地域の公園ボランティア活動を紹介する「となりの公園愛護会」。今回は、以前もご紹介した福岡市中央区の「古小烏公園(ふるこがらすこうえん)」を再訪しました。
前回の取材では、公園の植栽管理や「土の日」の活動など、地域住民と保育園が手を取り合う「仕組み」についてお話を伺いました。今回は、3月に古小烏公園で行われた、いふくまち・ごしょがだに保育園の「卒園を祝う会(卒園式)」と園内で開催されていた卒園展「べりーぐっど:いつものみんなのきもちてん」にお邪魔しました。
境界線のない「ハレの日」の風景
「卒園を祝う会」の当日、会場となる公園には、式典用の立派な演台や紅白幕があるわけではありません。そこにあったのは、在園児が制作した「そつえんを祝う会」の温かな幕と、子どもたちが自分たちで植えたり、買い出しに行ったりして選んだ色とりどりの花々。そして卒園児の胸元には、園での生活の中で拾い集めた小枝や廃材を使って作った、世界に一つだけのコサージュが光ります。
「設立当初から、公園でお祝いをするのは必然でした」といふくまち・ごしょがだに保育園の園長で、古小烏公園愛護会会長の酒井咲帆さんは話します。

公園に来ていた親子にお話を伺うと「『誰でもどうぞ』と保育園からご案内いただいたのでお散歩ついでに来てみました」と、小さなお子様を連れて一緒に門出をお祝いされていました。
行政への申請を経て、あえて公園というひらかれた場でお披露目をする。式の最中も、公園内の滑り台では在園児や、遊びに来た子が声を上げて笑い、町内会の方々や園の職員さんも普段着のまま「おめでとう」と駆けつける。卒園児たちも、式の帰り際には慣れ親しんだ遊具でひと遊びして帰っていく。
そんな「境界線のない」風景が、古小烏公園では当たり前になっているようです。

以前行ったランチタイムトークで、酒井さんは「ひらくこと」が結果として「守ることに繋がる」と語っていました。あえて保育園のカーテンを開け、地域の人に「覗いていいですよ」「トイレも使ってください」と声をかけ続ける。この保育園や公園の「地域にひらく日常」を何年もかけて築いてきたからこそ、卒園の日にも地域の人々がいつもの様子で駆けつけ、親戚のように門出を祝う安心感ある風景が生まれているのです。

卒園してからも公園とつながり続ける
この「卒園を祝う会」がこれほどまでに境界線がなく、温かなのは、卒園が「お別れの時」ではないからかもしれません。
「卒園して小学生になっても、自然と帰ってきたくなる場所があるといいな」と酒井さんは言います。
そうして、園と保護者が一体となって立ち上げたのが、小学生のための自主的な放課後の居場所『ウヒアハひろば』です。
活動の拠点は、公園の真向かいにある今は使われていない道場「一到館」。月2回のペースでここに集まり、宿題をしたり、おもいっきり遊んだりしています。行政が運営する学童保育のような「小学校の教室や小学校敷地内の専用施設」を利用するのではなく、地域に古くからある、慣れ親しんだ公園や近くの空き空間を活用させてもらう。その開かれたスタイルが、卒園児たちがいつでも帰ってこれる空気感を作っているようです。

「公園は、イベントやウヒアハの活動を通して、卒園児がいつでも帰ってこれる場所にもなっているんです。今やウヒアハの一番上の子は4年生になりますが、月2回のペースで集まっては、宿題をしたり、バザーの準備をしたり、遊んだりしています」と酒井さん。
この「バザー」もまた、公園への愛着を育む大切なプロセスのようです。酒井さんによれば、公園にツリーハウスを作りたいという子どもたちの夢からバザーが始まったのだそう。収益をすべて公園に寄付するこの循環があるからこそ、子どもたちは自分たちで稼いだお金で公園を豊かにする「当事者」としての意識を、卒園後も持ち続けています。


卒園アルバムの表紙に、思い出の風景として古小烏公園を描いた卒園児。卒園展に並ぶ、公園で遊ぶ自分たちの絵。子どもたちにとってこの公園は、単なる遊び場を超えて、自分たちの成長を見守り続けてくれる「心の安全基地」となっているようでした。


繰り返される「日常」が、絆をつよくする
なぜ、これほどまでに地域と公園、そして園が深く結びついているのでしょうか。その秘訣を尋ねると、酒井さんは取材中、何度もこの言葉を繰り返しお話されていました。
「公園での活動を日常にしていくこと。日常の一部にしていくことが大切なんです」
特別なイベントの時だけ公園を借りるのではなく、毎日の散歩で、掃除で、あるいは「土の日」の活動で。地域の人と挨拶を交わし、共に土に触れ、花を育てる。その「日常」の積み重ねが、親でも先生でもない、公園にいる「地域のおじちゃん、おばちゃん」に見守られて成長するという、豊かな環境を作り出していました。
卒園を祝う会の翌朝、私たちが公園を訪れると、そこには愛護会のバッジをつけた方が、いつものように淡々と花壇を整えていました。
昨日、温かなお祝いが行われた場所で、今日もまた誰かの「日常」が、静かに送られる。その変わらない風景こそが、子どもたちがいつでも帰ってこられる場所を支える、何よりの「安心」なのだと思います。
取材後、酒井さんがこんな言葉を寄せてくださいました。
「子どもたちはあっという間に大きくなるけれど、公園はいつもそこにいてくれて、子どもだった頃の記憶を思い出させてくれる、まちのアルバムみたいです」
変わりゆく子どもたちと、変わらない公園。その関係性が、この地域の未来を耕す確かな「たね」となっていくのだと感じます。
古小烏公園が実践している「公園を核としたコミュニティづくり」。
その秘訣は、難しい理論ではなく、地域の人みんながそれぞれの「日常」を大切にすることのようです。アルバムのページをめくるように、また明日も、この公園では新しい「日常」が書き込まれていくことでしょう。
【基本情報】
| 団体名 | 古小烏公園愛護会 |
| 公園名 | 古小烏公園 (福岡市中央区) |
| 面積 | 476 m2 |
| 基本的な活動日 | 毎日(日曜日を除く)7:30-8:00・毎月第3土曜日10:00-11:00 |
| いつもの活動参加人数 | 20-30人くらい |
| 会の会員数 | およそ250人 |
| 活動内容 | ゴミ拾い、除草、落ち葉かき、低木の管理、花壇の管理、植物の水やり、施設の破損連絡と修理、利用者へのマナー喚起、愛護会活動のPR、新メンバーの募集や勧誘、地域のイベント、子ども向けイベント、他団体と連携したイベント、遊びの見守り、高齢者など地域の声がけ、公園再整備に関する活動 |
| 設立時期 | 2017年 |
| 主な参加者 | 職員、保護者、子ども、地域の人 |
| 活動に参加したい場合は | 毎月第3土曜日「土の日」の10:00に公園に来てください |