一般社団法人みんなの公園愛護会では、公園愛護会、公園アダプト制度ほか、様々な制度で行われている市民の公園ボランティアに関して、全国の自治体を対象に、ボランティア制度の有無や支援の内容・課題などを調査しました。
Q:公園ボランティア制度はありますか?
公園の清掃や花育てに関するボランティア制度について、回答のあった761のうち264自治体(34.7%)に、地域住民による公園ボランティアの制度があることがわかった。中には活動場所を公園に限らず、その他のパブリックスペースも含めて広く活動サポートするものがあったり、制度がある自治体のうち20.5%は、目的によって2つ以上の制度を併用していることがわかった。
また、公園ボランティアは、特定の地域のみに存在するものではなく、北海道から九州まで広く地域に根付いていることもわかった。
Q:制度に基づく支援策がある場合、支援内容を教えてください
公園ボランティアへ自治体からどのような支援を行っているのか?その内容については、お金で支援するケースと、物品で支援するケースがそれぞれ約40%ずつ、お金と物品の両方で支援するパターンも15%あった。その他、ボランティアポイントシールや商品券などの地域で使えるものでの支援や、ボランティア保険への加入のみ、情報提供のみ、といったケースもあった。
それぞれの自治体ごとに、様々な方法で公園ボランティアの支援が行われている。
Q:制度の名称を教えてください
公園愛護という言葉が入った名前が最も多かったが、ボランティア、美化、アダプトプログラム、里親制度、サポーターなど、各自治体ごとに地名や目的など、地域に合ったユニークな名前がつけられている。
Q:活動されている団体数と活動のある公園数を教えてください
今回の調査では、様々な制度の下で、24,317の団体が、27,441の公園でボランティア活動を行っていることがわかった。
Q:制度が始まったのはいつですか?
今回最も多かったのは、2000年代にスタートした制度で、全体の40.1%であった。最も早くは、1960年代から制度を開始運用している自治体が5市あった。2020年以降に新しく制度が作られ開始した自治体も10市町あり、制度の新設や見直しも随時行われていることがわかった。
Q:支援金がある場合の算出方法を教えてください
お金の支援は、報奨金、助成金、交付金、活動費などそれぞれ自治体ごとに呼び名やルールが異なる場合が多いものの、大きくタイプ分けをすると、面積に応じて設定されるケースと、基本料金に面積や活動内容で加算がつくケースがそれぞれ33.3%で最も多かった。加算のポイントについては、除草の回数や、トイレ清掃の有無など、内容ごとに細かく規定がある場合や、活動人数に応じた加算がある自治体もあった。一律で同じ金額を支給する自治体や、活動にかかった実費を支給する自治体などもあった。
Q:行政が支援金以外で、公園での市民ボランティアに対し行っているサポート内容として該当するものをすべて教えてください(複数選択可)
最も多かったのは、ゴミの回収(84.2%)、次に、ゴミ袋の提供(78.0%)、保険の加入(53.7%)、道具の貸出、花苗の提供(ともに47.9%)と続いた。また、交流会(9.7%)や、活動紹介情報誌の発行(7.3%)、イベント企画支援(5.8%)など、清掃や花育て活動以外の、楽しみづくりの支援についても一定数あることがわかる。
Q:公園愛護会等がもたらしている価値や効果は、どのようなことがありますか?
もしも、なくなってしまったら、どのような損失がありますか?(複数回答可)
街区公園の維持管理のコスト削減(76.9%)と地域住民による公園利用の活性化(76.1%)が最も多かった。その後、高齢者の健康維持やご近所見守り効果(54.6%)、地域における多世代交流(44.6%)、周辺地域の防犯(40.2%)と続いた。
公園ボランティア活動は、公園の維持管理コスト削減と同時に、公園を中心とした地域活動や住民交流にも有効であると各自治体が認識していることがわかる。
Q:公園ボランティアが現状抱える課題は何ですか?(複数選択可)
担い手の高齢化による活動量の減少(73.8%)が最も多く、エリアを問わず共通の課題として1位になった。次いで、新規結成が少ない(47.9%)、新たな担い手の発掘に苦戦(46.4%)、既存団体に新しいメンバーが加入しない(44.1%)、人数不足で活動に支障がある(40.7%)、担い手の高齢化による活動の質の低下(40.3%)、解散等による団体数の減少(39.5%)、一般市民に対して活動の認知度が低い(36.9%)と続いた。その他、新規加入者は一定数いるが、団体内でリーダーシップを取れる人が少ないため、特定の個人に負担がかかっているという声もあった。
その中で最も大きな課題は何ですか?という問いに対して、ここでも、全体の43.3%が担い手の高齢化による活動量の減少を上げダントツの1位。そして新規結成が少ない(9.2%)、解散等による団体数の減少(7.9%)と続いた。
既存の団体の高齢化による活動の先細りと、それに代わる新たな担い手の確保の難しさの両面があることがわかる。
Q:自治体として力を入れていること、工夫していることは何ですか?(複数選択可)
現状維持、特にない(40.8%)が最も多かったが、市民にもっと公園ボランティアを知ってもらうための広報活動(33.8%)、新規結成に向けた呼びかけ(28.5%)、各団体への支援内容の充実(15.8%)が上位に入った。ボランティアの入口としての講座を行っているという自治体や、ホームページで各団体の紹介ページを作成して公開しているといった声もあった。
その中で最も力を入れていることは何ですか?という問いに対して、ここでも現状維持、特にない(30.1%)が最も多く、市民にもっと公園ボランティアを知ってもらうための広報活動(26.2%)、新規結成に向けた呼びかけ(18.9%)と続いた。
自治体としても、様々な方法で、新しい担い手の掘り起こしに注力していることがわかる。
Q:最近1年間と3年間で新規結成された団体の数と解散・登録解除になった団体の数を教えてください(公園数を基準)
【新規結成】最近1年間(2020/4-2021/3)で新規結成されたのは、596団体。3年間(2018/4-2021/3)では、1526団体であった。
【解散】一方最近1年間(2020/4-2021/3)で解散・登録解除になったのは、476団体。3年間(2018/4-2021/3)では、1006団体であった。
全体の傾向としては、1年間、3年間の両期間ともに新規結成数の方が、解散・登録解除数よりも上回る結果となった。
新規結成と解散数のバランスを自治体ごとに見ていくと、解散より新規結成数の方が多い自治体が50-60%だが、結成より解散数が上回り活動団体数が減っている自治体も30-36%あることがわかった。新規結成数の方が多い自治体の中には、開発公園の増加に伴い、ボランティア団体の新規結成も増えているという実態があることも個別ヒアリングを通して見えた。
Q:公園ボランティア活動に関して担当している行政の職員は全部で何名ですか?
回答のあった自治体のうち、全体の約50%が1−2人で担当していることがわかった。
関わる人数が多い自治体では、主担当に加えて補助担当を複数名設けているケースや、政令指定都市などの大都市で、市役所本庁職員の他、各区ごとに担当者がいるケースなどもあった。その他、特に担当者は設けず部署全体で対応しているという自治体もあった。
Q:担当として力を入れていることは、どのような支援ですか?(複数選択可)
個別相談への丁寧な対応(55.4%)が最も多く、できる限り多くの団体への対応(23.5%)、新規結成に向けた呼びかけ(21.2%)、事務仕事の簡素化(20.8%)と続いた。現状維持、特になし(25.4%)という回答も一定数あった。
Q:担当としての課題や困っていることはどのようなことですか?(複数選択可)
高齢化や担い手不足にどうサポートしていいか分からない(42.0%)が最も多く、多くの担当者が頭を悩ませていることがわかる。次に、わがままな相談への対応(37.0%)、担当公園数が多過ぎる(30.0%)、予算不足(26.8%)、対応する業務範囲が広すぎる(21.0%)と続いた。書類業務が煩雑(IT化できれば助かる)という回答も17.9%で、困っていることは特にない担当者も14.0%いた。
Q:やりがいや喜びは何ですか?担当としてうれしかったエピソードを教えてください
担い手が生き生きと楽しく活動している様子や報告を見て、また団体からの要望や相談への対応に感謝されたことなど、担い手との直接的なコミュニケーションがやりがいになっている回答が多かった。その他にも、公園利用者からの声や、公園の景観が良くなったこと、新たな担い手が増えた時など、様々な声があった。
Q:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によりどのような影響がありましたか?(複数選択)
公園ボランティアの活動が縮小・数が減少した(59.0%)という自治体が多い結果となった。大きな公園(46.2%)、小さな公園(31.5%)ともに利用者が増えた自治体が多かった。コロナ禍において外出の制限がかかる中、より一層市民が市内の公園を利用するようになり、喜ばしいことであると同時に維持管理の負担が増えた、公園の在り方が変わってきている、という声もあった。一方で、野球場などの施設利用者が減った、県外からの公園利用が減った、調査していないのでわからないという自治体もあった。
Q:愛護会やそれに類する制度がない場合、小規模な公園の維持管理をどのように推進していますか?(複数選択可)
市区町村など自治体で直接管理(83.7%)が最も多かった。次に多かったのは、自治会・町内会で管理(68.0%)で、ここでも地域住民の活躍が見られることがわかった。シルバー人材センターで管理(42.3%)や、これら複数の組み合わせもあった。また、制度がなくてもボランティア団体の活動があるという自治体も78市町あることがわかった。
今回、公園ボランティアに関して初めての全国調査を実施しました。昨年の神奈川県での調査から、さらに広く現状を知ることができたと思います。これまでの取り組みに加えて、今回の調査で見えてきたこともありました。
傾向として、人口規模が一定以上の自治体には公園ボランティア制度がある場合が多く、人口規模の小さな自治体には制度がないというケースが多いことが見えてきました。例えば、回答のあった人口15万人以上の市区町村では84.3%に公園ボランティア制度があり、15万人以下で制度がある自治体は25.2%でした。同時に、公園ボランティア制度がない市区町村でも、自治会や町内会が地域の公園の維持管理に関わっているという市区町村はかなり多いこともわかりました。地域の特性や実情に合った制度設計や運用が行われている現状で、制度の有無に関わらず、地域の公園が地域の人の手で守られていることがわかる結果となりました。
共通の課題である「高齢化」と「担い手不足」の奥には、「メンバーの固定化」と「コミュニケーション不足」が隠れているのではないかという考えに至りました。いつも同じ決まった人たちだけが、ただただ静かにやっているだけだと、孤独感が募り寂しいものです。公園利用者や地域の人からの「ありがとう」の一言が、活動の大きなエネルギーになることが、これまでに集めた多くの担い手からの声で伝わってきています。「ありがとう」の循環が起こるような、そんな仕組みができれば、より元気に、より充実した気持ちで、みんなが活動できるのではないかと思います。
また、公園ボランティアがもたらす価値については、街区公園の維持管理のコスト削減だけに止まらない、地域住民による公園を中心とした地域コミュニティの可能性も強く感じられます。公園清掃や花育ての活動は、地域の人々が定期的に集い交流を深めるきっかけとして機能しているほか、公園が日常的に地域の人々の手で守られていることで、より多くの利用者が安心して公園を利用することができ、地域全体の暮らしやすさ向上に繋がっているのではないかとも考えられます。