みんなどう考え、どうしてる? 公園愛護会の今
公園ボランティア実態調査2024
全国自治体編

一般社団法人みんなの公園愛護会では、公園愛護会・アダプト・自主管理ほか、様々な制度で行われている市民の公園ボランティアに関して、全国の市区を対象にその取り組みを調査しました。

調査の趣旨
公園愛護会はじめ各自治体で行われている市民の公園ボランティアに関する実態と現状を多角的に把握する。
高齢化および担い手不足が課題とされる一方で、地域の公園と公園コミュニティの価値・まちの緑の質が見直される今、住民による地域の公園への積極的な関わりをサポートする際の参考にする。
調査方法
期間:2024年8月~9月
方法:インターネットフォームおよびメール
対象:全国の市および東京23区 計815自治体 公園の管理や運営に関わる担当者
回答数と回答率
回答数:512件
回答率:62.8%
目次

調査の結果

1公園ボランティア制度の有無

Q:公園ボランティア制度はありますか?

公園愛護会・公園アダプト・自主管理制度など、身近な公園での清掃や花育てに関する制度の有無。回答のあった512の自治体のうち、「小規模公園対象の公園愛護会のような制度はないが、講座修了生などが個人で登録し大きな公園で活動するタイプの制度ならある」という回答も含めて、234自治体(45.7%)に公園ボランティア制度があることがわかった。

2支援の方法や内容

Q:支援のタイプを教えてください。

公園ボランティアへの主な支援方法について聞いた設問。複数の制度がある50自治体を含めた222自治体から272の制度についての回答があった。最も多かったのは物品での支援(40.1%)、次いで報奨金などのお金(32.4%)だったが、報奨金などのお金と物品の両方のサポートがあるケースも21.0%あった。

Q:支援金以外で行っているサポート内容として該当するものをすべて教えてください。

公園ボランティアへの支援金以外のサポート内容として最も多いのは、ゴミの回収(93.8%)とゴミ袋の提供(87.6%)。次に、保険の加入(65.3%)、道具の貸出(54.2%)、看板の設置(53.8%)、道具の支給(51.6%)、花苗の提供(48.0%)、土や肥料の提供(42.2%)と続いた。活動をしやすくするための倉庫の設置や掲示板の設置、技術的なサポートとして研修や講習会や個別の技術支援、モチベーション向上のための表彰や活動PRグッズの支給・交流会・活動紹介情報誌の発行・イベント企画支援など、さまざまなサポートが行われていることがわかる。

3名称や開始時期

Q:制度の名称を教えてください。

回答のあった275の制度のうち、「公園愛護会(もしくは〇〇市公園愛護会)」という名称が最も多く、「愛護活動」「公園等愛護」など、80の制度で「愛護」という言葉が含まれていた。そのほかには、「アダプト」、「ボランティア」、「美化」、「管理(維持管理や自主管理)」などの文言も多く見られた。 また活動場所を公園だけでなく道路や河川などの公共施設まで広く設定しているものや、清掃活動とは別に花育てや花壇づくりのサポートに特化したものなどもあり、わかりやすく親しみやすい名称の工夫も見られた。

Q:制度が始まったのはいつですか?

複数の制度がある31自治体を含めた224自治体から 255の制度についての回答があった。この中で、1960(昭和35)年代から公園ボランティア制度を運用しているのは、仙台市、前橋市、大津市、京都市、大阪市、堺市、神戸市、明石市、岡山市などで、70年ほどの歴史があることがわかる。すべて活動に対して金銭的な支援があるとともに、多くは名称に「公園愛護」という言葉が含まれている。1990(平成2)年代以降、お金を介さず物品で支援するタイプの制度が登場し、支援方法の幅が広がっていったと考えられる。2000(平成12)年代に始まった制度が最も多く、そのうち57.8%が物品支援タイプとなっている。2020(令和2)年代には、12の自治体で新しく制度が作られ、支援のタイプとしてはお金の支援と物品支援がそれぞれ5(41.7%)、お金+物品支援が2(16.7%)となっている。追加のヒアリングによると、このうちの6割は、既存制度の再編やリニューアルで、4割が新設。より多くの人が関われる仕組みや、活動場所を公園に限らず広くカバーするなど、関わりや選択の幅を広げたケース、活動実態に合わせて基準を統一したケースなどがあった。また、講座修了生が継続して活動するボランティア制度や、公園再編と一緒に維持管理を考えて制度を新設したケースもあった。

4活動の状況

Q:活動されている団体数と公園数を教えてください。

今回の調査では、様々な制度の下で、30,882の団体が、33,417の公園でボランティア活動を行っていることがわかった。

Q:主な担い手はどのような方ですか?

227自治体から、266の制度で活動する主な担い手について、どのような人々がどのくらいいるか?を聞いた設問。自治会町内会の有志で継続して活動するグループが、とても多い/ある程度いる含め、地域を問わずもっとも多かった。自治会町内会の役員で持ち回りで活動するグループも多く、町内会全体で取り組んでいるというケースも含めて、地域の人が広く関わっていることがわかる。自治会町内会という地縁団体以外では、花や園芸好きの地域の人が多く、回答のあった91.4%の地域で存在しており、自治会活動とは別の顔ぶれが集まり地域の公園の環境美化や花育てに関わっていることがわかる。また、活動団体数に関わらず、企業や社会福祉法人、子育て関連グループが担い手として存在している地域はそれぞれ58.9%(企業や社会福祉法人)、47.2%(子育て関連グループ)あり、多様な担い手の存在が見られる。

5公園ボランティアの価値や効果

Q:公園ボランティアがもたらしている価値や効果は、どのようなことがありますか?

1位は、地域住民による公園利用の活性化(83.5%)。次いで、地域コミュニティの活性化(79.1%)、街区公園の維持管理のコスト削減(74.3%)、まちの緑の質の向上(62.2%)、生きがいや居場所づくり(59.6%)が続いた。そのほか、地域における多世代交流の機会づくり、周辺地域の防犯(ともに41.7%)、子どもや高齢者などのご近所見守り効果(40.0%)、健康づくりや健康寿命を伸ばす(39.1%)も一定の効果があることが評価されている。維持管理コストの削減だけでなく、それ以上に地域住民による公園利用の活性化や地域コミュニティの活性化という点で効果があると多くの自治体担当者が捉えていることがわかる結果となった。
猛暑の影響もあり草が伸びるのが早い中で、ボランティア活動による草刈りが行われている公園は綺麗であり、周辺住民より草に関する苦情が来ることもない。公園管理担当者としては非常にありがたいというコメントもあった。

6課題と対策

Q:公園ボランティアが現状かかえる課題は何ですか?

ダントツで1位だったのは、担い手の高齢化による活動量の減少(85.7%)。続いて、既存団体に新しいメンバーが加入しない(62.2%)、新たな担い手の発掘に苦戦(60.9%)、人数不足で活動に支障がある(56.5%)、担い手の高齢化による活動の質の低下(54.3%)、一般市民に対して活動の認知度が低い、解散等による団体数の減少(ともに52.2%)、新規結成が少ない(50.4%)が上がった。回答者の半数以上が、担い手の高齢化に伴う活動の縮小と、新しい担い手の発掘が難しいことを課題だと捉えている。

Q:上記の課題にどのような対策をされていますか?

公園ボランティアが抱える課題対策については、現状維持・とくになし(40.8%)が1位、ホームページに市民向けの情報を充実させている(38.6%)、広報誌やSNS等で、公園ボランティアを広く市民に周知(29.1%)、ボランティアから行政に相談しやすい体制づくり(16.1%)と続いた。

7注力している取り組み

Q:公園に関連して、最近注力している取り組みを教えてください。

利活用推進の取り組みに関することが最も多く、14の自治体からコメントがあった。また、公園のルール柔軟化や適正化(10自治体)、公園再編・機能再編に関して(9自治体)、公園利用者アンケート(7自治体)、企業と連携した公園の管理運営(6自治体)、長寿命化に関する取り組み(6自治体)、樹木管理に関する取り組み(5自治体)、インクルーシブ遊具の設置(5自治体)などが多く上がった。
またボランティア支援に関しても、活動情報誌の発行や広報の充実、技術支援、貸出草刈機の配送回収の委託化、表彰式や交流会の復活、ボランティア団体の結成推進、団体とボランティアのマッチング、ボランティア制度の新設など、多くの取り組みが注力して行われていることがわかった。

8担当者の思い

Q:担当としての困りごとや課題はどのようなことですか?

担当者としての困りごとや課題については、わがままな相談への対応(54.2%)、高齢化や担い手不足にどうサポートしていいか分からない(51.6%)、予算不足(50.7%)の3つに、回答者の半数以上が課題を感じていることがわかった。

Q:担当としてうれしかったエピソードを教えてください。

ボランティアが生き生きとやりがいを持って活動する様子や報告、要望や相談の対応への感謝など、ボランティアとのコミュニケーションがやりがいになっている回答が多かった。その他にも、公園利用者からの声や、公園の景観や地域の変化、ボランティアや公園利用者の喜びが担当者自身の喜びにも繋がっていることなど、様々な声があった。
※PDF版で掲載していますので、ダウンロードしてご参照ください

Q:ユニークな活動や先進的な取り組みをしている団体、いいなと思う団体をご紹介ください。

維持管理作業に加えて公園を利用したイベントを行う団体についての声が多かった。たとえば、自然素材を使った工作体験教室や防災キャンプ、昔遊び、水遊び、虫取り、流しそうめん、鯉のぼりの吹き流し、灯篭祭、焼き芋大会、ミニコンサート、気球体験会、ツリークライミングなど、地域の人のアイデアと熱意で様々なことが行われている。そのほかにも、幼稚園・小学校・中学校・高校などそれぞれ地域の学校と連携して活動する団体、花や緑を通じて来園者や近隣の人々の目を楽しませている団体、緑地の湧水を使った水やりなど工夫をしながら活動する団体など、多くの情報が寄せられた。
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9参考にしたい情報

Q:他自治体の取り組みで興味があるものがあれば、教えてください。

公園利活用推進に関する取り組み、花や緑の市民協働に関する取り組み、官民連携に関する取り組み、民間が主体で行われている取り組みなど、全国で行われている様々な取り組みについての情報が寄せられた。
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Q:みんなの公園愛護会で調査してほしい項目などあれば、教えてください。

公園ボランティアの高齢化への対策や新たな担い手発掘に向けた他自治体の取り組み、菜園やプレーパークなど公園ボランティアの様々な活動事例、ゆるく公園管理に関わる仕組みづくり、デジタル化の取り組みなどの様々な事例が知りたいという回答のほか、活動費の算出規定や表彰の基準、研修の内容、人口減少に対応した公園づくりや維持管理手法、ボランティアによる除草の手間を減らす方法など、広く様々な声が寄せられた。
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10熱中症対策について

Q:公園ボランティアの熱中症対策について、行っていることを教えてください。

夏の暑さが厳しい昨今の熱中症対策についての質問。回答した自治体の55.9%がとくに行っていないということだったが、酷暑の時期は屋外での活動を控えるよう推奨している(23.8%)、万一熱中症になっても、補償される保険に加入している(19.8%)、熱中症対策の案内を強化し、こまめな水分補給や休憩を推奨している(19.4%)という回答が上位に入った。また、毎月の活動が支援金の支払い条件になっている場合でも、他の月への振替でも対応可とするなど、状況に応じて柔軟な対応をしている自治体もあった。猛暑の時期で除草等が十分に実施出来ない場合は市が業者手配をして除草を行う事がある、酷暑での愛護会活動は無理をしないように伝え可能な限り市で手伝うとしている、交付金の用途として塩分補給用食品など熱中症対策の経費支出を認めているなどのコメントもあった。

11公園ボランティア制度がない自治体

Q:公園ボランティアやそれに類する制度がない場合、小規模な公園の維持管理をどのように推進していますか?

最も多いのが、市区町村など自治体で直接管理(70.9%)。次に、シルバー人材センターに委託(63.5%)、指定管理や業者へ委託、自治会・町内会に委託(ともに62.8%)と続いた。小規模な公園については、地域の公園として地元自治会が事実上管理を行っているというコメントや、小規模な公園の下草刈り等は、規模や公園施設によって「業者委託」「シルバー委託」「自治会への清掃謝礼金」で分かれており、トイレや街灯等の公園付属施設の維持管理は、内容によって「業者委託」「直営」で対応しているなど、規模や内容によって複数の方法で維持管理しているというコメントもあった。支援制度はないものの清掃や花壇などボランティア団体の活動はある自治体も20.6%あり、制度の有無に関わらず人々が地域の公園育てに関わっていることがわかる。

調査を終えて

今年度は、全国⾃治体調査を主軸とし、全国の市および東京23区を対象に公園ボランティア制度全般に関する内容をお聞きし、とても多くの声を集めることができました。活動実態や課題を調査した2021年の調査から3年経過し、基礎情報のアップデート版ができたのではないかと思います。ご協力ありがとうございました。

公園ボランティアは、まちの魅力を高めるパートナー

公園ボランティアの価値や効果について、2021年の調査では「街区公園の維持管理のコスト削減」と「地域住民による公園利用の活性化」がほぼ同数で1位になっていたのが、今回は「地域住民による公園利用の活性化」と「地域コミュニティの活性化」が「街区公園の維持管理のコスト削減」を上回る結果となったのが印象的でした。
また、この3年間でみんなの公園愛護会としても様々な人たちに話を聞き、公園ボランティア活動がさまざまな価値を生んでいるという実感から選択肢を増やしたところ、新設の「まちの緑の質の向上」や「生きがいや居場所づくり」にも6割近い回答者がその効果があると評価したことも、さらに心強い結果となりました。
公園ボランティア活動は、維持管理作業を行う行政の下請けではなく、公園を含めた地域の魅力を向上するためのパートナーであると多くの自治体職員が認識していることが改めてわかり、公園ボランティアの価値が見直されていることを感じます。

多様な人が、より活動しやすいサポートへ

公園ボランティア活動によって、公園が気持ち良い場所になり、より多くの人が公園を利用することに繋がっています。また活動に参加することで、地域に友達ができたり、ウェルビーイングやフレイル予防にも繋がっていることを、多くの人が教えてくれています。
一方で、高齢化と担い手不足が共通の課題だと長年言われ続けている現状もあります。働き続ける高齢者の増加やライフスタイルの多様化で、これまでと同様の枠組みでは立ち行かず、時代やニーズに合わせた柔軟な形が求められていることも感じます。
一部の人たちが頑張り続けるのではなく、多くの人が少しずつでもゆるく楽しく公園のお手入れに関われるような仕組みやサポートを、企業や学校も含めたさまざまな声を聞きながら、地域に根差した形で工夫して作っていけたら、ともに公園を育てる人の裾野が広がり、地域コミュニティの充実にも繋がっていきそうです。

みんなの知恵を集めてともに

みんなの公園愛護会で調査してほしい項目についても多くの声をいただき、全国の自治体職員や公園ボランティアのみなさんに役立つ活動が少しずつ出来てきた手応えを感じています。個別の取材活動も継続しながら、推しの公園を育てる活動を盛り上げていきます。
今回の調査では熱中症対策についての設問を作りましたが、近年の急激な気候の変化やさまざまな問題にどう対応していくか、知恵を出し合ってともに乗り越えていけるよう、これからも広く情報を集め、発信していくことで、公園ボランティアおよび公園ボランティアをサポートする自治体のみなさんを応援していきたいと思っています。

公園ボランティア実態調査 2024
〈全国自治体編〉
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