連載コラム
2025/7/8

まちにゴールが生まれると、人がつながる。

SoooGoodながた

公園ボランティアに関わるさまざまな人がその活動や思いを綴る「みんなの公園愛護活動 連載コラム」。神戸市長田区を中心に公園から面白いことを仕掛けて、まちづくり活動に広げているSoooGood ながた(ソーグッドナガタ)の西山泰さんの連載、第2回です。


川沿いの公園に、みんなでシェア畑をつくったことで、
「次は公園に何作ろう?」「もっと面白いことできるんちゃう?」と、
どんどんアイデアが広がっていきました。

もっと賑やかで、楽しい水辺ストリートにしたい──。
そんな思いと、たくさんの人との出会いから生まれたのが、神楽公園のバスケットコートづくりです。

今日はそのストーリーをお届けします。最後まで読んでいただけたらうれしいです。

なぜ公園にバスケットゴールを?

新湊川公園でコミュニティ菜園がスタートして、
「公園って、こんなに簡単に人とつながれる場所なんだ」と実感しました。

その時から、「次はもっといろんな世代が楽しめる場所をつくりたい」と思いはじめたんです。
畑を見渡すと、子どもや大人は集まってくるのに、中高生の姿があまりない。

SNSでバスケを楽しむ子どもたちの投稿を見た瞬間、「今の時代、やっぱりバスケやな」と感じ、
スリーオンスリーができるようなスペースを公園に作りたいと考えるようになりました。

(川のほとりでゆるやかにつながるウジャマー菜園)

出会いと共鳴:まちのデザイナーとの協働

そんなタイミングで参加した長田区役所主催の「長田ゼミ」で、
バスケゴールを増やしたいと語る若者に出会います。

プレゼンでは、「バスケットゴールがあると、友達が増える。男女関係なく遊べる」と、
まちに必要な理由が熱く語られていました。

その瞬間「うちの公園で一緒にやりませんか?」と即アプローチ。
思っていれば出会えるもんだなと感じました。

(新湊川沿いにある神楽公園。みんなで公園ゴミ拾いからスタート)

中高生たちのリアルな意見

次に、実際に使う子どもたちの声を聞くことにしました。
長田中学校や彩星工科高校の探究授業の中で、100名以上の生徒に「神楽公園にバスケットゴールがあったらどう思う?」と聞くと、ほとんどが大賛成。

「遊びたい!」「放課後行きたい!」というリアルな声がたくさん返ってきました。その後、キャッチボール交流会やごみ拾いも一緒にやりながら、少しずつ公園と中高生との距離が近づいていきました。

(公園で、学生や大人もごちゃまぜキャッチボール大会で意見交換)
(キャッチボールは、みんなで楽しめる公園の交流アイテム!めっちゃ盛り上がりました!)

神戸市のバスケットゴール倍増計画

そんな中、神戸市にプロバスケチームが移転し、市が「バスケットゴール倍増計画」をスタート。
これまで少しずつ積み上げてきた僕たちの活動に、ようやく大きな追い風が吹きました。

高校生たちも「本当にできるんや!」とワクワクし、掃除や運営にもチャレンジ。
2年生の学生が会長となり、教員を含めた数名で、神戸初の高校生による公園管理会を結成しました。

神戸市の職員から制度について話を聞きに行き、最初はみんなちんぷんかんぷんでしたが、「やったらわかることもあるよ」と声をかけ、思い切ってスタートすることにしました。

その後は、デザイナーと一緒にコートの色を決めるワークショップも行い、
自分たちの公園を自分たちでつくるという実感が、少しずつ育っていきました。

(公園管理会メンバーで、市長に挨拶)
(かつての神楽公園管理会の名残。中古の倉庫を引き継ぐことに)

地域全体でつくった空間

バスケットコート完成に向けたオープニングでは、学生たちが「ごちゃまぜスリーオンスリー大会」を企画。小学生から大学生、プロバスケ選手までが集まる夢のようなイベントになりました。

婦人会やPTAの方々も協力してくれて、「知らなかった人同士がつながる」瞬間があちこちに。
公園に何かが生まれると、人もまちも動き出すんだと改めて感じました。

(近隣の小中高大学生が集まる、街のミラクル大運動会でした)

課題と希望のあいだで

あれから1年。神楽公園は放課後の“たまり場”としてすっかり定着しました。
暑い日も寒い日も、誰かがいて、体を動かしている。そんな場所になっています。

一方で、人が増えたことでポイ捨てのゴミも目立つようになってきました。
高校生たちと「ゴミ箱をどう設置するか?」という議論も始まりました。

今年8月には神戸市の社会実験で自販機+ゴミ箱も設置予定

“完璧”にはならないけど、みんなで話し合いながら育てていけたらと思っています。

(バスケ以外の球技やゲームもしたり自由な時間を過ごすサードプレイス)

つながり続ける公園の未来

つい最近、オープニングイベントで始球式をしてくれた子に、ふと公園で声をかけられました。
「また、あのイベントみたいなん、やろうや!」と、笑いながら。

バスケットゴールをきっかけに、こんなふうに声をかけ合える関係が生まれたことが、何よりの成果だと感じました。

そんな小さな声がまちを動かし、日常を少しずつ豊かにしていく。だからこそ、これからも焦らず、じっくり、みんなで育てていきたいと思っています。

公園は、可能性の宝庫です。

(始球式11人中、唯一シュート決まったのが小学生だった。そのスーパースロー写真)
取材・執筆
取材・執筆
西山 泰

神戸市長田区出身、3歳児のダディ。趣味は、公園で音楽やラジオを聴きながら歩くこと。元・神戸市地域コーディネーター。現在は、まちの自然や人とのつながりを育む活動をベースに、一般社団法人ラブリープロジェクトを立ち上げ、神戸市内を中心に地域プロジェクトを展開中。https://www.sooogoodnagata.com/

神戸市長田区出身、3歳児のダディ。趣味は、公園で音楽やラジオを聴きながら歩くこと。元・神戸市地域コーディネーター。現在は、まちの自然や人とのつながりを育む活動をベースに、一般社団法人ラブリープロジェクトを立ち上げ、神戸市内を中心に地域プロジェクトを展開中。https://www.sooogoodnagata.com/

取材・執筆
みんなの公園愛護会の書籍紹介 学芸出版社

みんなの公園愛護会初の書籍。「推しの公園を育てる!公園ボランティアで楽しむ地域の庭づくり」が学芸出版社から刊行されました。全国各地の推しの公園活動やボランティア運営のヒントが紹介されています。ぜひ手にとってお読みください。https://park-friends.org/books/book1/

みんなの公園愛護会初の書籍。「推しの公園を育てる!公園ボランティアで楽しむ地域の庭づくり」が学芸出版社から刊行されました。全国各地の推しの公園活動やボランティア運営のヒントが紹介されています。ぜひ手にとってお読みください。https://park-friends.org/books/book1/

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