2026/4/23

「日常」にひらかれた、公園での「卒園を祝う会」

古小烏公園(福岡市)

地域の公園ボランティア活動を紹介する「となりの公園愛護会」。今回は、以前もご紹介した福岡市中央区の「古小烏公園(ふるこがらすこうえん)」を再訪しました。

前回の取材では、公園の植栽管理や「土の日」の活動など、地域住民と保育園が手を取り合う「仕組み」についてお話を伺いました。今回は、3月に古小烏公園で行われた、いふくまち・ごしょがだに保育園の「卒園を祝う会(卒園式)」と園内で開催されていた卒園展「べりーぐっど:いつものみんなのきもちてん」にお邪魔しました。

境界線のない「ハレの日」の風景

「卒園を祝う会」の当日、会場となる公園には、式典用の立派な演台や紅白幕があるわけではありません。そこにあったのは、在園児が制作した「そつえんを祝う会」の温かな幕と、子どもたちが自分たちで植えたり、買い出しに行ったりして選んだ色とりどりの花々。そして卒園児の胸元には、園での生活の中で拾い集めた小枝や廃材を使って作った、世界に一つだけのコサージュが光ります。

「設立当初から、公園でお祝いをするのは必然でした」といふくまち・ごしょがだに保育園の園長で、古小烏公園愛護会会長の酒井咲帆さんは話します。

(いふくまち・ごしょがだに保育園の園長、古小烏公園愛護会会長 酒井咲帆さん)

公園に来ていた親子にお話を伺うと「『誰でもどうぞ』と保育園からご案内いただいたのでお散歩ついでに来てみました」と、小さなお子様を連れて一緒に門出をお祝いされていました。

行政への申請を経て、あえて公園というひらかれた場でお披露目をする。式の最中も、公園内の滑り台では在園児や、遊びに来た子が声を上げて笑い、町内会の方々や園の職員さんも普段着のまま「おめでとう」と駆けつける。卒園児たちも、式の帰り際には慣れ親しんだ遊具でひと遊びして帰っていく。

そんな「境界線のない」風景が、古小烏公園では当たり前になっているようです。

(「卒園を祝う会」の後ろでは、会を興味津々で見つめる子どもたちや、滑り台や砂場で遊ぶ子どもたちもいます)

以前行ったランチタイムトークで、酒井さんは「ひらくこと」が結果として「守ることに繋がる」と語っていました。あえて保育園のカーテンを開け、地域の人に「覗いていいですよ」「トイレも使ってください」と声をかけ続ける。この保育園や公園の「地域にひらく日常」を何年もかけて築いてきたからこそ、卒園の日にも地域の人々がいつもの様子で駆けつけ、親戚のように門出を祝う安心感ある風景が生まれているのです。

(公園に掲げられている掲示板にも「卒園を祝う会」の案内が書いてありました。「小学生になってもあそびに来ることでしょう。これからもよろしくお願いします」と一文が添えられています)

卒園してからも公園とつながり続ける

この「卒園を祝う会」がこれほどまでに境界線がなく、温かなのは、卒園が「お別れの時」ではないからかもしれません。

「卒園して小学生になっても、自然と帰ってきたくなる場所があるといいな」と酒井さんは言います。

そうして、園と保護者が一体となって立ち上げたのが、小学生のための自主的な放課後の居場所『ウヒアハひろば』です。

活動の拠点は、公園の真向かいにある今は使われていない道場「一到館」。月2回のペースでここに集まり、宿題をしたり、おもいっきり遊んだりしています。行政が運営する学童保育のような「小学校の教室や小学校敷地内の専用施設」を利用するのではなく、地域に古くからある、慣れ親しんだ公園や近くの空き空間を活用させてもらう。その開かれたスタイルが、卒園児たちがいつでも帰ってこれる空気感を作っているようです。

(ウヒアハの活動をまとめた「ウヒアハしんぶん」。活動の様子がとても分かりやすく書かれています(画像提供:いふくまち保育園))

「公園は、イベントやウヒアハの活動を通して、卒園児がいつでも帰ってこれる場所にもなっているんです。今やウヒアハの一番上の子は4年生になりますが、月2回のペースで集まっては、宿題をしたり、バザーの準備をしたり、遊んだりしています」と酒井さん。

この「バザー」もまた、公園への愛着を育む大切なプロセスのようです。酒井さんによれば、公園にツリーハウスを作りたいという子どもたちの夢からバザーが始まったのだそう。収益をすべて公園に寄付するこの循環があるからこそ、子どもたちは自分たちで稼いだお金で公園を豊かにする「当事者」としての意識を、卒園後も持ち続けています。

(バザーの様子。とても賑わっています!(画像提供:古小烏公園愛護会))
(バザーでは「卒園児のお店」もあります。お店には卒園児さんたちが立ち「同じものはないんです!かわいいですよー!」と売り方もとても上手です(画像提供:古小烏公園愛護会))

卒園アルバムの表紙に、思い出の風景として古小烏公園を描いた卒園児。卒園展に並ぶ、公園で遊ぶ自分たちの絵。子どもたちにとってこの公園は、単なる遊び場を超えて、自分たちの成長を見守り続けてくれる「心の安全基地」となっているようでした。

(卒園展にならぶ、公園での思い出を描いた子どもたちの絵)
(卒園展の展示の1つ。園では自分たちがいる場所を「地球」という規模感で考えるSDGsの取り組みにも力を入れています。その取り組みのプロセスの中で、子どもたちの口からも自然と『こうえん』という言葉が出てきているようです)

繰り返される「日常」が、絆をつよくする

なぜ、これほどまでに地域と公園、そして園が深く結びついているのでしょうか。その秘訣を尋ねると、酒井さんは取材中、何度もこの言葉を繰り返しお話されていました。

「公園での活動を日常にしていくこと。日常の一部にしていくことが大切なんです」

特別なイベントの時だけ公園を借りるのではなく、毎日の散歩で、掃除で、あるいは「土の日」の活動で。地域の人と挨拶を交わし、共に土に触れ、花を育てる。その「日常」の積み重ねが、親でも先生でもない、公園にいる「地域のおじちゃん、おばちゃん」に見守られて成長するという、豊かな環境を作り出していました。

卒園を祝う会の翌朝、私たちが公園を訪れると、そこには愛護会のバッジをつけた方が、いつものように淡々と花壇を整えていました。

昨日、温かなお祝いが行われた場所で、今日もまた誰かの「日常」が、静かに送られる。その変わらない風景こそが、子どもたちがいつでも帰ってこられる場所を支える、何よりの「安心」なのだと思います。

取材後、酒井さんがこんな言葉を寄せてくださいました。

「子どもたちはあっという間に大きくなるけれど、公園はいつもそこにいてくれて、子どもだった頃の記憶を思い出させてくれる、まちのアルバムみたいです」

変わりゆく子どもたちと、変わらない公園。その関係性が、この地域の未来を耕す確かな「たね」となっていくのだと感じます。

古小烏公園が実践している「公園を核としたコミュニティづくり」

その秘訣は、難しい理論ではなく、地域の人みんながそれぞれの「日常」を大切にすることのようです。アルバムのページをめくるように、また明日も、この公園では新しい「日常」が書き込まれていくことでしょう。

【基本情報】

団体名古小烏公園愛護会
公園名古小烏公園 (福岡市中央区)
面積476 m2
基本的な活動日毎日(日曜日を除く)7:30-8:00・毎月第3土曜日10:00-11:00
いつもの活動参加人数20-30人くらい
会の会員数およそ250人
活動内容ゴミ拾い、除草、落ち葉かき、低木の管理、花壇の管理、植物の水やり、施設の破損連絡と修理、利用者へのマナー喚起、愛護会活動のPR、新メンバーの募集や勧誘、地域のイベント、子ども向けイベント、他団体と連携したイベント、遊びの見守り、高齢者など地域の声がけ、公園再整備に関する活動
設立時期2017年
主な参加者職員、保護者、子ども、地域の人
活動に参加したい場合は毎月第3土曜日「土の日」の10:00に公園に来てください
取材・執筆
取材・執筆
栗原 香小梨

子どもの頃からTHEインドア派だったのですが、自身の子どもが生まれたことをきっかけに公園に遊びに行くようになりました。"子どもの遊び場"というだけではなく、よく会う知り合いができたり、そこから会話が生まれたり、公園を中心に広がるコミュニティに関心あり。現在は、子ども関連のNPOで活動をしながら、地域の仕事、文化を引き継ぐ方々をテーマにライター活動もしています。

子どもの頃からTHEインドア派だったのですが、自身の子どもが生まれたことをきっかけに公園に遊びに行くようになりました。"子どもの遊び場"というだけではなく、よく会う知り合いができたり、そこから会話が生まれたり、公園を中心に広がるコミュニティに関心あり。現在は、子ども関連のNPOで活動をしながら、地域の仕事、文化を引き継ぐ方々をテーマにライター活動もしています。

取材・執筆
みんなの公園愛護会の書籍紹介 学芸出版社

みんなの公園愛護会初の書籍。「推しの公園を育てる!公園ボランティアで楽しむ地域の庭づくり」が学芸出版社から刊行されました。全国各地の推しの公園活動やボランティア運営のヒントが紹介されています。ぜひ手にとってお読みください。https://park-friends.org/books/book1/

みんなの公園愛護会初の書籍。「推しの公園を育てる!公園ボランティアで楽しむ地域の庭づくり」が学芸出版社から刊行されました。全国各地の推しの公園活動やボランティア運営のヒントが紹介されています。ぜひ手にとってお読みください。https://park-friends.org/books/book1/

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