2023/4/17

四季の花を育てて増やして植物も人も賑わう公園

染井よしの桜の里公園(豊島区)

各地の公園ボランティア活動を紹介する「となりの公園愛護会」。今回は、本格的な花づくり活動で地域の人の輪を広げている、こちらの皆さんです。活動の内容が盛りだくさんで情報満載なので、前後編に分けてお届けします。

ソメイヨシノ発祥の地、染井よしの町会四季の会の皆さん

公園ボランティア実態調査アンケートでこんなコメントをいただいていました。

桜とツツジしかなかった公園が、この8年間の活動で四季それぞれの花に溢れる公園となりました。いろいろな種類のクリスマスローズを植え、苗をたくさん育て、公園に遊びに来た近隣住民に無料配布しています。近くの小学校や区民広場にも植付け作業をしました。苗を育てる力がつけば、この公園を起点にして周辺まで花のエリアを増やし、花を楽しむ人を増やしていけることを実感しました。

このほかにも、植物が育ちやすい環境づくり、土づくり、日照のこと、畑を作って子どもたちに野菜の育つ姿を見せていることや、咲いた花の鑑賞会を行っていることなど、盛りだくさんの内容をお知らせくださいました。育てた花を通して、地域の人の輪も広がっているようです。桜まつりも落ち着いた4月の活動日にお話をお伺いしました。

(ソメイヨシノをはじめ9種類の桜が次々と咲き、人々を楽しませている染井よしの桜の里公園)

東京都豊島区にある染井よしの桜の里公園(そめいよしのさくらのさとこうえん)。JR山手線の駒込駅からのんびり歩いて10分ほどの住宅街にある公園です。江戸時代に園芸の里として発達した駒込エリアの中でも、植木屋が集まって住んでいたと言われる染井通りの一帯。全国的に愛されている桜「ソメイヨシノ」の発祥の地としても知られる歴史ある地域です。

2009年に日本興銀の社宅の跡地を再利用して整備された公園は、多くの子どもたちの遊び場であると同時に、防災公園としての役割もあります。町会のお祭りなども行われ、目の前の染井稲荷神社とあわせて、地域の人の集いの場としても賑わっているようです。また隣接する広場には、染井産ソメイヨシノの桜の苗床や畑もあり、様々な花の苗づくりが行われています。

こちらの公園でボランティア活動をしているのは、染井よしの町会 環境部 四季の会の皆さんです。会長の田原正祥さん、広報担当の坂田博久さん、石田誠さんはじめ皆さんにお話をお聞きしました。

(左から広報担当の坂田さん、会長の田原さん、石田さん)

四季の花々で、あらゆる世代が楽しめる公園に

「こんなに植物のある公園は、この辺りでは他にないでしょ」と誇らしげに語る皆さん。

一年草に多年草、宿根草、球根、、植物の種類が多いのはもちろんですが、同じ植物でも色や形違いの花々が、園内のあちこちの花壇やプランターで元気に育っています。

子ども向け遊具や広場、健康遊具もある広い園内では、平日も週末も、たくさんの子どもたちが訪れ遊んでいるそうです。この日も、歩き出したばかりの小さな子、小学生の家族連れ、散歩をするご近所さん、ボール遊びや自転車の練習をする親子、虫とり網を持ってチョウチョを追いかける子など、いろいろな人が思い思いの過ごし方をして賑わっていました。

そんな賑やかな染井よしの桜の里公園ですが、できた当初は桜とツツジだけの公園だったといいます。

毎日早朝から草取りをしていたという田原さんには「もっとあらゆる世代が楽しむ公園にしたい!」という夢があったそうです。その夢に感動した坂田さんが賛同し、公園に四季の花々を植えようということに。町会に相談すると、長く続けられるなら町会として応援しようと、2014年町会の中に環境部が新設され活動がスタート。季節の移り変わりを楽しみたいという思いをこめて「四季の会」と名付けられました。

町会や自治体からの援助を受けながら活動をしていたところに、セカンドキャリアで植栽の仕事をし、知識と経験をもった石田さんが加わって、公園が一気に進化したそうです。

(花壇は、花や葉の形状や色・質感の違いを楽しめるように、配置や高さにもこだわって景色を作っている)

環境づくりは、数年後の景色を見据えて

植物の種類が豊富なのは、いろいろな植物が育つための、環境づくりの工夫をしていることが大きいようです。

育て増やしたいもの、維持したい景色、そのバランスをとりながら、3年後・5年後こうなっていたらいいなと思う景色を目指して、環境づくりをされているとのこと。栄養たっぷりでフカフカの土づくり、日当たり、風通し、水やりの工夫、植物の見せ方、各所に工夫が凝らされています。

また、お手入れのしやすさも大切なポイントのようです。たとえば、ツツジなどの低木は、人が入って作業できるよう隙間をつくっておくことで、足元の雑草やゴミへの対応がしやすくなります。風通しが良くなり、植物も元気に育つそう。

生垣は、足元の枝葉をスッキリさせる透かし剪定をすることで、見通しが良くなり、公園の安全や防犯面からも効果的。向こう側の景色も楽しめるようになる上、風通しが良くなることで蒸れを防ぎ、足元で別の花を育てることもできるなど、メリットが大きいとのこと。

(生垣は透かし剪定で足元をスッキリさせて、風通しも見通しもよく)

いろいろな種類のクリスマスローズを育てて増やす

四季の会の皆さんが熱心に取り組んでいることのひとつが、クリスマスローズ育てです。

花壇にも、いろいろな種類のクリスマスローズが咲いているほか、隣接する広場の奥の畑ゾーンには、タネから育てた苗のポットがズラッと並んでいます。花の色も白、緑、黄色、紫、黒っぽいものなどいろいろ、花びらの形や枚数の違い、色の微妙なグラデーションなど、見れば見るほど多様です。

(いろいろな種類のクリスマスローズ:右下はタネがついている様子)

苗を育てる畑ゾーンには、1年目、2年目、3年目の苗がそれぞれトレーに並んでいました。採取したタネのほか、こぼれダネから育てることもあるそうです。クリスマスローズは、一株ごとに違う花を咲かせるため、どんな花に出会えるか?増やせば増やすほど、楽しみも増えることを話してくださった石田さん。奥が深い!

(3年目の苗たち:発芽して3年目で花が咲くそう。苗を育てる場所はプロ仕様!)

このようにたくさん育てたクリスマスローズの苗は、公園の花壇に植えるほか、公園に遊びにきたご近所さんにお裾分けしたり、近隣施設の花壇にもお裾分けをしているとのこと。

近くの小学校では、花壇を管理しているPTAに苗を提供。植え付けのコツや育て方のレクチャーをしながら、一緒に植え付け作業をしたそうで、小学校の門の脇にもクリスマスローズが咲いていました。花を通じて地域の人の輪が広がっているようです。

(後編へ続く)

後編はこちら▼

【基本情報】

団体名染井よしの町会 環境部 四季の会
公園名染井よしの桜の里公園 (東京都豊島区)
面積2,705 m2
基本的な活動日毎月2回 第2・4土曜日 9:00-11:00
いつもの活動参加人数10名くらい
会の会員数20名
活動内容ゴミ拾い、除草、落ち葉かき、低木の管理、花壇の管理、利用者へのマナー喚起、新メンバーの募集や勧誘、地域のイベント、子ども向けイベント、高齢者など地域の声かけ
設立時期2014年
参加者イメージ町会の有志メンバー、シニア世代、子育て世代
取材・執筆
取材・執筆
椛田 里佳 代表理事

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフト。夫を難病で亡くし、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフト。夫を難病で亡くし、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

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