2024/11/14

公園でりんごやみかんを育て、みんなで食べる収穫祭

宇喜田南児童遊園(江戸川区)

さまざまな公園ボランティア活動を紹介する「となりの公園愛護会」。今回は、公園で30年以上にわたって実のなる木を育てて地域で楽しんでいる、こちらのみなさんです。公園で行われた10月の実のなる木収穫祭にお伺いしました。

りんご・みかん・柿もいっぱい、実のなる木公園

東京都江戸川区にある宇喜田南児童遊園(うきたみなみじどうゆうえん)。都営新宿線 船堀駅と東京メトロ東西線 西葛西駅とのちょうど中間あたりにある街区公園です。すぐそばには区立第五葛西小学校や保育園・こども園・インターナショナルスクールなどがあり、行船公園や宇喜田公園といった大きな公園も近く、企業やお店・団地・戸建て住宅が立ち並ぶエリアにあります。

グラウンドと芝生広場を中心とした公園内の一角には、りんごやみかん・柿などの果樹が植えられた実のなる木エリアがあります。このため地元では「実のなる木公園」として親しまれています。実のなる木エリアは、普段はフェンスで囲われ施錠されており、お手入れ作業の日や収穫祭の時のみ開放されます。

実のなる木エリアの外にも、柿、桑、グミ、ヤマモモ、ビワ、ブルーベリーなどの木があるそうで、まさに実のなる木公園、ワクワクします!

(左手のフェンスの中が実のなる木エリア、芝生広場の奥には野球のできるグラウンドがあります)

こちらの実のなる木公園でボランティア活動をされているのは「宇喜田南児童遊園 実のなる木を育てる会」の皆さんです。実のなる木を育てる会は、公園に隣接する宇喜田第二住宅の自治会を主体に、第五葛西小学校、PTA、宇喜田めぐみ葛西幼稚園、少年野球チームブルーシャークスの皆さんで構成されていて、江戸川区環境部水とみどりの課と連携を取りながら、果樹の剪定や施肥などのお手入れ作業、草刈りなどの維持管理を行っています。

10月最後の土曜日、実のなる木公園の収穫祭が行われました。自治会の方、小学生、少年野球チームのほか、小さな親子連れなどご近所の様々な年代の方が参加。国籍も様々で、笑顔とともにいろいろな言葉が交わされています。

実のなる木を育てる会の主体である宇喜田第二住宅自治会 会長の竹内清二さん、事務局の吉原正夫さん、第五葛西小学校 校長の田中雅生先生、江戸川区環境部水とみどりの課 みどりサービス第二係 係長の植松丈詞さんをはじめ、皆さんにお話をお聞きしました。

(左から事務局の吉原さん、江戸川区の植松さん、会長の竹内さん、五葛西小の田中校長)

地域での実のなる木育てを区役所もバックアップ

宇喜田南児童遊園に実のなる木エリアができたのは、34年前。江戸川区では、かつて下水が流れていたドブ川を親水公園として再整備するなど、歴代の区長が子どもや人々の住みやすい緑のまちづくりを進めてきたという背景がありました。そんな中、ここ宇喜田南児童遊園では1990年に公園内に実のなる木広場を作ることになったそう。

早速その年の10月から自治会が中心となって「育てる準備会」を発足。そこから、小学校や保育園・幼稚園・公園を利用する少年野球チームと一緒に「実のなる木を育てる会」を結成して活動してきたことを教えてくださいました。

実のなる木を育てる会の活動は、年間スケジュールで管理されています。剪定、施肥、水やり、受粉、摘果に草刈りと盛りだくさん。剪定は、江戸川造園緑化協会や果樹の専門家 大坪孝之先生のアドバイスを受けながら実施。施肥は、木の周りを掘り起こして肥料をあげるなど、かなりハードワーク。こちらもハードな草刈りは、小学校やPTAとも協力したり、夏場の水やりは少年野球チームも活躍しているそうです。

できるだけ地域の人々が主体的に活動できるよう区役所もバックアップしています。日常のお世話も収穫物を分けることも、基本は地域におまかせというスタンスで、必要なサポートをしながら協働しています。

水とみどりの課の植松さんは、「このようにたくさんの果樹を地域の人で育てているのはめずらしいのではないでしょうか。江戸川区の公園を区民のみなさんに『地域の庭』としてどんどん使ってもらいたいですね。」と話してくださいました。

(ヒメリンゴもたわわに実っていました)

いざ、収穫祭!

実のなる木収穫祭は、毎年10月に開催しています。「みんなで育ててきた公園なので、みんなで体験して、みんなで食べてもらえたら」という思いで、地域の収穫祭は果物が一番実っている週末に。そのほかにも小学校や幼稚園の子どもたちの収穫祭も行っているそう。

この日は、朝10時の収穫祭スタートに合わせて、地域の人たちや子どもたちが集まってきました。みなさんの挨拶のあと、ハサミを借りて、いざ収穫の時です!

(会長竹内さんのお話では、30周年記念で植えた夏みかんが今年初めて実をつけたという嬉しいニュースも!)
(みかんを収穫!学校ではつい先日5年生がりんごの収穫をしたそうです)
(ハロウィンのかわいい仮装で、こちらもみかんを収穫中!)
(柿は高枝切りバサミでカットしたら、下の人がキャッチ!のナイスな連携プレーで上手に収穫)
(少年野球チームの選手たちも練習のあと収穫祭に参加!)

収穫祭では、果物の収穫体験ができるほか、実のなる木公園で採れた柿、その柿やりんごを使ったフルーツポンチも振る舞われました。フルーツポンチづくりは今年初めての試みだそうですが、子ども会の皆さんが担当。親子で地域活動に参加する姿も素敵です。

かつては、豚汁や焼きそばなどを振る舞っていたこともあるとのこと。夏祭りとともに自治会の大イベントとして30年以上続けられているお話も聞かせてくださいました。

(大鍋でフルーツポンチを振る舞うみなさん、おいしくて大好評でした!)

小学生の学びの場としても大活躍

第五葛西小学校では、5年生の総合の学習の時間に、実のなる木公園での活動をされているそう。この実のなる木を地域の人たちと一緒に育てる活動は、環境やSDGsを学ぶ5年生の学習にピッタリだと校長の田中先生が教えてくださいました。

去年に続いて今年も、年間を通して実のなる木育てに関わっているそうで、収穫祭に参加していた5年生の子も「この前も授業で来たよ!」という話をしてくれました。草刈りや、木の幹の周りを掘って肥料を入れるというハードなお世話作業を一緒に行うほか、大きくて美味しい果実が育つよう、つきすぎた果実を適度に摘み取る「摘果」や果実への袋がけの作業も一緒に行っているそう。

摘果で摘み取ったまだ小さくて青いりんごを、捨てずに有効活用して、ジャムを作ってみようという授業もあったそう。その時には、自治会婦人部の新山孔さんがジャムづくりの先生として5年生の授業に出向いて行かれたり、カゴいっぱいの摘果りんごで作ったジャムを届けたり、というお話もお聞きしました。

自主的にポスターを作って実のなる木公園や育てる会の紹介をした年があったり、みかんが豊作の年は全校生徒の給食で振る舞われたり、地域とのつながりがあってこそできる体験的な学びの機会がたくさんあるのは素敵です。

地域みんなで守り育てる実のなる木公園

30年以上続く、公園での果樹育て。ここでは、団地の自治会を中心とした地域の人々の熱心なお世話と、小学校や幼稚園・公園を利用する少年野球チームなど子どもを中心に親や先生も含む多世代の関わり、行政のバックアップがあって、成り立っていることを感じました。

収穫祭の前に果物が盗られてしまうという残念なこともあるそうですが、地域の人々の思いと行動の積み重ねで、収穫の喜びを分かち合える場を、30年以上の長きにわたって守っていらっしゃるのは本当に素晴らしいことです。

「子どもたちに”ふるさと”とよべる団地を」「お年寄りが安心して暮らせる団地に」「みんなの力で住みよい団地に」という会長 竹内さんのお名刺にある言葉が、まさに体現されているような収穫祭の風景でした。

(実のなる木伝言板:この言葉も会長 竹内さん作!)
(多世代&多国籍、和気あいあいの収穫祭)
(これは渋柿。干し柿にすると甘くてとっても美味しいそうです!)
(芝生広場:大きな桜の木が2本あって、お花見の時期も賑わいそう)
(グラウンド:周囲にフェンスがあってボール遊びに最適です)

【基本情報】

団体名宇喜田南児童遊園 実のなる木を育てる会
公園名宇喜田南児童遊園(江戸川区)
面積6,549 m2
基本的な活動日年間計画で活動
いつもの参加人数15名ほど
活動内容実のなる木エリアのゴミ拾い、除草、果樹の剪定や管理、水やり、地域のイベント
設立時期1990年
主な参加者自治会のみなさん、小学生、少年野球チーム、幼稚園、PTAなど
取材・執筆
取材・執筆
椛田 里佳 代表理事

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフト。夫を難病で亡くし、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフト。夫を難病で亡くし、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

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