一般社団法人みんなの公園愛護会では、公園ボランティアおよび地域住民への業務委託を含めた「地域による公園育て」の実態を、全国の人口5万人以上の基礎自治体を対象に調査しました。このレポートでは、地域住民の関わり方や支援内容、抱える課題、注力する取り組みについて、実際の声とともに詳細に紹介しています。
公園愛護会はじめ各自治体で行われている市民の公園ボランティアに加え、自治会町内会など地縁団体への業務委託など、地域住民による公園育ての実態と現状を、多角的に把握することを目的とする。
高齢化および担い手不足が課題とされる一方で、地域の公園と公園コミュニティの価値・まちの緑の質が見直される今、住民による地域の公園への積極的な関わりをサポートする際の参考にする。
公園等の維持管理における地域住民の関わりの有無を聞いた設問。回答のあった340自治体のうち、325自治体、95.6%に公園等の維持管理に地域住民の関わりがあることがわかった。
公園等とは、都市公園や条例設置公園、児童遊園、市民緑地、及びこれらに類するものをさし、地域住民の関わりは、公園愛護会・アダプト・管理会・管理協定などのボランティアとしての関わり、および自治会町内会など地縁団体への業務委託を含む。地域住民の関わりを想定しているため、シルバー人材事業団や授産施設などへの業務委託は対象に含まない。
上の地域住民による公園育て「ある」の内容について、業務委託契約で仕事として発注されるものか、有志で行うボランティア活動かを聞いた設問。ボランティアとは、公園愛護会・アダプト団体・個人有志など、業務ではない有志活動(有償・無償を問わない)を指す。
264(81.2%)の自治体でボランティア活動が行われており、169(52.0%)の自治体で自治会町内会など地縁団体への業務委託が行われていることがわかった。ボランティア活動と業務委託の両方が行われている自治体も108(33.2%)あった。
今回の調査では、様々な制度の下で、40,684の公園等で、35,808の団体がボランティア活動をしていることがわかった。 これには地域住民への業務委託による公園育ては含まれない。
公園ボランティア活動は、都市公園をはじめ条例設置公園、児童遊園、市民緑地、およびこれらに類する場所など、様々な場所で行われている。対象となる活動場所や状況は、自治体によって事情が異なっており、一概に比較することは難しい。
個別に見ていくと、特定の公園のみでボランティア活動が行われている自治体もあれば、9割以上の住区基幹公園において公園愛護会やアダプト団体などが結成されそれぞれボランティア活動が行われている自治体もあることが確認された。
今回、住区基幹公園(都市公園法上の街区公園、近隣公園、地区公園)における公園ボランティアの活動率を算出してみようと試み、住区基幹公園における活動数を聞く設問を設けたが、目的とする住区基幹公園における公園ボランティア活動率を算出することはできなかったため、掲載は差し控える。
回答のあった261自治体のうち、公園愛護会、愛護協力会、愛護委員、愛護団体など「愛護」と名前のつく制度が最も多く、82の自治体で「愛護」という言葉が使われていた。
そのほか、アダプト、アドプトなど「里親」系の名称、自主管理、管理協定、美化、ボランティアなどの文言も多く確認された。
活動場所を公園だけでなく道路・河川・公共施設など広く設定しているものや、花育てや花壇づくりのサポートに特化したもの、緑地や里山の維持管理、公園や広場の利活用に関するものなどもあり、自治体名の入ったものやわかりやすく親しみやすい名称の工夫も見られた。
地域住民の公園育てへのサポート内容として最も多いのは、ゴミや刈り草の回収(82.7%)。次に、清掃用具やゴミ袋などの物品提供(69.0%)、活動費・報償金等の金銭支給(57.9%)、活動中の保険加入(45.8%)、花苗や土・肥料の提供(41.5%)、草刈機など道具の貸出(35.0%)、看板の設置・PRグッズの支給(34.1%)、と続いた。
活動をしやすくするための用具庫や掲示板の設置、活動内容の広報や周知の協力、モチベーション向上のための表彰や団体間の交流促進支援、技術指導や研修会、専門家の派遣、情報誌の発行、イベント企画支援、公園利用に関する優遇など、さまざまなサポートが行われていることがわかった。
地域住民への業務委託についても、公園ボランティアと同様にさまざまな支援が行われていることが明らかになった。委託費は支援ではないため、活動費・報償金等の金銭支給には含めていない。
行政の視点からみた地域住民による公園育ての価値は、行政の管理コスト削減(80.6%)、公園の利用促進・活性化(78.1%)が上位にあがった。次に、施設の不具合などの迅速な把握(74.4%)、地域コミュニティの活性化・交流促進(71.6%)、不法投棄やマナー違反の減少
安全性の向上(70.1%)と続いた。
そのほか、まちの緑の質の向上(47.5%)、職員では気付けない公園の課題や魅力の発見(47.2%)、公園育てに参加する住民の心身の健康(37.3%)、周辺地域の防犯(36.1%)、住民ニーズの迅速な把握
きめ細やかな対応(34.3%)、災害時における地域との連携強化(19.8%)などもあがった。
住民の関わりが財政的なメリットだけでなく、公園の質や安全性を高める上でも不可欠であるという行政の認識を裏付ける結果となった。
公園ボランティア活動のある自治体においては、「公園の利用促進・活性化」が「管理コスト削減」を上回り1位となった。大きな傾向は変わらないものの、業務委託とボランティアの関わり方の違いで、もたらす価値や効果が少しずつ違っていることもわかる。
公園利用者や地域住民の視点からみた地域住民による公園育ての価値は、住民の公園や地域への愛着向上(87.9%)、安心して利用しやすい公園づくり(75.2%)が上位にあがった。
次に、地域の会話のきっかけ(59.1%)、公園の魅力向上(58.2%)、子どもの遊びの安心と充実(57.9%)、生きがいや居場所づくり(57.0%)、健康づくりやフレイル予防(40.2%)と続いた。
これらの結果から、地域住民の公園への関わりは、単なる労働力提供ではなく、精神的・社会的な豊かさをもたらす活動として捉えられていることがわかり、公園利用者や地域住民からみても、地域の人々が公園の日常のお世話に関わることは、大きな価値があることがわかる結果となった。
ダントツで1位だったのは、参加者の高齢化・担い手不足(95.7%)で、回答のあった324自治体のうち、310自治体とほとんどの地域で高齢化と担い手不足が大きな課題になっていることが顕著に見える結果となった。
次いで、新たな参加者の獲得(74.9%)、参加者のモチベーション維持(44.8%)があがった。現状の参加者が高齢化で減っている中、新たな参加者も現れず、残る参加者のモチベーション維持が難しいという切実な状況が伝わってくる。これはボランティア/業務委託で大きな違いはない。
そのほか、財源の確保(活動支援金、物品購入費など)(31.4%)、活動範囲や内容に関する自治体との認識のずれ(28.6%)、特定の人に負担が偏っている(27.0%)、住民間の意見調整や合意形成の難しさ(26.0%)、自治体職員側の負担(調整、支援事務、立ち会いなど)(23.5%)、活動内容の質の確保・専門性への対応(21.0%)、活動中の事故やトラブルへの対応(保険、責任範囲など)(15.6%)、住民への情報提供や周知不足(11.7%)、制度上の制約や手続きの煩雑さ(9.5%)など、さまざまな課題があることもわかる。
老朽化した遊具、樹木、施設の修繕や更新に関する回答が多数あった。具体的には、「樹木の維持管理」については多くのコメントがあり、「老朽化した遊具の修繕」「遊具の長寿命化事業」など、多くの自治体が、安全性を確保するための取り組みに注力していることがわかった。
公園をより多くの人に利用してもらうため、市民が参加できるワークショップやイベント、子どもを含む地域住民アンケートやヒアリング、ボール遊びや花火をはじめとした「ルール柔軟化や適正化」など、利活用を促す取り組みが積極的に行われていることがわかる。
公園再編・機能再編や、DXや電子化に関する取り組みなど、限られた財源の中で、効率的な運営を目指す動きもみられる。企業や学校との連携や、除草の効率化に関するコメントなどもみられた。
除草の負担軽減のための取り組みや草刈機の貸し出し、道具など支援物品の拡大、気候変動に対応した花壇づくり、研修の充実といった具体的な支援策のほか、制度そのものの見直しを行っているという自治体もあった。
担当者の喜びが、単なる業務の達成感ではなく、公園育てをする市民との直接的なつながりや、公園がもたらすポジティブな変化を実感した瞬間にあることがわかる回答が多くみられた。活動する様子を見るのがうれしい、感謝の言葉や褒められることがうれしい、楽しそうに活動するボランティアとのコミュニケーションがうれしい、学校や企業など新たなプレイヤーの参加がうれしい、市民協働の手応えがうれしいなど、多くのうれしかったエピソードがあがった。
公園の美化活動とともに、さまざまなお楽しみ活動を行う団体についての情報が多かった。たとえば、ラジオ体操、懇親お茶会、公園パトロール、子どもの運動教室、昆虫採集と観察会、昔あそび、かき氷イベント、流しそうめん、キャンドルナイト、子どもたちがチューリップを描くイベントなど。
また、花壇作り、共同花植えや球根植え、ツツジやアジサイの育成、地域を超えたあやめの株分けといった、花育てに関することや、農的活動、ビオトープの維持管理、山野草の紹介板設置、アニマル除草隊、ガーデンコンテスト、オリジナル愛護会だよりの作成と地域への配布、ガイドボランティアといったユニークな取り組みについてのコメントもあった。
地域住民はもちろん、近隣の保育園や幼稚園・小学校・中学校・高校・大学、学習塾、福祉作業所、商店街、企業など、多様な主体と連携しながらの活動についての情報も多く寄せられた。
地域住民の関わりがない場合の小規模公園の維持管理については、シルバー人材センターに委託(70.5%)が最も多く、次に指定管理者や業者に委託(50.2%)、自治体で直接管理(13.3%)、制度はないが地域住民の自由な関わりはある(10.4%)となった。
公園や市民緑地の利活用推進に関する取り組み、さまざまなプレイヤーが関わる市民協働の取り組み、公園ボランティアの支援や拡大に関する取り組み、公園の整備や維持管理など、全国で行われている様々な取り組みについての情報が寄せられた。
公園ボランティアの高齢化対策や活動活性化に向けた他自治体の取り組み、ファミリー層や若者、企業など様々なプレイヤーの活動や様々なボランティア活動事例が知りたいという回答のほか、活動のインセンティブ、活動費の算出基準や物価高による見直しの有無、人口減少に対応した公園づくりや維持管理手法、活動が困難になった時の対処法、除草方法や除草剤の使用など、広く様々な声が寄せられた。
多くの自治体が、高齢化による公園ボランティアの担い手不足や維持管理制度の持続性に課題を感じており、今後は若年層や子育て世代の参加促進に重点を置きたいという声が多かった。
また、住民が主体的に公園育てに関わるための新たな仕組みづくりに関するコメントもみられた。具体的には、ボランティア活動の継続を支援するための制度の見直しや、参加者が楽しめるイベント形式の美化活動などがある。
さらに、公園管理のパートナーシップを広げようという動きもみられる。自治体だけでなく、地元企業、学校、遊具メーカー、大学など多様な主体と連携し、公園を地域住民が「自分たちの公園」と認識できるような機運を醸成していくことが重要視されていることがわかった。
みんなの公園愛護会との協業で最も関心のある項目としてあがったのは、職員向け研修会とDX化による公園ボランティアの事例共有(PARKFUL Watch)(ともに33.1%)、活動団体向け講習会での講演やワークショップ(22.9%)、LINEやメルマガなど定期的な情報共有(22.3%)、市民向けイベントでの講演やワークショップ(19.9%)と続いた。
今年度は、冒頭のポイントにも上げた通り、地域住民による公園の維持管理の実態について、「ボランティア」だけでなく「業務委託」も含めて、全国の人口5万人以上の基礎自治体を対象に調査を行いました。
この背景には、これまで公園ボランティア実態調査を行ってきた中で、公園ボランティア制度がない自治体においても、小規模公園の維持管理を「自治会町内会への委託」で行っているという回答が多くあり、形式を問わず地域住民の関わりはとても大きく、状況や課題も近いものがあるのではないかという考えがありました。
そこで今回は、有償無償を問わず有志活動であるボランティアに加えて、仕事として発注される業務委託についても、広く「地域住民による公園育て」として調査を試みました。おかげさまで、全ての政令指定都市および、77.4%の中核市、82.6%の東京特別区をはじめ、多くの声を集めることができました。ご協力ありがとうございました。
地域住民が公園育てに関わる仕組みがほとんどの自治体にあることがわかったのは今年の大きな成果です。
公園は、ボランティア・業務委託を問わず、地域住民によって、美しく快適に保たれ、安心して遊ぶことができる地域の庭になっていることが改めてわかる結果となりました。全国の多くの公園は、行政の力だけではなく、地域住民との協働によって守られています。
地域住民による公園育てにさまざまな価値があることは、これまで多くの人々にお聞きしてきました。多様な価値があるので、今回は公園管理者である行政からの視点と、公園利用者や地域住民からの視点にわけて質問を整理しましたが、全体を通して最も多かったのは「住民の公園や地域への愛着向上」でした。
行政からみた、コストの削減などの財政メリット、公園利用促進、公園の質や安全性の向上に加え、愛着形成や地域コミュニティ、会話のきっかけ、生きがいや居場所づくりといった公園利用者や地域住民からみた精神的・社会的な豊かさにつながる価値も大きいことが、改めてよくわかる結果となりました。
高齢化と担い手不足は、ボランティア/業務委託を問わず、どこも切実な状況です。制度の見直しや関わり方のリデザインも含めて、今後どのように地域の公園を守り育てていくかについては、多くの自治体が頭を悩ませている課題であることも明確に見えています。
まずは既存の団体が活動しやすく続けやすくするための取り組み拡大、関係人口を増やしこれまで関わってこなかった新しいプレイヤーの参画を目指す取り組み、若年層やファミリー層の参加促進、地元企業や学校など新たなたパートナーとの協働、個人でも参加できるボランティアの入口づくりなど、さまざまなアクションが各地で始まっています。今活動している人にとっても、新しいプレイヤーにとっても大切なキーワードは「楽しさ」。公園育てに関わることで、喜びや楽しみが増えていく、そんな循環を作っていくことがヒントになりそうです。
今年は、みんなの公園愛護会に調査してほしい項目に加えて、協業で関心のある項目についてもお聞きしました。どちらにも予想以上に幅広く多くの回答をいただき、みなさんの役に立つ活動が少しずつでも着実にできてきた手応えを感じています。
引き続き、各地の取り組みを広く取材し、できるだけ多くの情報共有をしながら、推しの公園を育てる人を応援していきます。また、今後の新しい挑戦として、これからの公園育てに関するアイデアや実践を共有する場づくりも企画中。先の見えない時代、正解のないことだからこそ、未来に向けて一緒に知恵を絞り、企み、走っていくみなさんの仲間になれたらと考えています。
調査に際し、ご協⼒くださった皆さま、どうもありがとうございました。
2025/11 一般社団法人みんなの公園愛護会