2022/9/29

ミントやチューリップのおすそわけで会話も広がる公園花壇

南大塚公園(豊島区)

各地の公園ボランティア活動を紹介する「となりの公園愛護会」。今回は、公園の花壇をきっかけに地域の人々と交流を広げている、こちらの皆さんです。

南大塚公園で花を育てる皆さん

公園ボランティア実態調査アンケートでこんなコメントをいただいていました。

ミントを育てていますが、どんどん増えるので、近隣の方々に配り花壇の輪を広げています。近くの会社の方から「会社の取引先から毎年もらうのでこちらに植えて下さい」とチューリップの球根をたくさんもらっています。ここ2、3年、毎年もらって春にはたくさんのチューリップが咲きます。

植物を通して地域の素敵なやりとりが行われているようです。まだ暑さの残る9月中旬、お話をお聞きしてきました。

(子どもたちが楽しく遊べるのはもちろん、大人もほっとできる感じの南大塚公園)

東京都豊島区にある南大塚公園(みなみおおつかこうえん)。東京メトロ丸の内線の新大塚駅からほど近いエリアにあり、さまざまな遊具や黄色い都電の車両が置かれた遊具ゾーンと広場ゾーンに生垣で分かれる街区公園です。

こちらの公園で花のボランティア活動をしているのは「れもんぐらす」の皆さん。代表の荒砥悦子さんをはじめ、皆さんにお話をお聞きしました。

(荒砥さんは、地域の子どもの遊びや暮らしをサポートするNPO活動も行っている)

地域の人が集う、都会の多機能公園

南大塚公園は、保育園児や小学生がよく遊びに来るほか、ご近所の方が散歩に訪れたり、働く人がお昼にひと休みしたりと、地域の人々に親しまれているようです。

「朝は毎日ラジオ体操、午前中は近くの保育園が次々とお散歩に来たり、午後は小学生が走り回って、みんなよく遊んでいます。町会の防災訓練やお花見も行われていますし、多機能な公園なんです。」と公園のことを話してくださった荒砥さん。

展示されている都電は、昔使われていた1両で走る黄色い旧型車両。都電を残したいという地元住民の要望で昭和46年に設置されたもので、「都電ものしり博物館」という看板がついています。この車両を使って映画の撮影が行われたこと、昔はえんぴつ型の遊具があって「えんぴつ公園」と呼ばれていたことなど、皆さんいろいろなお話を聞かせてくださいました。

(南大塚公園のシンボル「黄色い都電」)

ご近所の植物好きが集まって活動

この南大塚公園で、ステキな花壇を作っているのが、れもんぐらすの皆さんです。ご近所のお花好き・植物好きが集まって、2004年に活動をスタート。メンバーは入れ替わりがありながらも、現在は7人。エリアを分けて花の手入れや植え替えをしているとのことでした。

メンバーの知恵を集めて、公園の環境により良い植物や、その組み合わせ、肥料や資材を研究されているという皆さん。園内には本当にたくさんの種類の植物が育っていました。

ご自宅のお庭でも多くのお花を育てているというメンバーの方も、公園の花壇ならではの楽しみがあること、広さや環境の違う面白さ、子どもたちや地域の人たちの「キレイだね」という言葉が喜びになっていることを話してくださいました。育つ高さを考えて配置を決めたり、いろいろと考えるのが楽しいとおっしゃっていました。

(公園の入口の花壇では、マリーゴールドやペンタスがよく咲いていました)

それぞれのメンバーが好きなタイミングに各自のエリアの花の手入れをするというスタイルで、公園に来るたびにどこかが少しずつ変わっていて、会えなくてもお互いの存在を感じられるというのも、無理なく続けられるユニークな運営方法に感じます。

「れもんぐらす」というグループの名前も個性的です。「かわいいなと思ってこの名前にしました。でもこれまでの約15年間でレモングラスを植えたことはないんですよね。」と笑顔で話す荒砥さん。

(れもんぐらすのメンバーでお揃いのバンダナは、市販品にひと手間かけた手づくりグッズ)

花やミントがつなぐ地域のつながり

南大塚公園の花壇には、ファンがいらっしゃるそうで、この日も公園に出てきてくださいました。公園の前にお住まいの、元日本舞踊の先生で小説家というお元気な90歳代のおじさま。毎日花の写真を撮って日々の生活の記録と一緒にブログに載せてしているそうです。「ここは都会のオアシスなんですよ」と話してくださいました。地域の人からの応援はうれしいですね。

これまでにも、きれいな野ブドウや公園で育ったミントで、小さな鉢を作って、活動紹介と一緒に公園で配布したこともあったというれもんぐらすの皆さん。もしかしたら、近所のあちこちでその植物たちが育っているかもしれません。

よく育つミントをおすそ分けしたというエピソードは、冒頭のアンケートのコメントにもあった通り。環境にもあっているようで、すごい勢いで成長を続けているそう。

この南大塚公園のミントは特に香りが強いそうで、公園に訪れたミント好きのご近所さんが「南大塚公園の花壇のミントを分けてほしい」と、わざわざ区役所に問い合わせをしたほどだとか。その後荒砥さんたちと繋がったこと、ポット苗にしておすそ分けしたことを教えてくださいました。

お伺いした日ももりもり育ったミントをごっそり剪定していると、以前ミントをおすそ分けしたそのご家族が偶然公園に遊びに来られ、大量のミントを再びおすそ分けすることに!

天日で干してドライにすると日持ちもするし、お茶にしてもミント水にしても美味しいそうです。

(ミントを剪定する荒砥さん、近くにいるだけで辺りは爽やかな香り。このあと大きな袋いっぱいに!)

近くの企業から毎年チューリップの球根のプレゼント

このように様々なご近所さんと花壇で繋がるれもんぐらすの皆さん。近くの会社から毎年チューリップの球根をもらって植えているという、企業との繋がりについても話してくださいました。

チューリップの球根をプレゼントしているのは、公園の横に本社を構える株式会社大幸洋紙店さん。

ご担当の方にお話をお聞きすると、「毎年メーカー様から贈られる立派なチューリップの球根を、より多くの人に楽しんでもらえるよう、会社の前のこの公園に植えてもらえないかと、花壇の手入れをしていた荒砥さんに声をかけたんです。」と繋がりのきっかけを教えてくださいました。

春になると立派なチューリップがたくさん咲いて、「春が来た!」と子どもも大人もみんなで喜ぶ、毎年の楽しみになっているようです。

「毎日通っているから公園に花があるのは楽しいですよ。私も土いじりが好きで参加するようになりました。」と、そこかられもんぐらすのメンバーに参加することになったことも話してくださいました。公園の花壇や植物を通して、地域の人々や会社が繋がっているのは、ステキなことだと感じます。

公園の利活用にも力を入れている豊島区。「この前近くの小さな公園でやっていたお祭りイベントが良かったので、今後南大塚公園でもお祭りやフリーマーケットができたらいいですね。苗をつくってみんなにプレゼントしたいです。」と話してくださった荒砥さん。今後の広がりも、楽しみです。

(公園の外周にも花:花のおかげで、ゴミのポイ捨てが減ったそう)
(公園の中央にあるレトロな小屋:昔はここに見守りの人がいたんだとか)
(ゆったりした広場ゾーン、桜の季節は賑わいそう)

【基本情報】

団体名れもんぐらす
公園名南大塚公園 (東京都豊島区)
面積1,532  m2
基本的な活動日声をかけあったり、メンバーそれぞれのタイミングで活動
いつもの活動参加人数5人くらい
会の会員数7人
活動内容除草、低木の管理、花壇の管理、植物の水やり
設立時期2004年
参加者イメージ花好きのご近所さん
活動に参加したい場合は豊島区公園緑地課に連絡してみてください
取材・執筆
取材・執筆
椛田 里佳 代表理事

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフト。夫を難病で亡くし、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフト。夫を難病で亡くし、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

みんなの公園愛護活動レポートに戻る