央区の寺山公園(てらやまこうえん)。普段の清掃活動にお邪魔して、お話を聞かせていただきました。
日当たりが良く、落ち着いて過ごせる寺山公園
寺山公園は大阪城公園から少し南の、上町という閑静な住宅街に位置する、2000㎡ほどの街区公園です。隣接する高層マンションや近隣にお住まいの方が利用されるそうで、この日も活動中に訪れる方がいらっしゃいました。園内は見通しが良く、複数の遊具や砂場、ベンチがあり、子どもから大人までがそれぞれの過ごし方をできる環境です。

寺山公園でつながりひろがる地域の輪
こちらの公園で愛護会活動を行っているのは、寺山公園愛護会の皆さんです。30年以上活動を続けてこられた愛護会会長の真鍋明敬さんにお話を伺いました。

寺山公園は散歩コースとして利用する方や犬を連れた方が多く、隣接する新しいマンションの住民もよく訪れます。マンションはまだ完成して新しく、町会に加入していない方もいらっしゃいますが、その子どもたちも愛護会の活動に参加することがあるそうです。こうした新しい住民の方々が地域とつながるきっかけになればという思いで、愛護会は活動を続けています。また、地域との関わりとして小学校の子どもたちと年に1回近所のお掃除を一緒にする機会があり、活動に興味を持つきっかけ作りとなっています。
寺山公園愛護会は30年以上の歴史を持ちます。設立当初は府営寺山住宅の住民が中心でしたが、十数年前に真鍋さんが活動を引き継ぎました。かつて寺山町と呼ばれたこの地域は現在上町に変わり、寺山住宅も建て替えを機に上町住宅に名称を改められたため、『寺山』という名前を知る人は少なくなりました。しかし、公園や愛護会、近隣の寺山子安地蔵がその名を今に残しています。
寺山公園愛護会では、役員の方を中心として毎月第2日曜日に清掃活動を行っています。地域に向けて開かれており、近隣住民なら誰でも参加できます。加えて、町会と協力して年4回の大規模清掃も実施しています。取材当日は大規模清掃の日で、多くの住民の方が汗を流していました。
日を決めた活動だけでなく、個人での取り組みも欠かせません。花壇の手入れやごみ拾いは普段から行われており、ひまわりを育てる「ふれあい花壇」の担当の方など、毎日公園に通ってお世話をされている方も何人もいらっしゃいます。
活動で工夫している点やこだわりを伺うと、真鍋さんは「特にないね」と笑います。しかし、その言葉の裏には、長く続けてきた経験から培われたさまざまな工夫があります。こうして多くの人が自然と集まる活動になったのも、真鍋さんが長年続けてこられた努力の結果ですね!
若い世代の参加が支える活気
寺山公園愛護会の特徴は、参加する世代の幅広さにあります。
「近所の他の公園では高齢者が多いところもありますが、うちは子育て世代や若い家族連れが多いんです。だから活動に活気がありますね」と真鍋さんは語ります。実際、取材中も、子どもたちが大人に声を掛けられながらお掃除に取り組む姿が見られ、参加者同士の交流が世代を超えて自然に行われていることが感じられました。

最も大事なのは子どもの安全
最後にこれだけは伝えたいということを伺うと、真鍋さんは「子どもの安全を守ることが一番です」とはっきり話してくださいました。公園のお手入れをするときは、垣根を整えて外から見通しを良くすることで、不審なことが起きにくい環境づくりを意識しているそうです。そこに手を加えるだけでも公園の雰囲気は大きく変わります。
このような心掛けひとつで、公園の環境は大きく変わるんですね!安心で気持ちいい公園づくりのヒントを教えてもらいました。

手前は低く奥は高く…花壇担当さんのひと工夫!
寺山公園には3か所の花壇があり、6名ほどで分担して責任をもって管理しています。花壇のお世話をする際に公園内で見つけたごみを少し拾って帰るといった小さな日々の努力が、花壇だけでなく公園全体を美しく保つ力になっています。
この日は、ふれあい花壇でひまわりのお世話をされている方にお話を伺いました。町会や公園事務所への申請を経て、自分の区画を管理なさっています。花壇の手入れは毎日行われ、水やりや雑草取り、ごみ拾いなどをこまめに行うことで、美しい景観を維持しています。
ひまわりは、道路側は見通しを遮ったり倒れたりしないよう背の低い種を、公園の奥側では背の高い種を選んで植えています。たくさんあるひまわりの、どんな種を花壇のどこに植えるかは、ホームセンターに行って考えておられるそうです!
猛暑の時期は花も人も大変で、ひまわりの高さが思うように伸びなかったり苦労することも。活動は夏場は特に早朝や午前中に行い、約30分から1時間で切り上げることが多いそうです。
ふれあい花壇の管理は単なる作業にとどまらず、地域の子どもたちや住民との交流の場にもなっているようです。「普段、子どもたちは高齢者や見知らぬ人と話す機会が少ないのですが、『花壇のおばちゃんやったら話しても大丈夫やろう』ということで、公園で会うと子どもたちと自然にふれあうことができます」と話してくださいました。マンションの若い住民の方々や子どもたちも、この時間を楽しみにしているそうです。
花壇の管理は公園の美化だけでなく、普段ならあまり関わる機会が少ない地域の人々との交流の場としての役割も果たしており、その大切さが改めて印象に残りました。



寺山公園を飛び出して、大阪城公園で活躍するご家族も
次にお話を伺ったのは、ご近所にお住まいの、ご家族で参加されていた方々です。この地域に引っ越してきた際、郵便ボックスに入っていた回覧板で公園での活動を知り、興味を持って参加するようになったそうです。
「できる範囲で参加しています」と笑顔で語ってくださいました。作業後には、ジュースがもらえることもあり、子どもたちが楽しみにしている理由のひとつだそうです。お子さんに掃除はどうですか?と聞いてみると、元気に「楽しい!」と返事をしてくれました!
さらに、このご家族は寺山公園の活動だけでなく、毎月第3日曜日に大阪城公園で清掃を行うボランティア団体「大阪城赤備隊(あかぞなえたい)」の活動にも参加されています。ここでは手作りの甲冑を身にまとって清掃するため、まるで歴史祭りのような雰囲気の中で作業を楽しんでいるそうです。こうした活動を通じて、普段関わる機会が少ない地域や他の団体の活動にも自然と参加するようになり、地域の活動全体を支える存在になっていることが伝わってきますね。

草抜きや溝掃除、気持ちよく使える公園にするためには欠かせない役割
雑草が良く伸びるこの季節、草抜きを担当している方は多くいらっしゃいました。草抜きは複数箇所で分担して行われます。汗を流しながら草抜きをされていた方は、「今日は普段よりも参加者が多い方だが、それに負けないくらい草が多い」と話してくださいました。参加者はその時々で変わりますが、特に草の伸びる時期や落ち葉の多い時期は作業が大変だそう。「草はすぐに伸びてくるので、落ち葉の時期と同じくらい苦労します」と笑いながらも、季節ごとの作業の大変さを語ってくださいました。
一方で、ごみ問題は依然として課題です。タバコの吸い殻などが落ちており、自動販売機のごみ箱はありますが数も限られているため、日々の清掃で対応しています。「決して多くはないけれど、子どもの砂場のおもちゃなどが置き去りにされることはあります」と話し、利用マナーの大切さにも触れておられました。活動を通じて少しでも公園をきれいに保ち、心地よい空間にしたいという思いが伝わってきます。

溝掃除をされていた方にもお話を伺いました。誰がどの部分を掃除するかの分担は厳密に決められてはいないものの、自然と担当が分かれていて、数名で進めているとのことでした。こちらもごみについて伺うと、「ポイ捨てはどこにでもありますね。こんなところまで入り込むのかと驚くこともあります」と答えてくださいました。
この方は、活動に参加したきっかけは町内会からの案内で、昨年から加わったとのことです。しかし、もともと清掃には長く携わってきたと語ります。やはりどの公園でも、愛護会として活動を始める前から個人的に清掃を続けてきた方は多いのですね。
草抜きや溝掃除は地道で大変な作業ですが、公園を清潔で気持ちよく使える場所に保つために欠かせないものです。皆さんのお話からは、地域の人々が協力し合いながら公園を守っている姿勢が強く伝わってきました。

おばあちゃんと一緒に、楽しみながら
次にお話を伺ったのは、おばあちゃんとお孫さん2人の3人で清掃活動に参加されているご家族。おばあちゃんは「もう40年ほど前から公園の清掃に参加しています」と話し、地域の活動を長く支えてこられたことが伝わってきます。町ごとに続く活動の流れの中で自然に参加を重ねられています。「膝を悪くしてしばらく休んでいましたが、今日また挑戦してみました。動いてみると大丈夫で安心しました」と笑顔を見せてくださいました。
一緒に参加していたお孫さんたちは「おばあちゃんに連れてきてもらった」と話します。普段は別の場所で遊ぶことが多いそうですが、この日はおばあちゃんと一緒に作業に取り組み、公園での時間を楽しんでいました。清掃活動の場ではおばあちゃんだけでなく、他の高齢者や大人とも自然に会話が生まれ、また同世代の子どもたちとも一緒に過ごすことでより仲良くなる機会にもなっているようです。
長年活動を続けてきた世代と、その姿を見て自然に参加する若い世代が共に、公園清掃を世代を超えた活動の場として活かしています。単なる美化活動にとどまらず、地域の暮らしの中で大切なつながりを育む場になっていることが強く感じられました。


これからがますます楽しみな愛護会活動
この日は大規模清掃の日で、20名以上の方が集まりました。こうして多くの人が一緒に語り合いながら活動する姿を見て、愛護会の活動が日常に溶け込み、自然と親しみやすいコミュニティとして育まれている様子がよく分かりました。真鍋さんをはじめとする皆さんの長年の努力によって、幅広い世代が自然に集まり、一緒に汗を流しながら活動する姿が生まれています。特に、子育て世代や若い家族の参加が活動に活気を与え、これからも公園愛護会の活動が衰えることなく、むしろより盛んになっていくのではないでしょうか。

最も印象的だったのは、活動の中で、子どもを中心として世代を超えた交流が自然に生まれていることです。大人や高齢者から声をかけられたり、同世代の子ども同士で仲を深めたりする場面が見られ、公園が単なる遊び場にとどまらず、学びや出会いの場としても機能していること、活動が子どもを常に気にかけ、受け入れる雰囲気であることを実感しました。
こうした姿を目にして、日常的な公園管理の活動が、地域の安心感や人と人との関わりを形づくる大きな力になっていることを強く感じました。地域の大切な財産である寺山公園での活動は、今後も地域のつながりを育み、ますます活気のあるコミュニティとして発展していくことでしょう。寺山公園愛護会の皆様、ありがとうございました!
【基本情報】
団体名 | 寺山公園愛護会 |
公園名 | 寺山公園 (大阪市中央区) |
面積 | 2,019 m2 |
基本的な活動日 | 毎月第2日曜 9:00-10:00 (前後する場合あり) |
いつもの活動参加人数 | 数人~30人程度 |
活動内容 | ごみ拾い、草抜き、落ち葉かき、ふれあい花壇、低木の管理 |
設立時期 | 30年以上前 |
主な参加者 | 近隣にお住まいの方々、子育て世代、子ども |
活動に参加したい場合は | 活動日にお越しください |