2024/7/11

公園をつくろう!と声をあげ、みんなで作ってきた公園

なかよし公園(富士見市)

各地の公園ボランティア活動を紹介する「となりの公園愛護会」。今回は、地域に公園がほしい!と声をあげるところからスタートし、みんなで力を合わせて地域密着の温かい公園づくりをしてきた、こちらの皆さんです。

「推しの公園を育てる!」特別割引クーポンのお問い合わせをくださったのがご縁で、お話を聞かせていただくことに。埼玉県の公園の取材は初めてです。梅雨入り前の6月の昼下がり、ラベンダーの香る公園に集まってくださいました。

子どもたちに遊び場を!住民の声でうまれた「なかよし公園」

埼玉県富士見市にある「なかよし公園」。東武東上線の鶴瀬駅とふじみ野駅のちょうど中間辺り、お隣のふじみ野市との市境にもほど近い住宅地にある公園です。

草の原っぱが広がり、小さな築山からすべり台がおりる姿もかわいい感じの見通しの良い公園です。また、いくつもの花壇に、さまざまな季節の花が咲いていて、明るい雰囲気の公園に彩りを添えています。

(原っぱの中の小さな築山とすべり台が可愛らしい「なかよし公園」)

こちらの公園はなんと、「子どもたちのために地域に公園がほしい!」という住民たちの声がきっかけで生まれた公園なのです。

この公園でボランティア活動をしているのは、公園設立の働きかけをし、作るところから積極的に関わってきた「ちゃんとちゃんと公園をつくる会」・「なかよし公園を育てる会」の皆さんです。代表の中澤佳珠代さん、小川光枝さん、はじめにメッセージをくださった小栗知実さんほか、メンバーの皆さんにお話をお聞きしました。富士見市役所 都市計画課の職員さんも駆けつけてくださいました。

(左から、小川さん、代表の中澤さん、広報担当の小栗さん:富士見市は住みやすいいいところなんですよ!と口々に教えてくださいました)

子どもをもつ親たちが動き出した「ちゃんとちゃんと公園をつくる会」

人口が急増した1970年代に、全国でもトップクラスの人口増加率を誇った富士見市。1年間に3つの小中学校が新設されるほど急速に住宅開発が行われた時代に開校した、旧上沢小学校(現在はつるせ台小学校に統合)。

その上沢地域には、小学校区内に公園が1つもなかったといいます。子どもたちは駐車場や道路で遊んでいるけれど、思いっきり遊べる安全な場所をつくってあげたい。そこから皆さんの活動は始まりました。

PTAから毎年出し続けていた市への要望は、何年経っても「検討中」。このままでは何も動かないのではないか。そう思った中澤さんや皆さんは、市の資料を調べたり、公民館で行われていたまちづくり講座にも参加。1999年「上沢小学校区小中学生をもつ親の会」として4696人もの署名を集め、市議会に提出しました。「公園新設のお願い」の請願書は議員全員の協力のもと、全会一致で採択されました。

ただ、公園をつくるための場所もまだありません。何もない状態からの公園新設の活動には、疑問をもつ声も一部あったようですが、「住民が動けば変わるかも」と役所の中からもバックアップがあったり、熱意を感じて協力する人が増えていったようです。

市内外の公園の見学や勉強会をしながら、より多くの人が関われるよう「ちゃんとちゃんと公園をつくる会」として活動を広げていき、春には「春風まつり」秋には「どんぐりまつり」を近所の様々な場所を借りて開催。ボランティアスタッフだけでも100人を超える人が関わり、地域の多世代が楽しめる良いイベントになりました。市長への報告や公開質問状など、活動の記録は「ニュース」を発行して地域に回覧や配布を続けていきました。

「ちゃんとちゃんと」とは、おじいちゃん、おばあちゃん、おとうちゃん、おかあちゃん、おじちゃん、おばちゃん、おにいちゃん、おねえちゃん、あかちゃん、みんなが楽しめる公園づくりを、みんなで「ちゃんと」進めてゆこうという趣旨で名付けられたとのこと。皆さんの思いがつまっています。

(地域の人向けに発行し続けた「ちゃんとちゃんと公園をつくる会ニュース」:活動報告やアンケートなど経過を追うだけでもグッときます。どんぐりのキャラクターはメンバーのお子さんが考案したそう)

活動をスタートして4年、いよいよ公園の候補地が見つかりました。もともと畑だったという土地で、公園づくりが具体的に動き出しました。2003年の秋、ついに公園がオープン。4回目の「どんぐりまつり」は、初めてあたらしい公園での開催です。公募された新公園の名前もこのおまつりの中で発表されました。

公園づくりは市と市民の協働で

こうして生まれた「なかよし公園」は、公園の整備にも地域住民が積極的に関わっています。どんな公園になったらいい?どんな遊具がほしい?花壇や低木、芝生、菜園、ビオトープなどの配置アイデアも広く募集しました。

住民たちのアイデアをもとに、遊具やベンチ・築山などの大きなところは市で整備しましたが、花壇づくりには50人ものご近所さんが参加し、子どもも一緒に花壇を掘ったり、枠のレンガを埋め込んだり、藤棚のベンチの周りに石を敷いたりといった本格的な作業も行ったそう。

タイヤの遊具は、古タイヤを引き取りに行くところから、地域のお父さんたちと一緒に穴を掘って埋め込む作業までしたことを、中澤さんと小川さんが教えてくださいました。

(タイヤの遊具を設置した当時の写真:子どもたちも嬉しそう!)

なかよし公園は借地公園のため、都市公園ではなく多目的広場等という区分ですが、小さな子からご年配の方々まで皆が利用できる、草の原っぱに季節の花がいっぱいの温かい空間になりました。

富士見市には公園ボランティア制度はないそうですが、公園をつくるところから市民が積極的に参画してきたなかよし公園では、「ちゃんとちゃんと公園をつくる会」・「なかよし公園を育てる会」の皆さんと富士見市役所の職員さんの協働でここまでのことができているようです。

せっかくできた公園を、地域のみんなで積極的に利用していこうと、住民と市役所がお互いにコミュニケーションを取りながら日々公園が守られてきたことが伝わってきます。

(あれから20年、ここで跳び箱の練習をした子どもたちは数知れず)

25年目を迎えた春と秋の恒例イベント「なかよし公園まつり」

2000年に始まった春と秋のおまつりイベントは、今年で25年目。当初は、集会所や小学校の校庭・体育館、社宅の庭など、場所を変えて行ってきましたが、公園ができてからは、名前を「なかよし公園まつり」として、今なお地域の人気イベントとして開催され続けています。

子どもみこしに、大人気のキッズダンスステージ、恒例となった手作りゲームが並ぶ遊びコーナー、フリーマーケット、模擬店、花の苗や鉢植えの販売、健康チェックコーナーなど、すべての世代が楽しめるコンテンツが盛りだくさん。地域の人たちはもちろん、市長や教育長、多くの議員、市役所職員なども訪れ、毎回とても賑わうそうです。

子どもスタッフが活躍しているのも、当初からの伝統。子どもスタッフ募集のチラシ配布や取りまとめなどは、小学校と連携しています。先生たちも当日遊びにきて、子どもたちも盛り上がっているようです。はじめの頃に子どもスタッフとして参加していた子が、今ではママになっておまつりに来てくれているという素敵なエピソードも。なかよし公園まつりが地域の人たちに長年愛され続けていることを感じます。

(これまでのなかよし公園まつりの様子:子どもたちも大人たちもみんなで楽しんでいます)

およそ200種類の花を育て、楽しみや循環づくりも

なかよし公園には、10以上の花壇があり、およそ200種類の植物が育てられています。ハーブや日本の花など、それぞれに特徴やテーマがつけられた花壇は、お花好きのメンバーの皆さんが「なかよし公園を育てる会」の活動として毎月第1木曜の午前中にお手入れをしています。

多年草や宿根草を中心に、高さも考えつくられた花壇は、できるだけ予算をかけないようにと、「なかよし公園を育てる会」のメンバーがご自宅のお庭で種から育てた苗や株分けした植物がほとんど。宿根草を根付かせるために最初は苦労されたそうです。

花壇はエリア担当制で、活動日にはそれぞれご自分の担当エリアを中心に作業をするそう。ですが、それ以外の日にもちょこちょこと様子を見にきては、追加の作業やお手入れをされているとのこと。水やりは、乾燥時期に当番を組んでみなさんで協力しながら続けていらっしゃるそうです。

(花壇はエリア担当制、担当を分けながらも協力しているからこそできること)
(時計の下は、華やかな一年草の花壇です:お花を見ると雑草抜きや花殻つみが始まります)
(手前のラベンダーがとってもいい香りでした!)

公園のラベンダーを使った講習会を行っています。(コロナ中は中止でした)

花育てに詳しいメンバーの眞子美津子さんは、国営武蔵丘陵森林公園でボランティア活動に参加したり講習会を受けて得られた知識や技術を、なかよし公園に生かされています。この日も、元気に咲くラベンダーを使って、お話をお聞きしている間に手際よくラベンダースティックをつくって、プレゼントしてくださいました。

(公園のラベンダーでラベンダースティックを作ってくださいました。とってもいい香り!実は眞子さんのお帽子にもミニサイズが飾られています)

なかよし公園では、肥料も地産地消のDIY。市内の公園で出た落ち葉を使った腐葉土づくりも行われています。シルバー人材さんなどが集めた落ち葉を、なかよし公園に運び、腐葉土化しています。

良い腐葉土になるのは、サクラ・イチョウ・マツ以外の落ち葉とのこと。20袋くらいの落ち葉を袋から出し、手作業でゴミなどを取り除いたあと、腐葉土箱に入れて、1年かけて腐葉土ができあがります。

環境にも優しく、落ち葉の運搬焼却コストや肥料購入予算の削減にもなる、素敵な地域の循環は、さまざまな人たちの協力のもとで成り立っています。

(公園の隅にある腐葉土箱:市内の公園の落ち葉で地産地消の循環をつくっています)

楽しみながらみんなでつくるなかよし公園

作業のあとは、藤棚の下でいつも小さなイスとテーブルを出してお茶タイムをするのが恒例です。

この日も、最後にお茶タイムをつくってくださいました。5リットルのウォータージャグで用意した冷たいお茶とお菓子で、おしゃべりに花が咲きます。

(お楽しみのお茶タイムは、小さなイスとテーブルでいい感じ。皆さんいい笑顔!)

「地域に公園がほしい!」という呼びかけから始まった皆さんの活動は、スタートから25年。

隣の鶴瀬西小学校と統合してつるせ台小学校になった上沢小学校の跡地は、公園になりました。子どもたちが思いっきり遊べる広さのある素敵な公園です。そこでも、「なかよし公園を育てる会」のメンバーが花育てをしています。

朝夕にはお年寄りの散歩も多く、花壇の花に心を癒され、ベンチでのひと休みを毎日の楽しみにされている方もいらっしゃるそう。休日には、虫とりあみを持った子どもたちや花の写真を撮る人など、近隣の人々に親しまれています。

(上沢小学校跡地にできた上沢公園:広場や遊具・防災設備も充実。その一角にはなかよし公園を育てる会の皆さんが出張お手入れしている花壇があります)
(上沢公園での花壇づくり活動の様子:こちらも素敵です!)

「なかよし公園まつり」もこの春には、第42回を迎えました。おまつりは地域のみんなの意見で成り立っているとのこと。「今の子どもたちにもおまつりのワクワクを体験させてあげたい。」そんな思いで続けられていること。それぞれ自分の中にある、小さい頃の楽しい体験が糧になっていることを、皆さん口々に話してくださいました。

「ちゃんとちゃんと公園をつくる会」「なかよし公園を育てる会」の皆さんはもちろん、公園づくりは、近隣の人たちの理解があってこそできていることだとおっしゃいます。

「つくった時の気持ちを忘れずに、これからも地域の人たちとともに、みんなの意見で進めていきたいです」と、笑顔で話してくださいました。

(クローバーなど複数の種類のタネを蒔いて育てた草の原っぱが気持ち良い)
(木陰で花を愛でるためにあるかのような癒されベンチ)
(なかよし公園の掲示板:「この公園は住民参加によって出来た公園です」の文字が印象的)

【基本情報】

公園名なかよし公園(富士見市)
面積1,224 m2
主な参加者地域の有志のみなさん
団体名「ちゃんとちゃんと公園をつくる会」
設立時期1999年
活動内容年2回(春・秋)のおまつり開催
団体名「なかよし公園を育てる会」
設立時期2005年
活動内容花壇の管理、低木の管理、植物の水やり、施設の破損連絡、腐葉土づくり
基本的な活動日毎月第1木曜 9:00-12:00(冬の時期は9:30-12:00)
活動に参加したい場合は公園の掲示板をご覧ください!
取材・執筆
取材・執筆
椛田 里佳 代表理事

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフト。夫を難病で亡くし、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフト。夫を難病で亡くし、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

みんなの公園愛護活動レポートに戻る